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ギルドと依頼とジャダと俺

1 薬草採取への道

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王都の外壁は高くてデカい。
その上はにょきにょき聳え立つ見張り塔からの伝令が、走り回れるように広い。
そこにどどんと聳える門は、滑車を使っても10人程が取り付いて開けられる。

「かぁぁいもぉぉーん!」

篝火で煌々と聳え立つ大門が地響きを立てて開けられると、外からの風が涼しく吹き抜けた。
その門の中を列を成して待っていた馬車も人も動き出す。
脇にある人用の小さめな通用門を抜けると、いきなり視界が開けた。
どんと目の前に大きな路が真っ直ぐ伸びている。
その路を馬車も人も、黒い奔流のように流れていく。

レンは手続きをしてくれた門番に手を振って、ジャダと道を踏み出した。

外壁の周りは賊や魔獣を警戒して500メートルほど刈り込まれている。
その何も無い解放感と、遥か向こうの地平がまだ暗くて空との境界が朧げなのが、まるで宇宙のようにみせている。
透き通る蒼空にポツンと浮かんだ雲は、登る太陽の明方の色を受けていた。
まだ残る星が、朝の気配に追われ初めている。
開門したばかりの早朝はまだ薄暗い。
でも太陽の気配で薄明るい。
今日は森に分け入って、朝露のある開花前の薬草を採取する。

"薬草採取"そんなラノベの最低ランクの定番に行き着くまで、本当に、本当おぉぉーに大変だった。
おかげでレンは喜びのあまり、いそいそと弁当まで作って今日を迎えたのだ。


ジャダは鬼教官だった。
いや、鬼教官になった。
初めてギルドに顔出しした日に、レンが実戦(意識を持ってかれそうな臭気テロ)でなんの防御も抵抗も出来なかった事に激オコだったのだ。

「風魔法で顔の前を覆って臭いを遮断しよう」からの
「全身を覆えば多少の暑さ寒さも防げるから」に始まって
「覆った空気の膜を高速でスピンさせれば結界のように物理も防げる」
という三段レクチャーで、連れてかれたのは『下水道の掃除』という依頼だった。

王都の下水道は三メートルを超える菅が、地下神殿のように繋がっている。
下水道局が定期的に水魔法で清掃しているが、どうしてもゴミや汚泥が溜まる箇所が幾つかあって冒険者に依頼が廻ってくる。
臭い汚い安い。と三拍子揃ったソレは中々やり手が現れずにペナルティ案件になっていた。
その下水道掃除が仕事なのだ。
初めは嫌がらせかと思った。
でも当たり前だが鬼教官も一緒だった。
……文句は封印されている。

渡された高圧洗浄機のような魔道具を背負って下水道に降りる。
当たり前だが臭い。目に沁みる。
集中を切らしたら、地獄どころか川の向こうの花畑が見える気がする。
足元がぬるっと汚泥に沈んでいく。

風‼︎風‼︎風っ!レンは必死で魔力を練った。

必死で全身纏っても、気の逸れた部分からネトっと何かが沁みてくる。
魔道具を動かすと跳ね散らかされたソレが、びちびちと全身に降り注ぐ。
何より仕事が終わって街を歩けば、モーゼのように人が割れて道ができる事にレンのメンタルはひび割れた。


鬼教官はマスターするまで下水道掃除を受け続けた。
大きな声では言えないが、王都の下水道はほぼレンが綺麗にしたのだ!
一週間以上掛けてあっちもこっちも掃除したのだ。
下水道の地図はもう身体で覚えた!嬉しく無いけど…

そうして必死で風で全身を覆う事をマスターして、ようやく今日薬草採取という仕事に繰り出す事が出来たのだ。
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