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押しかけ護衛はNoとは言えない

13 我に返った日

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「指示された事は守る」
そんな当たり前な事なのに、スルッと勝手に行動してしまう自分をレンは持て余していた。

おかしい。

子供の様に目の前に面白い物があると飛び付いてしまう。
自分はもっと冷静で、もっと客観的に周りを見ていたはずだ。

指示を守れなかった事を、ジャダに怒られて注意される。
ジャダの芝犬の様な目は、怒りよりも心配が浮かんでいてソレが甘酸っぱくてむず痒い嬉しさなのにもレンは困っていた。

思い出すと恥ずかしさが脳天を直撃する。
今日などジャダに飛び付いてしまった。
しかも匂いをエンドレスに嗅いでしまった。

ぐひぃっ!と頭を抱えるとハーブの香りが湧き立つ。
あ、ジャダの匂いだ。
そりゃそうだ。
二人の服は同じ石鹸、同じ桶で洗ってる。
同じ匂いがしてるのだ。
そんなことより問題は、子供のように抱きついた俺だ、俺!

レンは今日という日が、ギルドだのナンパしてくる臭いおっさんだのジャダに抱きつくだのと、イベントてんこ盛りで精神的に疲れ果てていた。


思えばレンは物心ついた時からハナと一緒だった。
名前で分けられていたけれど、くっつき合ってほとんど一つの生き物の様だった。
それが病院で初めて一人になった。
そして爺ちゃん家で、布団が別々になった。
脇に体温が無い事に、物悲しくてやるせなくて中々寝付けなかったのを覚えている。
その時、ハナと自分が別な生き物だと思うのが、苦しくてたまらなかった。

『ハナは弱いから』『ハナは大事だから』『ハナが大好きだから』そう思って、先回りして虐める奴を排除してきた。
その事が自分の存在意義だと信じてた。

~~そして今、ハナは幸せで。
レンとは別の道を進んでいる。

レンは自分が花嫁の父のように、がっくりと抜け殻のようになると思ってたのに。
妙にホッとして何故か視界が明るくなっている、そんな自分に戸惑っていた。
"俺はもう頑張らなくていいんだ"
そう思った自分が裏切り者のようで、後ろめたかった。
ハナの事を重荷に思ってたんだろうか?って考えてみたら、自分が必死で守ってたのは自分だったと悟った。

怖くて泣くのも、守られて笑うのも、本当は自分がしたかったんだ。
俺は誰かに我儘言って、拗ねて、甘えて、まもられたかったんだ。
『ハナの為に』はただの押し付けで、自分を守っていただけなんだ。

そう思ったら、ああ道が別れて良かったなぁ。って思った。
互いが重荷にならないうちに別れて本当に良かった。


俺は今、子供の頃に出来なかった「あれ何?」と走って怒られる事が嬉しい。
まるで刷り込みされた雛のようにジャダに気を許して甘えている。
魔法契約で決して裏切らないと知ってるから恥ずかしげも無く甘えている。
そして依存してしまいそうなのを必死で抑えている。

レンはぶるりと震えた。
期限は一年だ。
その間に自分がこの世界で生きていく全てを叩き込んで貰うつもりだ。
ジャダは自分の領地の贖罪の為に、罰の軽減の為にと護衛に着いた。
何時迄もこうして守ってくれるなんて思い込まないようにしなくちゃ。
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