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押しかけ護衛はNoとは言えない

12 可愛いは許しの呪文じゃ無い ジャダ

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黒い髪のつむじから、銀の光が流れている。
肩に届きそうな髪は下ろされていて、歩くたびにふわりと浮いて広がって銀の光をちかりと弾く。
ちょっと足元が躍っているのを、多分本人は気がついていない。
藍色の瞳の中に銀河がキラキラと瞬いて、嬉しそうなレンから目が離せない。
こんな街中に子綺麗で可愛い能天気小僧がいたら、すんごく目立つに決まってる。
すれ違う奴等が口を開けて見惚れているから、目力を込めて追い払った。

ギルドにどんな思い入れがあるのか。
レンはギルド目指して頑張った。
もともと学ぶ事に慣れていたのか、地理も歴史も魔法陣の書き方も。
真面目にコツコツと頑張った。

環境の変化でメンタルを心配してたのに、ありがたい事にまるっきり杞憂に終わった。
そして俺から合格をもぎとって、晴れてギルドに向かっている。

ギルドは国中にあるし、登録は身分証としてだと思ってたのはどうも俺だけだったようで、レンは一直線に頑張った。

浮足だっていたレンは、ギルドに近付くと増えていく冒険者達の
ゴツくて小汚い人相と獲物を見る視線を敏感に察知して、スッと俺の後ろに回り込んだ。ふっふっふ。可愛いじゃないか。
そのままローブで顔を隠させてから、ギルドに入った。


レンは建物の中で立ち止まってキョロキョロしている。
珍しそうで楽しそうで何よりだ。
ああ、人の空いてる時に来て良かった。

フードには軽く認識阻害を付与してあるから、外さなければ絡まれる事は無い。
と思ってたのに…

ぬあぁんで、自分からフードをとるっ‼︎
挨拶をきちんとって、何処の坊っちゃまだ‼︎

可愛いからって許されると思うなよ。

指示に従えないメンバーがいると連携が取れなくてパーティは全滅するんだぞ!

目の前のタコは勿論、向こうの酒場でもひゆっといきを飲んだ音がした。

くっそ。
もう一度言う。
可愛いからって許さんぞ。

ジャダの怒りに気付かずに、レンはひょこひょこと入り口横の掲示板に行く。
ジャダは気配察知で酒場から何人かが動き出したのがわかった。
うん。ちょっと痛い目見ないとわからないよな。実地研修ってヤツだ。
ジャダは相手に殺気や暴力の気配が無いことを確認して、背中を向けたままにした


レンが目を見開いている。
口を半開きにした顔は真っ赤だ。
黒曜石が涙の膜でうるうるとぬめって、藍色の中の銀河は点滅してる
………そんな切羽詰まった顔、見たことないぞ‼︎
ほどほどに振り向いたジャダはソレを見て胃の辺りがしくっと軋んだ。

その男は両腕を壁に付けて、その中にレンを囲っていた。

近い!
近いぞっ‼︎

しかもその手は髪に滑らせて頬を撫でて顎へと伸びていく。

ばっきゃろぉっ!

ダッシュで男の襟首を掴むと横に投げた。


「ジャダッあぁ‼︎」

叫びと一緒にレンが飛び込んでくる。
おわっ‼︎ 咄嗟に踏み込んで受け止める。
レンの手がぎゅっとシャツをつかんで胸に縋り付いた。
細かくぶるぶる震えている。
怖かったのかときゅうん♡と同時に
くんくんくん、と匂いを嗅がれた。

レンの髪がぐりぐりと胸を擦る。
ふんふんふん、レンの頬がぴったりとくっつく。
動揺しながらも抱きついたレンを抱え上げた。

はっはっは、くんくんくん。
子犬の様にせわしなく呼吸をしながらレンが胸にくっつく。
高い体温と柔らかい身体に眩暈がしそうだ。

か、可愛いじゃないかぁ……
いや、許さないけどな。

そんなに怖かったのか?
これで懲りてくれるよな?うん。

周りからの生温い視線の中で、密着されるのは満更でもなかった。
でれりとヤニ下がる自分を叱咤激励して、ジャダは無表情を作り上げた。
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