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始まっていく

61 新しい目標

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「ねぇ。久しぶりにむらむらしてるんだ。
 このボディはセクサロイドなんだけど。
 …ねぇ、やらない?」

ぶっ‼︎

サモエドからあらぬものが吹き出した。
嫌そうに避けたタロに、あわあわと手を振る。

「いらん⁉︎ロリではないっ!」

ラプルの果汁を赤い舌でペロリと舐め上げながら
「ふぅん。倒錯的で具合が良いって言われたけどね。」
タロは動揺しなかった。
「鞭を使うと皆んな跪いてくれたよ。
…あんただって嫌いじゃないでしょう?」

切れ長な目がぬめるように光って、サモエドはごくりと唾を飲んだ。

「~~やめてくれぃ。これでも倫理観は人一倍あるんだ。たとえ中身が年上でも、見た目で無理だ。」


ふっふぅぅん♡
猫の様な声を上げてタロは今度は葡萄を掴んだ。

「ま、いいや。昔を思い出してムラムラしただけだから。」

皮ごと口に入れる。
くっと上を向いて、もくもくと咀嚼していく。
弾けた果実に、口の端から果汁が溢れて喉に伝っていくのに、サモエドは目を逸らした。



「女って不思議だよねぇ。」


私が初めの体でいるときにさぁ、研究三昧で三日ばかり完徹して、前後不覚の時に乗っかられちゃったんだ。
疲れ摩羅って奴?
んで、その女が女房に納まったわけ。

私に惚れてた訳でもなく。
ほら、地位とか権力ってものに憧れてたみたい。
苦手意識があったけど、それで決定的になっちゃった。


男と女。
半分半分なのにさ、女ってわかんないよね。

イシュルタの女王なんかさ、(イシュルタは500年程前に滅んだといわれている西にあった国だ)赤ん坊を神の生け贄にしてたんだよ。
沢山の赤ん坊を抉って、バラして、焼いてた。
なのに自分の子供が見えなくなった途端に泣き叫ぶんだ。

女王は子供を10人ももってたんだぜ。
一人二人いなくなったって、痛くも痒くもないだろうにさ。

……ああ、わかんないなぁ。

毎月ダラダラ血を流すし、ちょっと思い込み激しいし、薄気味悪いなぁ。
って、思ってたんだ。



タロの黒曜石の様な目が、ぽうっと虚空を見ている。
果汁に染まった唇が紅くて、それだけが別の生き物のようだ。
真珠のように、薄い黄色ががった肌色に黒い髪がまるで絵の様に張り付いている。



女ってさぁ。


とっても単純で、繰り返し囁くとその考えを自分のものだと信じ込むのも早いんだ。
でも、なにかで綻びるのも簡単。
パンの一つが隣より小さいとか、誰かの方が美人だとかで、いきなりストッパーがかかるんだ。
勝手に自己完結して、せっかくの革命とか王位復興の流れとかを潰しちゃうんだ。

わけわかんないよね。


だからずっと貰う体も男だし、自動人形も男にしてたんだけどさぁ。


タロはきゅっと眉を顰めると、唇を尖らせてぷっと種を吹いた。
テーブルの上の空になった皿に、葡萄の種がカランと転がる。
上手くinしたことににんまりすると、タロはサモエドを見上げた。



「食わず嫌いかなぁ、って思ったんだ。」


自動人形に濡れた手巾を差し出され、ゆっくりと一本づつ指を拭う。
そのまま口元も喉も拭っていく。


「理解できる?あの女、私に魔道具を作らせて産んだら直ぐに埋め込むって言うんだよ。
王位簒奪とか、地位とか権力なら理解できるよねぇ。でもあの女は、皆んなに褒め称えられる自分の為だっていうんだよぉ。」

ぽいと手巾をテーブルに放り出す。



「もう、呆気にとられちゃった。
~~その事が凄く新鮮で、もう、びっくり!
びっくりしたのも久しぶりで。
もう、楽しくて仕方がないの。


ああ、コレ、"生きてる"ってこんなんだと思い出した。
理解出来ない事があるって凄くワクワクする。


そしたら、"女になった事が無い"って気づいたんだ。
だから今度は女になりたい。
女になってセックスして孕みたい。」

タロはサモエドににっこり笑った。

「あんたの子供を産んだでてもいいよ♡」

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