39 / 84
そして王宮
39 セルカーク 下
しおりを挟む
兄上は、相変わらず。
説教するな!と、周りに怒鳴り。
やれば出来るんだから、放っておいてくれ!
と、逃げ回っていた。
私は王と王妃に、サフィアを望んでいると告げたけれど…。
あれを補助出来るのは彼女しかいないからな。と、兄上の婚約者に決まった。
……心が引き裂かれそうだった。
でも彼女の近くにいたい。
彼女を助けたい。
その為には、私は頭脳も身体も側近以上にならなくてはいけない。
そう決意したセルカークは、投げやりだった勉強も剣の稽古も必死に励んだ。
何事にも完璧にこなすサフィアに。
つまらん女だと、ロットワイナは不機嫌になる。
それを黙って控えて見ているセルカークは、殺意さえ抱いていた。
完璧にこなすためには、どれだけの準備が必要だと思っているのだ。
おまえがキチンとしていたら、サフィアだって振り絞った糸のように、頑張らなくても済むんだぞ。
いや、キチンとしていたら、サフィアが婚約者になる事も無かった筈だ。
そして学園で、ロットワイナはミラーテと恋をした。
いちゃいちゃと園庭でくっついている。
一歩離れると、ミラーテは誰とでもいちゃついているのがわかる。
騎士団長の息子のゼラスと、財務大臣の息子のモリナロルをはべらしている。
他の生徒ともきゃっきゃうふふと楽しんでいる。
たまに課題の提出をロットワイナに促すサフィアに、なんのかんのと噛みついてきゃあきゃあ騒いでいる。
……ああ、学年が違う為に授業時間が違って助けに行けない。
焦れる様に窓からみていると、サフィアの横にはいつも宰相の息子のセバスティンがいた。
考えてみると、昔からだ。
奴もサフィアを愛している。
私と同じ目をしているからな。
サフィアと話していると、直ぐに横から攫われていく。
セバスティンと平民のサモエドという奴に。
まぁいい。
彼女が楽しく学園生活を送れるなら、我慢しよう。
でも、彼女の笑がだんだん力が弱くなっていく。
そのうっとりする葡萄色の瞳の中で自分を映し込んで笑っていたのが、徐々に光が失せてる気がする。
ああ、ロットワイナが他に好きな人が出来ました。と、王に進言して婚約を解消してくれたらいいのに。
そしたら私が名乗りでるのに。
そんな夢を見ているうちに、ソレが起こった。
卒業パーティー間近。
王都から少し離れた領地で小規模なスタンピードが起こった。
その騎士団の遠征には、将来それを束ねる王族が同行する事になった。
つまり私だ。
どうせ第一王子はもうすぐ卒業式。
だから第二王子を出そう。
そう決まった。
学生でスペアの私に異論が出せるはずは無かった。
パーティーでのサフィアの装いが見たい。
何か胸騒ぎがする。
行きたくない。
そんなぐぢゃぐぢやな心のまま、引き連れられる様に馬に乗って。
私は王都を後にした。
蹂躙される畑。
暴れる魔獣。
狩っても狩っても湧いてくる獣達。
力の限り戦って。
戦って。
戦った。
なんとかソレを平定して帰ってみたら。
王都には"真実の愛"というふざけたものが、フワフワと蔓延していた。
ーーー出版されている。
すでに歌劇として上演されている。。
町角では吟遊詩人が歌っている。
なるほど。
商人的戦略だ。
モリナロルが、そのスキルを展開したのだな。
国民を味方に付けて、有無を言わせぬように王に迫ったのだな。
そして婚約者から断罪され、世論に打ちのめされたサフィアは、悪役令嬢と呼ばれて姿を消していた。
凱旋祝いだのとぬかす馬鹿者を殴りつけ、彼女を探す。
家からも追われた彼女は、年老いた乳母がそっと隠していた。
心を壊されて混乱したサフィアに膝をついて懇願する。
「愛してます。」
「私の伴侶になって下さい。」
虚な目をするサフィアにひたすら告げる。
結界を重ね掛けた田舎屋に、乳母と一緒に住んでもらい、ひたすら通う。
「愛してます。」
「貴女の為なら国も捨てます。」
「愛してます。」
彼女がその瞳の中に私を映して。
そっと笑を返してくれたとき。
世界は薔薇色に輝いてみえた。
私はこの世の全てに感謝した。
説教するな!と、周りに怒鳴り。
やれば出来るんだから、放っておいてくれ!
と、逃げ回っていた。
私は王と王妃に、サフィアを望んでいると告げたけれど…。
あれを補助出来るのは彼女しかいないからな。と、兄上の婚約者に決まった。
……心が引き裂かれそうだった。
でも彼女の近くにいたい。
彼女を助けたい。
その為には、私は頭脳も身体も側近以上にならなくてはいけない。
そう決意したセルカークは、投げやりだった勉強も剣の稽古も必死に励んだ。
何事にも完璧にこなすサフィアに。
つまらん女だと、ロットワイナは不機嫌になる。
それを黙って控えて見ているセルカークは、殺意さえ抱いていた。
完璧にこなすためには、どれだけの準備が必要だと思っているのだ。
おまえがキチンとしていたら、サフィアだって振り絞った糸のように、頑張らなくても済むんだぞ。
いや、キチンとしていたら、サフィアが婚約者になる事も無かった筈だ。
そして学園で、ロットワイナはミラーテと恋をした。
いちゃいちゃと園庭でくっついている。
一歩離れると、ミラーテは誰とでもいちゃついているのがわかる。
騎士団長の息子のゼラスと、財務大臣の息子のモリナロルをはべらしている。
他の生徒ともきゃっきゃうふふと楽しんでいる。
たまに課題の提出をロットワイナに促すサフィアに、なんのかんのと噛みついてきゃあきゃあ騒いでいる。
……ああ、学年が違う為に授業時間が違って助けに行けない。
焦れる様に窓からみていると、サフィアの横にはいつも宰相の息子のセバスティンがいた。
考えてみると、昔からだ。
奴もサフィアを愛している。
私と同じ目をしているからな。
サフィアと話していると、直ぐに横から攫われていく。
セバスティンと平民のサモエドという奴に。
まぁいい。
彼女が楽しく学園生活を送れるなら、我慢しよう。
でも、彼女の笑がだんだん力が弱くなっていく。
そのうっとりする葡萄色の瞳の中で自分を映し込んで笑っていたのが、徐々に光が失せてる気がする。
ああ、ロットワイナが他に好きな人が出来ました。と、王に進言して婚約を解消してくれたらいいのに。
そしたら私が名乗りでるのに。
そんな夢を見ているうちに、ソレが起こった。
卒業パーティー間近。
王都から少し離れた領地で小規模なスタンピードが起こった。
その騎士団の遠征には、将来それを束ねる王族が同行する事になった。
つまり私だ。
どうせ第一王子はもうすぐ卒業式。
だから第二王子を出そう。
そう決まった。
学生でスペアの私に異論が出せるはずは無かった。
パーティーでのサフィアの装いが見たい。
何か胸騒ぎがする。
行きたくない。
そんなぐぢゃぐぢやな心のまま、引き連れられる様に馬に乗って。
私は王都を後にした。
蹂躙される畑。
暴れる魔獣。
狩っても狩っても湧いてくる獣達。
力の限り戦って。
戦って。
戦った。
なんとかソレを平定して帰ってみたら。
王都には"真実の愛"というふざけたものが、フワフワと蔓延していた。
ーーー出版されている。
すでに歌劇として上演されている。。
町角では吟遊詩人が歌っている。
なるほど。
商人的戦略だ。
モリナロルが、そのスキルを展開したのだな。
国民を味方に付けて、有無を言わせぬように王に迫ったのだな。
そして婚約者から断罪され、世論に打ちのめされたサフィアは、悪役令嬢と呼ばれて姿を消していた。
凱旋祝いだのとぬかす馬鹿者を殴りつけ、彼女を探す。
家からも追われた彼女は、年老いた乳母がそっと隠していた。
心を壊されて混乱したサフィアに膝をついて懇願する。
「愛してます。」
「私の伴侶になって下さい。」
虚な目をするサフィアにひたすら告げる。
結界を重ね掛けた田舎屋に、乳母と一緒に住んでもらい、ひたすら通う。
「愛してます。」
「貴女の為なら国も捨てます。」
「愛してます。」
彼女がその瞳の中に私を映して。
そっと笑を返してくれたとき。
世界は薔薇色に輝いてみえた。
私はこの世の全てに感謝した。
13
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
檻の中
Me-ya
BL
遥香は蓮専属の使用人だが、騙され脅されて勇士に関係を持つよう強要される。
そんな遥香と勇士の関係を蓮は疑い、誤解する。
誤解をし、遥香を疑い始める蓮。
誤解を解いて、蓮の側にいたい遥香。
面白がる悪魔のような勇士。
🈲R指定です🈲
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説はだいぶ昔に別のサイトで書いていた物です。
携帯を変えた時に、そのサイトが分からなくなりましたので、こちらで書き直させていただきます。
絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが
古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。
女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。
平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。
そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。
いや、だって、そんなことある?
あぶれたモブの運命が過酷すぎん?
――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――!
BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。
騎士団長の俺が若返ってからみんながおかしい
雫谷 美月
BL
騎士団長である大柄のロイク・ゲッドは、王子の影武者「身代わり」として、魔術により若返り外見が少年に戻る。ロイクはいまでこそ男らしさあふれる大男だが、少年の頃は美少年だった。若返ったことにより、部下達にからかわれるが、副団長で幼馴染のテランス・イヴェールの態度もなんとなく余所余所しかった。
賊たちを返り討ちにした夜、野営地で酒に酔った部下達に裸にされる。そこに酒に酔ったテランスが助けに来たが様子がおかしい……
一途な副団長☓外見だけ少年に若返った団長
※ご都合主義です
※無理矢理な描写があります。
※他サイトからの転載dす
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる