19 / 84
学園
19 ザラドとレリア
しおりを挟む
ロダンからは時々贈り物が届く。
いらないと言っても、遠慮は無用とぐいぐい来る。
正直、シャルア嬢は苦笑ぎみで。
ベルガーは半眼でコッチを見てる。
~~居た堪れない。
そんな訳で、とにかくこれ以上は勘弁と言うために、ロダンを探していた。
あの鮮やかな紅い髪と立派な体格はよく目立つ。
だからいつも探しやすかった。
なのに今日はなかなか見つからない。
庭だの図書室だの訓練所だの。
果ては校舎の裏まで探している。
園芸部の道具置き場の向こうに、あの紅髪がちらりと見えた。
慌てて走り寄る。
「ロダン様!お探ししました‼︎」
声を掛けた時。
手をぶるぶるさせてザラド王子が振り向いた。
……あ、やっちゃった。
ザラド王子は叫んだ。
そしてバシバシと暴風雨の様に言葉がぶつけられる。
その形相は……
うん、鬼。
鬼だね。
こっちが悪いから神妙に拝聴する。
するけれどね。
そんなに声を枯らして怒鳴ったって、こっちは萎縮なんかしないよ。
屋敷で、ベルガーが来てから、外に出る様になった。
阻害魔法をかけられて、下町に行く。
ベルガーがいるから物理的な恐怖は無かった。
だけど。
汚くて臭い酒場で。
罵り合うのを目前にした時は、ただただ立ちすくんだ。
自分は下町の子供に見えている。
それも物乞いの。
その子供を見るそこの大人達の目は、濁って血走った上に、ギラギラと値踏みしていた。
ねっとりと絡む視線は、金や食べ物や、訳の分からない欲でまみれている。
こっちの魂にべたべたと絡みついて、腐らせて行きそうな、汚れていきそうな。
そんな視線に晒されて、レリアは気を失った。
人は表とは違う顔を持つ。
腹の中は別物だ。
愛想笑いは社会の基本で。
受け流すことは必要なこと。
生き延びる為には甘い言葉も使わなくては。
他人から情報を引き出す為にはどうするか。
何処か澱んでしまった自分の魂を守るように、レリアは外での人との接し方を覚えていった。
あるときは避暑地の貴族の社交界に。
あるときは娼館の下働きに。
戯れの様に引き回されて、レリアはいろいろな立場の子供になった。
屋敷に帰って母様をみると、自分が自分で良かったと心の底から感謝の祈りを捧げる事が出来た。
そんなレリアにとって、真っ直ぐに怒鳴ってくるザラドは怖くない。
むしろピンと張り巡らされたあまりに、折れそうな刃のようだと思う。
生きづらいだろうなぁ、と思う。
母様の過去のざまぁを聞いて。
王太子と王太子妃。
それに騎士団長と財務大臣をクソだと思った。
母様の実家も、滅びてしまえ!と思った。
周りの奴らも馬鹿だと思った。
ただ、その子供は。
……ロダンだって罪は無い。
この王子だって。
揶揄されてるのを本人だって知ってるわけで。
その苛立ちから、ざまぁしようとしているわけで。
そんな事したら、また自分と同じ子供が出来るわけなのに、わかってる?
ああ、ままならないなぁ。
っと、レリアはふっと思った。
いらないと言っても、遠慮は無用とぐいぐい来る。
正直、シャルア嬢は苦笑ぎみで。
ベルガーは半眼でコッチを見てる。
~~居た堪れない。
そんな訳で、とにかくこれ以上は勘弁と言うために、ロダンを探していた。
あの鮮やかな紅い髪と立派な体格はよく目立つ。
だからいつも探しやすかった。
なのに今日はなかなか見つからない。
庭だの図書室だの訓練所だの。
果ては校舎の裏まで探している。
園芸部の道具置き場の向こうに、あの紅髪がちらりと見えた。
慌てて走り寄る。
「ロダン様!お探ししました‼︎」
声を掛けた時。
手をぶるぶるさせてザラド王子が振り向いた。
……あ、やっちゃった。
ザラド王子は叫んだ。
そしてバシバシと暴風雨の様に言葉がぶつけられる。
その形相は……
うん、鬼。
鬼だね。
こっちが悪いから神妙に拝聴する。
するけれどね。
そんなに声を枯らして怒鳴ったって、こっちは萎縮なんかしないよ。
屋敷で、ベルガーが来てから、外に出る様になった。
阻害魔法をかけられて、下町に行く。
ベルガーがいるから物理的な恐怖は無かった。
だけど。
汚くて臭い酒場で。
罵り合うのを目前にした時は、ただただ立ちすくんだ。
自分は下町の子供に見えている。
それも物乞いの。
その子供を見るそこの大人達の目は、濁って血走った上に、ギラギラと値踏みしていた。
ねっとりと絡む視線は、金や食べ物や、訳の分からない欲でまみれている。
こっちの魂にべたべたと絡みついて、腐らせて行きそうな、汚れていきそうな。
そんな視線に晒されて、レリアは気を失った。
人は表とは違う顔を持つ。
腹の中は別物だ。
愛想笑いは社会の基本で。
受け流すことは必要なこと。
生き延びる為には甘い言葉も使わなくては。
他人から情報を引き出す為にはどうするか。
何処か澱んでしまった自分の魂を守るように、レリアは外での人との接し方を覚えていった。
あるときは避暑地の貴族の社交界に。
あるときは娼館の下働きに。
戯れの様に引き回されて、レリアはいろいろな立場の子供になった。
屋敷に帰って母様をみると、自分が自分で良かったと心の底から感謝の祈りを捧げる事が出来た。
そんなレリアにとって、真っ直ぐに怒鳴ってくるザラドは怖くない。
むしろピンと張り巡らされたあまりに、折れそうな刃のようだと思う。
生きづらいだろうなぁ、と思う。
母様の過去のざまぁを聞いて。
王太子と王太子妃。
それに騎士団長と財務大臣をクソだと思った。
母様の実家も、滅びてしまえ!と思った。
周りの奴らも馬鹿だと思った。
ただ、その子供は。
……ロダンだって罪は無い。
この王子だって。
揶揄されてるのを本人だって知ってるわけで。
その苛立ちから、ざまぁしようとしているわけで。
そんな事したら、また自分と同じ子供が出来るわけなのに、わかってる?
ああ、ままならないなぁ。
っと、レリアはふっと思った。
29
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
腐男子で副会長の俺が会長に恋をした
かしあ
BL
ホモ率7割の男子校で人気投票で選ばれる生徒会。
皆美形揃いでその中でも抜群に人気なのが気遣い上手でムードメーカーみたいな存在の生徒会会長だ。
そんな彼の事を恋愛感情として好きな生徒は多いと思う。
自分の趣味の為に入学した高校で何故か平凡(無自覚)な俺が美形揃いの生徒会に選ばれた。
俺は一緒に仕事しているうちに気づいたら会長の事が好きになってしまい……。
受けにだけちょっぴり俺様な会長×腹黒キャラ演じてる非凡腐男子副会長のお話。
本編完結しました。
いいねやお気に入り登録ありがとうございました。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる