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女神の血脈
6 ネティ 同行
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街の入り口の検問所には、ものものしく兵士が立っている。
「行くは良い良い帰りは怖い。ってね。」
テラダは静かに笑う。
意味を聞くと、つまり入れるが出れる保証は無いのだと言われた。
納得だ。
街に入りたい人と迂回していく人。
もちろん迂回する。
迂回する人の列をも、検問の兵士は睨みつけている。
あ、後ろから竜の気配がする。
竜だ! と、声が上がる。
地響きが、ずんずんと骨にまで響いてきた。
黒い竜騎士が3騎。
そう、黒だ。ゼオライトの黒だ。
街の検問の兵にも緊張が走る。
怒鳴るように言葉を掛け合いながら、街を迂回する列に竜の頭を向けた。
「大人はいい。成人前くらいの子供だ。」
僕だ。
僕を探してるんだ!
肩がビクッとして、それをテラダに気づかれる。
テラダは竜騎士から隠すように僕の横に立つと、奥さんとリクを引き寄せて、まるで一つの家族のように見せてくれた。
………でも、近づいてくる。
いやだ。
いやだ。
こっちへ来ないで。
フードの下で項垂れながら、心臓が咽喉から飛び出そうなくらいに打ち付けられる。
イヤダ。
イヤダ。
頭の中でぎゅっと目を閉じて唱えると、
ドウシタノ? と返事が来た。
お願い。
こっちに来ないで。
叫ぶように祈る。
テラダの後ろに来た竜騎士が声を出そうとした時、
ワカッタ!
明るい返事が来て、赤鬼竜が立ち止まった。
「どうした!」
混乱して手綱を引く騎士を無視して、他の2頭も立ち止まる。
そしていきなり踵を返すと、街の入り口の中に突進していった。
ジャアネ!
ありがとう!
竜に返事を返すとほうっと息を吐く。
そんなネティをじっとテラダは見ていた。
街を迂回するとかなり大回りになる。
疲れてぐずったリクを背負いながら、ネティは元気に歌っていた。
奥さんがくすくす笑う。
足は疲れたけど楽しい。
流れる雲も、風も。面白い。
道端の薬草を抜け目なく採取しながら進む。
街道にいる限り、魔獣避けは要らないから気が楽だ。
旅を始めた時は、もうどうなることかと思っていた。
うん、でもなんとかなりそう。
夜は大きなテラダのテントとネティのテントを並べて立てる。
リクを連れて薪拾いも水汲みも慣れたものだ。
テラダは気付いているかもしれないが、周りに結界を張ることも忘れていない。
あれほど長かった行列も、いくつかの街に消え、脇道へと消え、100人程になっている。
遠かった山もはっきり見えてきて、もうすぐ国境だと教えてくれる。
未だ決められないままにネティは歩く。
ナカツクニとバーキュライト。
そりゃバーキュライトに帰りたい。
でも無事に入れるんだろうか。
ゼオライトに全て封鎖されてるだろうし、すぐ捕まってしまう気がする。
このままテラダとナカツクニに行って、時期を伺った方がいいのかもしれない。
あの黒い竜騎士達は、本当に自分を探していたんだろうか。
見つかったら、捕まったら、どうなるんだろうか。
得体の知れない怖さが、ひたひたと迫ってくるのを感じていた。
「行くは良い良い帰りは怖い。ってね。」
テラダは静かに笑う。
意味を聞くと、つまり入れるが出れる保証は無いのだと言われた。
納得だ。
街に入りたい人と迂回していく人。
もちろん迂回する。
迂回する人の列をも、検問の兵士は睨みつけている。
あ、後ろから竜の気配がする。
竜だ! と、声が上がる。
地響きが、ずんずんと骨にまで響いてきた。
黒い竜騎士が3騎。
そう、黒だ。ゼオライトの黒だ。
街の検問の兵にも緊張が走る。
怒鳴るように言葉を掛け合いながら、街を迂回する列に竜の頭を向けた。
「大人はいい。成人前くらいの子供だ。」
僕だ。
僕を探してるんだ!
肩がビクッとして、それをテラダに気づかれる。
テラダは竜騎士から隠すように僕の横に立つと、奥さんとリクを引き寄せて、まるで一つの家族のように見せてくれた。
………でも、近づいてくる。
いやだ。
いやだ。
こっちへ来ないで。
フードの下で項垂れながら、心臓が咽喉から飛び出そうなくらいに打ち付けられる。
イヤダ。
イヤダ。
頭の中でぎゅっと目を閉じて唱えると、
ドウシタノ? と返事が来た。
お願い。
こっちに来ないで。
叫ぶように祈る。
テラダの後ろに来た竜騎士が声を出そうとした時、
ワカッタ!
明るい返事が来て、赤鬼竜が立ち止まった。
「どうした!」
混乱して手綱を引く騎士を無視して、他の2頭も立ち止まる。
そしていきなり踵を返すと、街の入り口の中に突進していった。
ジャアネ!
ありがとう!
竜に返事を返すとほうっと息を吐く。
そんなネティをじっとテラダは見ていた。
街を迂回するとかなり大回りになる。
疲れてぐずったリクを背負いながら、ネティは元気に歌っていた。
奥さんがくすくす笑う。
足は疲れたけど楽しい。
流れる雲も、風も。面白い。
道端の薬草を抜け目なく採取しながら進む。
街道にいる限り、魔獣避けは要らないから気が楽だ。
旅を始めた時は、もうどうなることかと思っていた。
うん、でもなんとかなりそう。
夜は大きなテラダのテントとネティのテントを並べて立てる。
リクを連れて薪拾いも水汲みも慣れたものだ。
テラダは気付いているかもしれないが、周りに結界を張ることも忘れていない。
あれほど長かった行列も、いくつかの街に消え、脇道へと消え、100人程になっている。
遠かった山もはっきり見えてきて、もうすぐ国境だと教えてくれる。
未だ決められないままにネティは歩く。
ナカツクニとバーキュライト。
そりゃバーキュライトに帰りたい。
でも無事に入れるんだろうか。
ゼオライトに全て封鎖されてるだろうし、すぐ捕まってしまう気がする。
このままテラダとナカツクニに行って、時期を伺った方がいいのかもしれない。
あの黒い竜騎士達は、本当に自分を探していたんだろうか。
見つかったら、捕まったら、どうなるんだろうか。
得体の知れない怖さが、ひたひたと迫ってくるのを感じていた。
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