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18 次の日の各自

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ジュノの右頬は腫れている。
おかげで目も塞がって小さくなって視界が狭い。
騎士団の薬を塗って、今は冷やすしかない。

今はぱんぱんだけど。
やがて紫のアザになり、どどめ色の跡になる。

お茶会まであと4日。
困った主役王子はいないし、側妃の顔はこんなに賑やかだ。
こんな時、魔法があったら一発で問題解決できるのに……。
さしもの宰相閣下も、一瞬意識が飛びかけた。


それにしても…。

冷たい布を頬に当てる。
ジュノのエメラルドの瞳がうるうる見上げてくる。
(ほぼ片目だけど。)
こんな可愛い子を殴るなんて。
アドル様がそこまで腐っていたなんて。

~~ガッカリだよっ‼︎



「大丈夫。君は悪くありませんから。」

不安できょどっているジュノを慰める。

「最悪、フェイスベールをしましょう。
ああ、そうすれば君の正体がバレなくていいかも知れない。」

泣きすぎた左の瞼も腫れぼったい。
いつもにこにこ元気で、執務室のアイドルだったジュノのこの姿に、執務室の先輩達も、ちょっと殺気だっている。

「大丈夫。」

暗示を掛けるように、その言葉を何度も言って、柔らかなダークブラウンの髪を撫でてやる。
気持ちよさそうな、とろんとした顔に笑いかけて、

「大丈夫。君はゆっくり休みましょう。
侍従達がずっと一緒にいてくれるから、心配はいらないからね。」

ゆっくり瞼が落ちていく。
気を張っていたジュノが、うつうつと舟を漕ぎ始めたので、宰相閣下は侍従に場所を譲った。


医師棟の入院施設の王族の為の個室。
ここなら誰にも邪魔されない。
侍従に甘やかしてやるように伝えて、宰相閣下はアドル王子を探した。



アドル王子はその頃、ヤルターシにがっつりと怒られていた。
泣いている所を保護したと言われ、返す言葉も無い。
弾みだったとか、言い訳の言葉は、卑怯すぎて言えなくて。
ひたすら下を向いていた。


「大体、学園にいた時からだったけどさ。」

ヤルターシは、"混ぜるな危険"と言われた二人を知っている。
さらにはダラける前の、頑張る王子を知っている。

ダラけたアンニュイな感じも、厨二病ぽくって悪くなかったが、そろそろそれは卒業じゃないか。

「一体、ジュノの何が気に入らなかったんだ?」


~~何が?

アドルはじっと考えた。
そう言えば、何が気に入らなかったんだろう。
面と向かって嫌いだと言い放つ程に。

何が?


可愛い元気な頑張り屋さん。
それの何処があんなにカンに触ったんだろう。


あの夜、後宮に行ったら、ジュノはブロマイドを見ていた。
その上気した顔。
うっとり蕩けそうな顔は、初めて見た…。

あのブロマイドに頬ずりして…、
腹の中からイライラが溢れ出した。

取り上げようとしたら、頬を殴り飛ばしてしまった…


くしゃっという手応えの無さ。
軽く吹っ飛んでいく身体。
まるで草原のタンポポを手折ったくらいに感触が軽い。

どうしようとオタつく自分に、ぽろぽろと泣きながら大嫌いと叫ばれた訳で。


ああ、罪悪感が半端ない。


~~あれ、宰相のブロマイドだったよな。
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