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5 ままならない護衛業

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ルディといえば馬だ。
強くてかっこいい竜馬でもいいが、レア物のユニコーンだ。

ガルムと愉快な仲間達の認識は一致していた。

たてがみのような青灰色の髪。
ばさばさなまつ毛。
きゅっと引き締まったケツ。
スラリと伸びた脚。
その身体はしなやかで強い筋肉の塊だ。
何よりその目。無垢で思慮深い綺麗に澄んだ青紫。
その目で見られると地獄の底に転がったゾンビさえ起き上がってくるんじゃないかと思える程にぞくぞくする。
まるで宇宙の真理に触れた気がしてくるような尊みがある。

ルディは見かけも中身もピカ1だ。
ふにゃふにゃした美人ではなく、きりりと締まった闘える美人だ。
そんなルディなのに、馬鹿みたいに自己肯定感が低い。
「僕なんかに好かれたら迷惑だよ。」なんて抜かしやがるのだ!



ガルムはデルバイア領で、一つの町を任されている子爵の子供だ。
10歳頃にルディと一緒に学園に行く為に集められた。
ガルム以外は斥候や衛生兵の子弟が集められていて、コレが学友という名の護衛候補だとすぐ分かった。

初めてルディを見た衝撃は忘れられない。
そしてバルカン様の攻撃も。

バルカン様は普通の鍛えていない子供なら、泡を噴くような圧を向けながら「ルディに変な気を起こすな」と宣った。
わきゃわきゃ集まった子供への第一声だぜ。

おい、ちびっ子にナニを仰りますか⁉︎と思ったが。
脳筋特性のある領地。各家庭で鍛えられて来た子供達は
「やる気かぁ。おらぁ‼︎」といろめきたった。
当時の集められた人数は20人くらい。

デケェマッチョな領主の家族だろうが、俺の拳で黙らせてやるぜ‼︎と飛びかかった。
案の定、負けた。瞬殺だ。

ちっくしょおっ!と全員一斉に飛びかかった。
負けた。瞬殺だ。

連携を取って攻撃を繰り出した。
負けた。瞬殺だ。

いや、見栄張って負けたと言ったけれど。
バルカン様は片手でいなしているだけだった。

「俺に勝てない奴がルディにコナ掛けたら、死んだ方がまし。って事になるぜ」

爽やかに笑うバルカン様は地獄の閻魔そのものだった。
弟大好きを公言するバルカン様は、徹底的に心を折った。

『大丈夫です。命に変えてルディを護ります』
そうして特訓が終わったころには、全ての者が犬となり用途に合わせた者が護衛として残った。

バルカン様は学園でも無双したらしい。
らしいというのは、誰も口にしなかったからだ。
口にしないくらいに慄いているのなら、ちょっかい出されないし楽でいいなぁ。と思ってた、初めは。

楽だと思ってたのは俺らの都合で、"友達作ろうキャンペーン"を始めたかったルディは、教師迄も遠巻きにしている現実にダメージを受けていた。
「僕がデカくてみっともないから、皆んなに相手にしてもらえないんだろうか…」
そんな独り言を聞いてガルムは驚いた。

どうも薄々感じていたが、ルディは身長にコンプレックがあるようだ。

何故⁉︎

魔獣と即座に闘うために、ウチの領地は兼業兵(普段農民だったりしてる)でもクソ強ぇ。
そして自然淘汰されてオニデケェ。
食堂のおばちゃんだって、ガタイの良さは他領の衛生兵より上だ。

そんな中ですらりと高く、彫像のような筋肉のルディは、御伽話のエルフの様にいや狩をする女神のように、すんごく煌めく領地の至宝だ。
何処にコンプレックなんぞ生まれる余地があるのかわからねぇ。

でもルディはマジ悩んでる。

「僕、学園にいるうちに恋がしたいなぁ」

そんなせつないルディの告白に、ガルムは頑張れと声を掛けるしかなかった。
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