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2 ままならない交際
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「彼とは町で会ったんだ。
出会い頭にぶつかって、ごめんねって言われた。
それから図書館でまた会って、偶然だねってお茶に誘われたんだ」
偶然?
ちゃいます!
奴めはルディが水曜に図書館に行くのを把握して、網を張ってやがりました。
ガルムの脳裏に、お茶に誘われて頬を染めたルディが思い出された。
免疫の無いルディは、お口ライトなそのチャラ男にまんまと絡め取られちまったのだ。
「第二騎士団の方だとおっしゃったけど。
手に剣ダコも無いし筋肉もないでしょ。
でも背だって高くてがっちりしてるし。
ほら、王都は辺境とは違うって言うし、そんなもんなのかなぁって思ってたんだ。」
うんうん。
デルバイア家は辺境の領地。
辺境は国土の外れとか、田舎ってゆうことじゃ無い。
隣国と勃発する紛争を鎮火出来る強さと、横たわる樹海から湧いて出る魔獣を屠って国を安寧に導く領地だ。
デルバイア家は、もろ武の武による武な家だ。
ほっそり見えるルディだって、剣ダコがあるしお腹はきっちり割れている。
ルディの恋愛免疫機能は枯渇寸前なのだろう。
なんであんな男に引っかかる。
生まれ落ちた時からデルバイア家に繋がっているガルムは、何故剣ダコも筋肉も無いにょっきり高いだけの男にルディが交際を受けたのか理解出来なかった。
ルディのタイプは背の高い男だ。
どうもルディは自分の身長にコンプレックスがあるようで、自分より背の高い男に声を掛けられると素直に頷いてしまう悪癖がある。
授業の少ない水曜は、この二ヶ月ほど図書館に行っていた。
いやぁ。おかげで誘蛾灯のように目立って、下心有り有りな輩が沸く。
ルディは一人で通ってるつもりだろうが、ガルム達は密かに護衛している。
うっかり交際の始まった奴の身辺調査もガルム達の仕事だ。
だからそいつの事は知っていた。
甘い言葉を囁かれて耳まで赤くしたルディを複雑な気持ちで見ていた。
『壁ドンで顎クイでのキス』という流れを阻止した事もある。
そして勿論、バルカン様に報告した。
「第二騎士団を詐称してナンパしてやがります」
その言葉だけで、第二騎士団で副団長をなさっているバルカン様の胸筋からシャツの釦が弾け飛んだ。
何せバルカン様は弟至上主義を豪語する方だ。
伺う額には青筋が見事に浮かび上がり、どっくんどっくんしていた。
【ルディと交際したいのなら、まずは俺を倒す事だ】
何のキャッチフレーズだっ‼︎ってくらいに脳みそに刻まれたその言葉。
バルカン様によって俺らは骨身に沁みている。
奴もきっちりと刻まれたに違いない。
脳みそと言わずに体の隅々までな。
そんな訳で、今回も害獣は痕跡残さず排除されたのだ。
ルディは、「勇気を出して部屋に行ったら、もういなかったんだ」と項垂れてつぶやいた。
まじか。
いつも手を繋ぐことしかしてなかったお付き合いに、確変ばりの展開が起ころうとしてたのか。あっぶねぇ。
後一歩遅かったら、ルディは喰われて俺らは地獄行きだった!
そんな内心の叫びをちらとも見せずにガルムは微笑む。
「大家さんに聞いたら、慌ててでてったんだって…」
『あ、デジャヴ…』とルディは立ち尽くしたらしい。
今までの男もそうだった。
好きだ、愛してる。そんな言葉を垂れ流してくる。
何人かは身持ちの固いルディに剛を煮やして結局別れを告げて。
残りはある日いきなり黙って消えていた。
「別に金を貸したりして無いし、取られたものは物理的に無いけどさ。」
精神的にも恋に変わる前で、虚しさだけしか無かったけど。
自分が駄目だからかと落ち込む気持ちが溜まっていく。
なんか煮え切らなくて、置き去りにされた心だけが貯まっていく。
「僕、"恋愛をしたらゲロ臭なフェロモンを出す呪い"にでも掛かっているのかなぁ。」
恋がしたい。
したいのに踏み出せ無い。
ドキドキするけど憧れだけで、いつのまにか終わっている。
頑張ってみるけど、どうしていいのかわからない。
「教会でお祓いしてもらった方がいいのかなぁ」
そんな哀しげなルディの告白に、ガルムの微笑みはヒビが入っていく。
ちげぇ。
ソレは呪いじゃない。
そんな目に見えないものじゃ無くて、もっと実体のある恐怖だ。
その真実を口に出来ないこっちこそ呪われてるのかもしれない。
出会い頭にぶつかって、ごめんねって言われた。
それから図書館でまた会って、偶然だねってお茶に誘われたんだ」
偶然?
ちゃいます!
奴めはルディが水曜に図書館に行くのを把握して、網を張ってやがりました。
ガルムの脳裏に、お茶に誘われて頬を染めたルディが思い出された。
免疫の無いルディは、お口ライトなそのチャラ男にまんまと絡め取られちまったのだ。
「第二騎士団の方だとおっしゃったけど。
手に剣ダコも無いし筋肉もないでしょ。
でも背だって高くてがっちりしてるし。
ほら、王都は辺境とは違うって言うし、そんなもんなのかなぁって思ってたんだ。」
うんうん。
デルバイア家は辺境の領地。
辺境は国土の外れとか、田舎ってゆうことじゃ無い。
隣国と勃発する紛争を鎮火出来る強さと、横たわる樹海から湧いて出る魔獣を屠って国を安寧に導く領地だ。
デルバイア家は、もろ武の武による武な家だ。
ほっそり見えるルディだって、剣ダコがあるしお腹はきっちり割れている。
ルディの恋愛免疫機能は枯渇寸前なのだろう。
なんであんな男に引っかかる。
生まれ落ちた時からデルバイア家に繋がっているガルムは、何故剣ダコも筋肉も無いにょっきり高いだけの男にルディが交際を受けたのか理解出来なかった。
ルディのタイプは背の高い男だ。
どうもルディは自分の身長にコンプレックスがあるようで、自分より背の高い男に声を掛けられると素直に頷いてしまう悪癖がある。
授業の少ない水曜は、この二ヶ月ほど図書館に行っていた。
いやぁ。おかげで誘蛾灯のように目立って、下心有り有りな輩が沸く。
ルディは一人で通ってるつもりだろうが、ガルム達は密かに護衛している。
うっかり交際の始まった奴の身辺調査もガルム達の仕事だ。
だからそいつの事は知っていた。
甘い言葉を囁かれて耳まで赤くしたルディを複雑な気持ちで見ていた。
『壁ドンで顎クイでのキス』という流れを阻止した事もある。
そして勿論、バルカン様に報告した。
「第二騎士団を詐称してナンパしてやがります」
その言葉だけで、第二騎士団で副団長をなさっているバルカン様の胸筋からシャツの釦が弾け飛んだ。
何せバルカン様は弟至上主義を豪語する方だ。
伺う額には青筋が見事に浮かび上がり、どっくんどっくんしていた。
【ルディと交際したいのなら、まずは俺を倒す事だ】
何のキャッチフレーズだっ‼︎ってくらいに脳みそに刻まれたその言葉。
バルカン様によって俺らは骨身に沁みている。
奴もきっちりと刻まれたに違いない。
脳みそと言わずに体の隅々までな。
そんな訳で、今回も害獣は痕跡残さず排除されたのだ。
ルディは、「勇気を出して部屋に行ったら、もういなかったんだ」と項垂れてつぶやいた。
まじか。
いつも手を繋ぐことしかしてなかったお付き合いに、確変ばりの展開が起ころうとしてたのか。あっぶねぇ。
後一歩遅かったら、ルディは喰われて俺らは地獄行きだった!
そんな内心の叫びをちらとも見せずにガルムは微笑む。
「大家さんに聞いたら、慌ててでてったんだって…」
『あ、デジャヴ…』とルディは立ち尽くしたらしい。
今までの男もそうだった。
好きだ、愛してる。そんな言葉を垂れ流してくる。
何人かは身持ちの固いルディに剛を煮やして結局別れを告げて。
残りはある日いきなり黙って消えていた。
「別に金を貸したりして無いし、取られたものは物理的に無いけどさ。」
精神的にも恋に変わる前で、虚しさだけしか無かったけど。
自分が駄目だからかと落ち込む気持ちが溜まっていく。
なんか煮え切らなくて、置き去りにされた心だけが貯まっていく。
「僕、"恋愛をしたらゲロ臭なフェロモンを出す呪い"にでも掛かっているのかなぁ。」
恋がしたい。
したいのに踏み出せ無い。
ドキドキするけど憧れだけで、いつのまにか終わっている。
頑張ってみるけど、どうしていいのかわからない。
「教会でお祓いしてもらった方がいいのかなぁ」
そんな哀しげなルディの告白に、ガルムの微笑みはヒビが入っていく。
ちげぇ。
ソレは呪いじゃない。
そんな目に見えないものじゃ無くて、もっと実体のある恐怖だ。
その真実を口に出来ないこっちこそ呪われてるのかもしれない。
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