3 / 19
3 "しり"と意思疎通をはかる
しおりを挟む
「俺はイースタンという。
ここは俺の屋敷の執務室だ。」
勿論、このしりは妙齢の令息(たぶん)。
自分の顔が武器になるのは織り込み済みだ。
イースタンは領地持ちのペフェルティ伯爵家の次男だ。
王都で王太子の護衛として勤務している。
護衛騎士は剣と体術は勿論だが、高貴な方々の謁見の場にいても浮かないようにビジュアル審査が一番厳しい。
そんな訳で、自分の顔さえ武器となる者を揃えている。
おかげで街でも王宮でもきゃー♡きゃー♡だ。
その顔を意図的にふんわりと優しくして、イースタンはゆっくりとそれに語りかけた。
それが頬を染めた。(気がする)
ぷるぷるは相変わらずだが、恐怖よりも恥じらいのぷるぷる♡に、変化した気がする。
「君は何故ここにいたのかな?
まず、君の名前を教えてくれるかな?」
頭の片隅で、それに話しかけてる俺って、ぜってぇ変な奴に見えるだろうなぁ。と思った。
それはもじもじ(たぶん)している。
ふよふよした影が伸びたり縮んだりするのを見て、
ああ、喋れないのか。と思った。
(だよね。口無いしね。)
ちょっと待ってね。
と言いながら、そうっと立ち上がる。
それが逃げ出さないのを何度も確かめるように見てから、ゆっくりと机まで行くとそこに下がる呼び紐を引いた。
夜の静けさの中。
何処かでリン、リンと音がする。
すぐに微かな足音とノック音がして。
それはびくりと(見た目はのごのごしてるだけだが、ほら雰囲気的に)震えた。
人差し指を口に当てて、しーと笑いながらドアに向かう。
言っとくが目は離さない。
今更逃しはしない。
一点集中でそれを見ている。
ドアの向こうには従者が立っていた。
「叔父上が遊びにいらっしゃった時に、子供達が使ってたウィジャボードがあっただろう。出来るだけ急いで持ってきてくれ。」
いきなりの変な指示にも訓練された従者は驚かない。
すぐに持ってきてくれた。
ウィジャボードは文字や数字が書いてある盤だ。
1年ほど前に"霊と話せる"と話題になった。
新しもの好きな叔父達は、"霊の言葉を聞く"と我が家に持ってきて遊んでた。
確かにこの屋敷は古くてボロくて幽霊が住んでいそうだ…あ、幽霊は多分、今夜見つけたよ。やっぱり住んでた。
従者が去ってもそれは怯えていた。
ボードをそっと床に置く。
そしてイースタンは沢山の文字とYESとNOの文字を指差した。
「俺の言葉が聞こえているね?
俺も君の言葉が聞きたいんだよ。」
イースタンの指先を見ると、それは小さく頷いた。
薄ぼんやりした影がYESをそっとなぞる。
幸い影は行き先を見定める事が出来る濃さだ。
「わかってくれてありがとう。
とても嬉しいよ。わからない事があったら質問してほしい。出来たら友達になりたいんだ。」
なぁ~んてね。
でも、何よりも。
字を理解してるって事は、貴族として教育された令息だろう。
身元を探す手助けにもなるはずだ。
イースタンはわくわくと昂っていた。
こんな珍しいもの初めてだ‼︎
なんとか捕まえたい!
逃したくない‼︎
その目新しさに心は高鳴っていた。
ここは俺の屋敷の執務室だ。」
勿論、このしりは妙齢の令息(たぶん)。
自分の顔が武器になるのは織り込み済みだ。
イースタンは領地持ちのペフェルティ伯爵家の次男だ。
王都で王太子の護衛として勤務している。
護衛騎士は剣と体術は勿論だが、高貴な方々の謁見の場にいても浮かないようにビジュアル審査が一番厳しい。
そんな訳で、自分の顔さえ武器となる者を揃えている。
おかげで街でも王宮でもきゃー♡きゃー♡だ。
その顔を意図的にふんわりと優しくして、イースタンはゆっくりとそれに語りかけた。
それが頬を染めた。(気がする)
ぷるぷるは相変わらずだが、恐怖よりも恥じらいのぷるぷる♡に、変化した気がする。
「君は何故ここにいたのかな?
まず、君の名前を教えてくれるかな?」
頭の片隅で、それに話しかけてる俺って、ぜってぇ変な奴に見えるだろうなぁ。と思った。
それはもじもじ(たぶん)している。
ふよふよした影が伸びたり縮んだりするのを見て、
ああ、喋れないのか。と思った。
(だよね。口無いしね。)
ちょっと待ってね。
と言いながら、そうっと立ち上がる。
それが逃げ出さないのを何度も確かめるように見てから、ゆっくりと机まで行くとそこに下がる呼び紐を引いた。
夜の静けさの中。
何処かでリン、リンと音がする。
すぐに微かな足音とノック音がして。
それはびくりと(見た目はのごのごしてるだけだが、ほら雰囲気的に)震えた。
人差し指を口に当てて、しーと笑いながらドアに向かう。
言っとくが目は離さない。
今更逃しはしない。
一点集中でそれを見ている。
ドアの向こうには従者が立っていた。
「叔父上が遊びにいらっしゃった時に、子供達が使ってたウィジャボードがあっただろう。出来るだけ急いで持ってきてくれ。」
いきなりの変な指示にも訓練された従者は驚かない。
すぐに持ってきてくれた。
ウィジャボードは文字や数字が書いてある盤だ。
1年ほど前に"霊と話せる"と話題になった。
新しもの好きな叔父達は、"霊の言葉を聞く"と我が家に持ってきて遊んでた。
確かにこの屋敷は古くてボロくて幽霊が住んでいそうだ…あ、幽霊は多分、今夜見つけたよ。やっぱり住んでた。
従者が去ってもそれは怯えていた。
ボードをそっと床に置く。
そしてイースタンは沢山の文字とYESとNOの文字を指差した。
「俺の言葉が聞こえているね?
俺も君の言葉が聞きたいんだよ。」
イースタンの指先を見ると、それは小さく頷いた。
薄ぼんやりした影がYESをそっとなぞる。
幸い影は行き先を見定める事が出来る濃さだ。
「わかってくれてありがとう。
とても嬉しいよ。わからない事があったら質問してほしい。出来たら友達になりたいんだ。」
なぁ~んてね。
でも、何よりも。
字を理解してるって事は、貴族として教育された令息だろう。
身元を探す手助けにもなるはずだ。
イースタンはわくわくと昂っていた。
こんな珍しいもの初めてだ‼︎
なんとか捕まえたい!
逃したくない‼︎
その目新しさに心は高鳴っていた。
10
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
わたしの髪を乗りこなせ
にのみや朱乃
青春
夏子はひどいクセ毛で、毎日ヘアアイロンで髪を直していた。髪をストレートに直すことがマナーだと思っていた。学年が上がってクラス替えがあり、夏子は藍美に出会う。藍美は夏子がクセ毛であることを見抜き、自分も同じだと告白する。
これは、二人のクセ毛との戦いの物語。
双極性感情障害の私の日記
えみ
エッセイ・ノンフィクション
私は重度の双極性感情障害者です。
それゆえ私は、人が君臨するこの世界では生き辛く何度も自殺未遂をしてきました。
それでも私は生きている。
どうか……この愚かなる私の日記を読んで己の幸せを噛み締めていただきたく馳せ参じました。
よろしくお願いします。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
フリーターは少女とともに
マグローK
キャラ文芸
フリーターが少女を自らの祖父のもとまで届ける話
この作品は
カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054891574028)、
小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4627fu/)、
pixiv(https://www.pixiv.net/novel/series/1194036)にも掲載しています。
わたくし、今から義妹の婚約者を奪いにいきますの。
みこと。
恋愛
義妹レジーナの策略によって顔に大火傷を負い、王太子との婚約が成らなかったクリスティナの元に、一匹の黒ヘビが訪れる。
「オレと契約したら、アンタの姿を元に戻してやる。その代わり、アンタの魂はオレのものだ」
クリスティナはヘビの言葉に頷いた。
いま、王太子の婚約相手は義妹のレジーナ。しかしクリスティナには、どうしても王太子妃になりたい理由があった。
ヘビとの契約で肌が治ったクリスティナは、義妹の婚約相手を誘惑するため、完璧に装いを整えて夜会に乗り込む。
「わたくし、今から義妹の婚約者を奪いにいきますわ!!」
クリスティナの思惑は成功するのか。凡愚と噂の王太子は、一体誰に味方するのか。レジーナの罪は裁かれるのか。
そしてクリスティナの魂は、どうなるの?
全7話完結、ちょっぴりダークなファンタジーをお楽しみください。
※同タイトルを他サイトにも掲載しています。
猫令嬢の婚約破棄。
たまご
ファンタジー
エリス=バーガンディ辺境伯令嬢は、王太子より婚約破棄を告げられた。
理由は、常にエリスの周囲にいる猫達であった。
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんにも掲載しています。
赭坂-akasaka-
暖鬼暖
ミステリー
あの坂は炎に包まれ、美しく、燃えるように赤い。
赭坂の村についてを知るべく、男は村に降り立った。 しかし、赭坂の事実を探路するが、男に次々と奇妙なことが起こる…。 ミステリーホラー! 書きながらの連載になるので、危うい部分があります。 ご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる