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結婚への道 ヴォルフ

4 ビリビリボーイ

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どちらに非があるかはあきらかなのに、非難されたのはヴォルフだった。
セルジオが何よりも心胆を寒からしめたのは護衛のルーズな認識だった。

「え?夜這いは文化ですよねえ?」

そう答える奴等に阿保かっ‼︎と声がでてしまった。
良く考えろっ、ヴォルフ様は未成年だ!
子供への強制性交は文化の夜這いじゃ無くて犯罪だぞっ!
しかも王族に暗殺とかって考えんのかいっ‼︎
セルジオは王城の風紀がズブズブゆるゆるな事に恐怖さえ覚えた。

ミシェイラ姫が搬出され、魔法局長官が呼ばれた。
だってヴォルフは雷を落としたのだ。
稀有な能力に浮き足立つ長官を御しながら、補佐のクレストが防音結界を張る。
結界の中には宰相と長官とヴォルフとセルジオが残った。
人目が無くなって虚脱したアーティバルト王太子は迷子のように見える。

「長官…ミシェイラに子が産まれるまでは、ヴォルフとの関係を疑われないようにしたいのだ。良い方法は無いだろうか?」

「アーティバルト様っ‼︎あります!」

おずおずしたアーティバルトに、食い気味に長官は叫んだ。
その目は爛々と光り、肺活量からの大声に元気溌剌で意気揚々なのがわかる。

「1M以内に他の人間がいて勃った逸物が存在したら、自動で発電して電撃を落とす魔道具が完成しております!
略して"勃ったらビリビリ君"です‼︎」

コレは伴侶の不倫を疑う貴族の依頼で作ったものだった。
自分以外といちゃつこうとしたらビリビリしちゃう拷問系なのだ。
でもせっかく作ったのにエネルギーを自己魔力に設定したら、雷系の魔力でしか発動しなかった。それが目の前に雷魔法の持ち主が現れたのだ!
後先考えずに長官はせっせと売り込む。
『もうヴォルフ様の為の魔道具と言っていいくらいピッタリです!』と。

……そういえば魔法局は変人とオタクで有名だった。
長官は『狙ったスカートが捲れる魔道具』とか、『服のボタンが一気に外れる(貴族は使用人に着せて貰うので自分の手の届かない所にボタンが多い)魔道具』とかを至極真面目に開発している変人だった。

防音結界を張って護衛達への後始末をして、補佐のクレストが帰って来た時にはその談合は既に終わった後だった。
"長官の調教師"と二つ名を持つクレストが愕然&激怒したのは言うまでも無い。

こうしてヴォルフは若干12歳という若さで、他人とちんちんのデカさを競う楽しみも好きな子といちゃつく楽しみも無くした。
王族、それも未成年の第二王子がそんな大きな声で言えない魔道具を着けるにあたってすぐに魔法契約書が作成された。
仄めかすだけでも発動しちゃうバッリバリ硬派な契約書は、王とアーティバルト王太子とミシェイラ姫。セルジオ、宰相と財務大臣と魔法局長官、そして契約書を作成した補佐のクレストの8人がサインした。


普通、自分のせいで子供に変なモノつける事になったら『ごめんね』だよね?
でも王城に夜這い文化を発信しているミシェイラ姫は、ヴォルフの手を掴むと自分の胸に突っ込んだりしてビリビリして苦しむ姿を笑った。

ちっ、いい性格してやがる。
セルジオは王族の暴挙を阻止出来ずに、ギリギリとビリビリざんまいを見ていた。

そのうちヴォルフは無反応になった。(無理もない)
スカートに手を突っ込ませても凪いだ賢者の目をするヴォルフに、ミシェイラ姫はぷんすかと背を向けた。

でもミシェイラ姫がいなくなったら、今度は他の奴らがにじり寄って来たのだ。

ヴォルフの孤独な苦悩感はなんか妖しいフェロモンを放って、馬鹿な大人がセクハラをかませてくる。
ビリビリバリバリジャンジャンと、そりゃもう発動した。

電撃の主電源はヴォルフの魔力。
おかげで魔力量は無茶苦茶増えた。
しかも相手が理不尽なのに自分が痛い事に納得出来なかったヴォルフは、カーブ付けたり強弱付けたりと自由自在に操れるようになって長官を慶喜させた。

悲しい事にこうやってヴォルフは真のビリビリボーイになったのだ。
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