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結婚への道 ヴォルフ

2 ワンでオンリーな侍従

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ヴォルフの専属の侍従はセルジオだけだ。
臣籍降下確定の第二王子とはいえ、これは有り得ない。

実際ご学友選別のお茶会の時は、子供がわらわらと集まった。
王家との繋がりを求めてその親達も目の色を変えていた。
次男以降が多かったが、金魚の糞のようにヴォルフの後をついてまわった。

それがセルジオ一人になったのは、王妃つまり母上様が身罷った為だ。
お二人で実家の領地に向かった時に、王妃は事故に巻き込まれて旅立たれた。
その通夜の席で、事故の後寝込んでいてようやく姿を見せたヴォルフに兄のアーティバルトは「お前のせいだ!」とはきゃあがったのだ。
テンプレである。

子供が自分より幼いものに罪悪感と責任を押し付ける馬鹿馬鹿しさよりも、それを止めない王にセルジオは引いた。

王族は一気に死亡するのを防ぐために行動を分ける。
子供の王太子は自分がのけものにされた気がして癇癪を起こしたんだと思う。
でも、それを止めたりフォローしない大人ってどうよ。

王妃の死は王のタガを弾き飛ばした。
周りはどうしていいかわからなくて右往左往し、それを見た貴族は日和見で動く。
王太子の顔色を読んだ奴らは潮が引くようにヴォルフの周りから消えていった。
で、残ったのはセルジオだけだった訳だ。

セルジオは分家として渡せる爵位も金も無くついでに領地も無い貧乏な男爵家の三男だったが、オロオロするだけの家に三下り半を叩き付けて家を出た。
どうせ長男次男は日和見の凡庸で、将来関わることもないと決断した。
そしてオンリーな侍従としてヴォルフに仕え始めた。

臣籍降下すれば王族なら公爵となる。
仕えるには旨みあるじゃん!と周りが気がついた時には、もうヴォルフの心はシャッターが降りていた。
そんな訳で専属はセルジオ一人なのだ。

人に取り囲まれチヤホヤされるアーティバルト王太子と違い、ヴォルフは「おまえのせいだ!」をしっかり受け止めて頭脳も身体も鍛え始めた。
真面目である。
何気にヴォルフとの接触を避ける王太子を
セルジオは意地悪く見ていた。
つまり。はっはっはこれで頑張る弟が益々出来る男になったら、お前のコンプレックは山よりも高く谷よりも深くなっちまうんだぞーと見ていた訳だ。

チヤホヤされる割に我儘も言わずに過ごす兄と寡黙な弟。
そんな関係がどんでん返しで荒ぶれたのは王太子の成人祝いの晩餐会だった。
(ちなみに学校の寮生活のヴォルフは未成年で主席していない)

隣国リフェールドのミシェイラ姫がアーティバルト王太子に一目惚れをしたのだ。
脳味噌の割合が筋肉と恋愛で占められていると影口をたたかれるリフェールド人は、感情を全面に押し出して来る。
シャイでおとなしめのわが国とは、温度差がちょっとね。と思えた。
リフェールドは姫のおねだりに関税とか輸入とか軍事力を飴と鞭にして迫った。
ミシェイラ姫は豊かな黒髪とキラキラしたルビーレッドの瞳の美少女で、なんやかんやと婚約が締結された途端に、馴染む為にと国入りしてきた。

王太子16歳、ミシェイラ姫13歳。
綺麗な二人のイチャラブに国中が沸いた。
婚約せんべい。
婚約まんじゅう。
婚約ノート。
婚約えんぴつ。
婚約缶バッチ。 etc。
完全ウェルカム感と便乗商法で景気が一気に上向いた。

そんな賑わいから隔離された学校の寮でヴォルフはマイペースに過ごしていた。
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