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第7話

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「まず、シャーロットさんを推薦する理由を教えてくれますか?」

「私はシャーロットさんが好きです。一番の理由はこれですが、他にもあります。私は第三王子なので、王位継承争いに参加したくありません。そこで、公爵家に婿に入ってしまえば争いをせずに済むでしょう。その為にシャーロットさんを養子に迎えて欲しいのです」

「殿下がシャーロットさんを養子に迎えて欲しい理由は分かりました。では、私がシャーロットさんを養子に迎えるメリットはありますか?」

「まず、養子となる人を見極める必要が無くなります。それにシャーロットさんは元貴族で優秀なので、家のために尽力してくれますよ」

「しかし、廃嫡されたのでしょう?大丈夫なのですか?」

「大丈夫です。この私が選んだのですから。それに廃嫡されたのも、シャーロットさんの責任ではないようですし。その件については、私がもう少し調べてみます」

「よく分かりました。では、シャーロットさんにお聞きします」

 話を聞いていただけのシャーロットは突然話を振られて驚いた。

「は、はい!何でしょう?」

「あなたは、公爵家の娘になる覚悟はおありですか?」

 そう聞かれたシャーロットは、悩んでからゆっくりと答えた。

「…正直、不安がないと言えば嘘になります。ですが、ウィリアム殿下となら、頑張れる気がします」

 ウィリアムは驚いてシャーロットを見ている。恥ずかしくてウィリアムの方を向けなかったが、シャーロットの言葉に嘘はなかった。その言葉を聞いたサクシードは、笑って頷いた。

「いいでしょう。シャーロットさん、あなたを養子に迎えます。これからは、私の事はお父様、と呼びなさい」

「え…」

 この要求に困っていると、ウィリアムが隣から助け舟を出してくれた。

「いきなりお父様呼びは早いですよ、公爵」

「いいでしょう。自分の子供にそう呼んでもらえるのが夢だったのですから」

 そう言ってサクシードは笑う。シャーロットは涙が出そうだった。以前は話しかける事も、お父様と呼ぶ事も嫌がられた。そんな私が、お父様と呼んで欲しい、とお願いされた。すごく嬉しくて、シャーロットも笑って要求に応える。

「お父様、どうぞよろしくお願いします」

「ああ。早速妻に挨拶に行こう」

 サクシードの妻にも挨拶に行き、大変喜ばれた。こちらもお母様と呼んで欲しい、と言うので呼ぶと、すごく嬉しそうにしていた。途中で使用人にも挨拶する。

 こうして、運命の歯車は動き出した。
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