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第8話
しおりを挟む「こんにちは」
「あら、颯汰くんまた来てくれたの?」
「うん。これから毎日来ようと思ってるんだけど、いいかな?」
「私も悠雅も構わないけど…颯汰くんが大変じゃない?」
「僕は大丈夫だよ!あと、友達もお見舞いに来たいって言ってるんだけど、いい?」
「友達って、海くんとか、奏斗くんとか?」
「そうそう!」
「それなら悠雅も喜ぶわ。本当にありがとうね、颯汰くん」
「早く元気になってほしいから!」
颯汰がそう言うと、悠雅の母親が一瞬悲しそうな顔をした。
「…どうしたの?」
「実は…悠雅の心臓の病気、移植しないといけないらしくて…」
「移植…?」
「他の人の心臓を悠雅の心臓と取り換えなきゃいけないの。心臓を取り換えてくれる人をドナーって言うんだけど、ドナーがずっと見つからなかったらずっと病院にいなきゃいけないし、最悪、見つかるより早くに…」
そこで悠雅の母親は口を閉じる。颯汰は無意識に身震いした。
「ついこの間まで、普通に遊んでいたのに…なんで?なんで悠雅なの?悠雅、なんにも悪いことしてないじゃん…」
颯汰は耐え切れずに俯いて、唇を噛んだ。悠雅の母親の、鼻をすする音が聞こえる。
「やっぱり、今日は帰るね。こんな気持ちで悠雅に会っても悠雅を不安にさせるだけだし」
「…分かった。ありがとう。気をつけて帰ってね」
「うん」
こうして颯汰は病院をあとにした。
次の日学校へ行くと、健悟たちが待っていた。
「颯汰!聞いてくれた?」
「うん。聞いたよ」
「どうだった?」
「…心臓を、移植しなきゃいけないんだって…」
「え?移植って、あれだよね?他の人と心臓を入れ替えるやつ…」
「うん…」
3人が、口を開けたまま固まっている。
「ど、どうしよう…どうしたらいいんだろ…」
「分かんない…」
海が悩みに悩んで、案を出した。
「昼休みに図書室の先生に聞いてみない?」
「そうだね…それしかないかも」
ちょうどよく、五分前のチャイムが鳴る。颯汰たちは一度目を合わせてから、それぞれの席についた。どうしたらいいのか答えが出ないまま、昼休みになった。
「よし、行くぞ!」
颯汰たちはまた、教室を飛び出す。図書室に着くと、急いで靴を脱いで、カウンターを見る。
「先生!」
「こんにちは。何か分かった?」
「うん!悠雅は心臓の病気で、移植しなきゃいけないんだって…」
奏斗は威勢よく話し出したが、段々と声が小さくなり、遂に黙ってしまった。見かねた健悟が助け舟を出す。
「だからさ、先生。俺たちにもできる事ないかな?」
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