【完結】幸せの嘘

チンアナゴ🐬

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第5話

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「悠雅くんのお母さん、こんにちは」

「こんにちは。わざわざありがとう」

「いいのよ。私も心配でじっとしていられなかったから」

「颯汰くんもこんにちは。悠雅のためにありがとうね」

「こんにちは。俺も心配だったから、会えなくてもいいから行こうと思って」

 悠雅の母親は、真剣な表情で話し始めた。

「悠雅、心臓の病気かもしれないって」

 思わず、颯汰は声を出す。

「心臓?ほんとに?」

「うん。まだ全ての検査が終わった訳じゃないから、はっきりとは言えないって言われたけど」

「心臓って、やばいんじゃ、」

「うん。悪くない事を祈るしかないね。明日結果がわかるから、また連絡するね」

 颯汰の母親が声をかける。

「何かあったらいつでも言ってね。助けになるから」

「ありがとう。気をつけて帰って」

「さようなら」

「さようなら」

 十分程度の短い会話を終えて、颯汰は帰った。帰りの車の中で、颯汰は母親に相談した。

「お母さん。僕にできることってあるかな?」

「とりあえず、悠雅くんの回復を祈ることじゃない?悠雅くんを、信じよう」

「うん」

 次の日、早めに学校に行くと海たちが待っていた。

「あ、来た!」

 颯汰の姿を見て、駆け寄ってくる。

「颯汰。昨日、悠雅の様子を見に行ったんだろ?」

「うん。行ってきた」

「どうだった?元気にしてた?」

「悠雅には会えなかった。検査がいっぱいあるからって」

「そうか…」

 なんとも言えない表情で三人は顔をあわせる。すると、奏斗が颯汰の目を見て言った。

「颯汰。僕たちもお見舞いに行っていいかな…?」

「…分かんないけど、悠雅のお母さんなら許してくれそう。行ってみる?」

 曖昧な颯汰の答えを聞いて、健悟が呟く。

「迷惑じゃないかな…」

 悩んだ後、颯汰は言った。

「じゃあ、今日行った時に悠雅のお母さんに聞いてみるよ」

「うん、お願い」

 しばらく静寂が訪れる。海が、外に目を向けたまま小さな声で言った。

「俺たちがしてやれる事はあるのかな…」

 颯汰は、昨日母親に言われた事を言おうとした。だが、それでは海は納得しないだろうし、自分も納得出来ない、と考えて、やめた。だから、颯汰は三人に提案した。

「俺たちで調べてみようぜ」

「そうだな。何も出来ないなんて絶対嫌だしな!」

「そうだよ。じっとしてるなんて俺たちらしくない!」

「昼休み、図書室に行くぞ!本を片っ端から読むぜ!」

「そうだな。よし、頑張ろう!俺たちで悠雅を助けるんだ!!」

「「「「おー!!」」」」

 四人は動き出した。
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