【完結】幸せの嘘

チンアナゴ🐬

文字の大きさ
上 下
3 / 13

第3話

しおりを挟む

「ただいまー!」

「おかえり!今日も楽しかった?」

「うん。すっごい楽しかった!」

「良かったわね」

 短い会話をして、手洗いうがいをした颯汰は二階の自分の部屋へと急いだ。帰って来ると、ランドセルを放り投げてすぐに遊びに行くので、颯汰は母親と「帰ってきたら夜ごはんまでに宿題を終わらせる」という約束をしている。
 以前、一度だけ約束を破ってゲームをしていて母親に見つかり、次の日に宿題が終わるまで遊びに行けなかった事がある。その日に、颯汰はこれから絶対に約束を破らないと誓ったのだった。
 30分程で漢字ドリルと計算ドリルを終わらせて、最後に日記に取り掛かる。文章を考えるのは面倒くさいが、日記は週に一回なのでネタはいくらでもある。颯汰は毎回遊んだ事について書いている。一番、自分の印象に残っている事といえば、それしかないからだ。颯汰は知らないが、他の四人も遊んだ事を書くので、担任の先生は意図せず颯汰たちの遊びの内容を熟知していた。

「よし、きーめた!嘘つきゲームの事にしよ!」

 どんな内容にしようか、考えながら題名を書く。題名はいつも同じになってしまう。『今日の遊び』だ。

「あんなゲームしたの初めてだったもんなー。なんか、何となく楽しかった」

 忘れないように、一人でぶつぶつと話しながら書いていく。30分後、日記も無事に書き終わった。

「終わったー!!よし、ゲームしよ」

 次の日の準備も終わらせ、鉛筆を削り先を尖らせて、筆箱にしまってランドセルを閉めた颯太は、Sw○tchを手に取ってゲームを始めた。夜ご飯が出来たら母親が呼んでくれるので、それまでは自由時間だ。しかし、今日は日記も書いたので、いつも呼ばれる時間まで15分程しかない。今日はあまり出来ないかな、という颯汰の予想通り、すぐに呼ばれた。はーい、と返事をしてゲームをセーブする。階段を駆け下りると、颯汰の大好きなとんかつが出来たてだった。

「とんかつだ!お母さん、ありがとう!!」

 そう言うと母親はにこっと笑って、手を洗ってきなさい、と言った。颯汰は小走りで洗面所に手を洗いに行き、戻ってくる。手を合わせて、大きな声で言った。

「いただきまーす!!」

 母親も椅子に座る。その時、電話がなった。

「はい、もしもし。ああ、悠雅君のお母さん!どうしたの?」

 颯汰達は昔から仲が良いので、親同士も仲が良かった。こんな時間にどうしたのかな、と颯汰は思う。次に颯汰の耳に入ってきたのは、母親の衝撃的な言葉だった。

「…え?悠雅くんが倒れた?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ことりの台所

如月つばさ
ライト文芸
※第7回ライト文芸大賞・奨励賞 オフィスビル街に佇む昔ながらの弁当屋に勤める森野ことりは、母の住む津久茂島に引っ越すことになる。 そして、ある出来事から古民家を改修し、店を始めるのだが――。 店の名は「ことりの台所」 目印は、大きなケヤキの木と、青い鳥が羽ばたく看板。 悩みや様々な思いを抱きながらも、ことりはこの島でやっていけるのだろうか。 ※実在の島をモデルにしたフィクションです。 人物・建物・名称・詳細等は事実と異なります

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

So long! さようなら!  

設樂理沙
ライト文芸
思春期に入ってから、付き合う男子が途切れた事がなく異性に対して 気負いがなく、ニュートラルでいられる女性です。 そして、美人じゃないけれど仕草や性格がものすごくチャーミング おまけに聡明さも兼ね備えています。 なのに・・なのに・・夫は不倫し、しかも本気なんだとか、のたまって 遥の元からいなくなってしまいます。 理不尽な事をされながらも、人生を丁寧に誠実に歩む遥の事を 応援しつつ読んでいただければ、幸いです。 *・:+.。oOo+.:・*.oOo。+.:・。*・:+.。oOo+.:・*.o ❦イラストはイラストAC様内ILLUSTRATION STORE様フリー素材

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

君と奏でるトロイメライ

あさの紅茶
ライト文芸
山名春花 ヤマナハルカ(25) × 桐谷静 キリタニセイ(25) ピアニストを目指していた高校時代 お互いの恋心を隠したまま別々の進路へ それは別れを意味するものだと思っていたのに 七年後の再会は全然キラキラしたものではなく何だかぎこちない…… だけどそれは一筋の光にも見えた 「あのときの続きを言わせて」 「うん?」 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと -   

設樂理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡ やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡ ――――― まただ、胸が締め付けられるような・・ そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ――――― ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。 絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、 遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、 わたしにだけ意地悪で・・なのに、 気がつけば、一番近くにいたYO。 幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい           ◇ ◇ ◇ ◇ 💛画像はAI生成画像 自作

処理中です...