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第3話
しおりを挟む「ただいまー!」
「おかえり!今日も楽しかった?」
「うん。すっごい楽しかった!」
「良かったわね」
短い会話をして、手洗いうがいをした颯汰は二階の自分の部屋へと急いだ。帰って来ると、ランドセルを放り投げてすぐに遊びに行くので、颯汰は母親と「帰ってきたら夜ごはんまでに宿題を終わらせる」という約束をしている。
以前、一度だけ約束を破ってゲームをしていて母親に見つかり、次の日に宿題が終わるまで遊びに行けなかった事がある。その日に、颯汰はこれから絶対に約束を破らないと誓ったのだった。
30分程で漢字ドリルと計算ドリルを終わらせて、最後に日記に取り掛かる。文章を考えるのは面倒くさいが、日記は週に一回なのでネタはいくらでもある。颯汰は毎回遊んだ事について書いている。一番、自分の印象に残っている事といえば、それしかないからだ。颯汰は知らないが、他の四人も遊んだ事を書くので、担任の先生は意図せず颯汰たちの遊びの内容を熟知していた。
「よし、きーめた!嘘つきゲームの事にしよ!」
どんな内容にしようか、考えながら題名を書く。題名はいつも同じになってしまう。『今日の遊び』だ。
「あんなゲームしたの初めてだったもんなー。なんか、何となく楽しかった」
忘れないように、一人でぶつぶつと話しながら書いていく。30分後、日記も無事に書き終わった。
「終わったー!!よし、ゲームしよ」
次の日の準備も終わらせ、鉛筆を削り先を尖らせて、筆箱にしまってランドセルを閉めた颯太は、Sw○tchを手に取ってゲームを始めた。夜ご飯が出来たら母親が呼んでくれるので、それまでは自由時間だ。しかし、今日は日記も書いたので、いつも呼ばれる時間まで15分程しかない。今日はあまり出来ないかな、という颯汰の予想通り、すぐに呼ばれた。はーい、と返事をしてゲームをセーブする。階段を駆け下りると、颯汰の大好きなとんかつが出来たてだった。
「とんかつだ!お母さん、ありがとう!!」
そう言うと母親はにこっと笑って、手を洗ってきなさい、と言った。颯汰は小走りで洗面所に手を洗いに行き、戻ってくる。手を合わせて、大きな声で言った。
「いただきまーす!!」
母親も椅子に座る。その時、電話がなった。
「はい、もしもし。ああ、悠雅君のお母さん!どうしたの?」
颯汰達は昔から仲が良いので、親同士も仲が良かった。こんな時間にどうしたのかな、と颯汰は思う。次に颯汰の耳に入ってきたのは、母親の衝撃的な言葉だった。
「…え?悠雅くんが倒れた?」
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