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27、クラン構想
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「――では。第1回研能主催新クラン【炎麗黒猫】のオーディション会議を始める」
大手配信冒険者事務所【研能】代表取締役社長鷹田の言葉により会議が始まった。
「まずは……そうだな。仮面冒険者――炎氏のクラン構想をお聞かせ願いたい」
「構想ですか」
猫の姿をした炎の仮面冒険者は少し考え込み、言葉を紡ぐ。
「何か偉業を成し遂げたいという訳じゃなくて個人の願いとして配信冒険者の人達に死んで欲しくないんです。
だからやむを得ず配信冒険者になった少年少女の支援が出来るクランにしたいと思っています」
「ではやはり全ての少女冒険者をオーディションに合格させるつもりなのかね?」
「はい。【炎麗黒猫】に入りたいという女の子は必ず」
「既に【研能】には3万通の履歴書が送られてきているんだが」
「3万ッ!?」
3万という言葉に綾覇らが反応する。
自分達がオーディションを受けた時は3000人だった。
その時のオーディションでは【黒猫ハーバリウム】の他に2つほど女性配信冒険者パーティーが結成されたが、デビュー前に音を上げた候補者が出た事でパーティーデビューはしていない。
配信映えする容姿、ダンジョンを踏破可能な冒険者としての実力、そして胆力を備えたのは3000人集めても綾覇、碧偉、龍美、清楓の4人だけだったと言える。
「クランに加入した3万人もの少女冒険者を君は死なせないと言うのか?」
「クランには入れますがダンジョンに潜らせるつもりはありません」
「どういう事だ?」
「まず面接をしてやむを得ず配信冒険者にならないといけなくなったという少女に関しては奨学金を出します」
「奨学金?」
「ええ。金銭面の問題さえ解消されれば命を削ってまで冒険者になるつもりはないという少女には冒険者はさせません」
【金だけ出して冒険者にはさせない】という構想にはその場にいた全員が驚愕した。
「本気か!?いったいどれだけ金額が必要になると思ってるッ!?」
「全てクランが負担するなんて無理なのは分かってますがある程度は俺が稼ぎます。政府からの指名依頼もこれから沢山来るでしょうし」
桂城和奏と早海橙子は視線を泳がせる。
「何故そんな事が出来る?」
大手配信冒険者事務所の代表取締役社長として利益を出し経営を存続させる事を求められてきた鷹田は仮面冒険者の行動が理解できなかった。
「出来るというかせざるを得ない感じですね。私生活では普通の一般人でいたいんで。となるといくら稼ごうが俺自身の為に使えないんですよ」
まさかの答えに鷹田は唖然とする。
「――それにこれから暫くは日本の冒険者の一番手という扱いを受けるんでしょうけど、養育環境が厳しくダンジョンに潜らざるを得ない子供たちを見殺しするような人間は冒険者の頂点にいるべきじゃないと思うんで」
さっさと誰かに抜いてもらいたいですねとお道化てみせるも冒険者としてのその姿勢に周囲は驚きを隠せない。
「わかった!【炎麗黒猫】に助けを求めてきた少女たちは【研能】が総力を挙げて素晴らしい女性に育てあげてみせようッ!!」
仮面冒険者の姿勢に感化されたのか鷹田は意気軒昂に新クランへの全面協力を誓った。
「ありがとうございます」
「さ、清楓も黒猫ハーバリウムの活動で頂いたお給料、出来るだけ寄付するからッ!!」
「清楓ちゃんもありがとう」
「えへへ」
清楓は炎から感謝され、はにかむ。
「して、女性冒険者は全員受け入れるのは納得したが、男性冒険者はどうする?男が大量に押し寄せればトラブルも必ず起きてしまうぞ?書類審査で弾かなければ反社会的な人物までやって来るかもしれん」
「そうですね……他者を平気を傷つけるような人物には脱退通告をしないといけないと思います。募集の段階から脱退通告条件は明記しておきましょう」
「男性冒険者も全員加入させるつもりなのか?」
「それこそ少年冒険者を半グレ組織の餌にする訳にはいかないですし。人生における何かを変えたくて【炎麗黒猫】に応募した男性にも機会は与えたいと思ってはいます。クラン創立後、暫くは男性冒険者と女性冒険者を別行動に分けた方がいいんでしょうね」
「真摯に挑戦したい冒険者と危険人物をどう見極めるつもりなんだ?」
鷹田の問いに炎はしばし考え込み、こう言い放つ――。
「――既に考えてる判別方法があります。複数の大規模会場を同日に確保してもらう事は可能でしょうか?」
大手配信冒険者事務所【研能】代表取締役社長鷹田の言葉により会議が始まった。
「まずは……そうだな。仮面冒険者――炎氏のクラン構想をお聞かせ願いたい」
「構想ですか」
猫の姿をした炎の仮面冒険者は少し考え込み、言葉を紡ぐ。
「何か偉業を成し遂げたいという訳じゃなくて個人の願いとして配信冒険者の人達に死んで欲しくないんです。
だからやむを得ず配信冒険者になった少年少女の支援が出来るクランにしたいと思っています」
「ではやはり全ての少女冒険者をオーディションに合格させるつもりなのかね?」
「はい。【炎麗黒猫】に入りたいという女の子は必ず」
「既に【研能】には3万通の履歴書が送られてきているんだが」
「3万ッ!?」
3万という言葉に綾覇らが反応する。
自分達がオーディションを受けた時は3000人だった。
その時のオーディションでは【黒猫ハーバリウム】の他に2つほど女性配信冒険者パーティーが結成されたが、デビュー前に音を上げた候補者が出た事でパーティーデビューはしていない。
配信映えする容姿、ダンジョンを踏破可能な冒険者としての実力、そして胆力を備えたのは3000人集めても綾覇、碧偉、龍美、清楓の4人だけだったと言える。
「クランに加入した3万人もの少女冒険者を君は死なせないと言うのか?」
「クランには入れますがダンジョンに潜らせるつもりはありません」
「どういう事だ?」
「まず面接をしてやむを得ず配信冒険者にならないといけなくなったという少女に関しては奨学金を出します」
「奨学金?」
「ええ。金銭面の問題さえ解消されれば命を削ってまで冒険者になるつもりはないという少女には冒険者はさせません」
【金だけ出して冒険者にはさせない】という構想にはその場にいた全員が驚愕した。
「本気か!?いったいどれだけ金額が必要になると思ってるッ!?」
「全てクランが負担するなんて無理なのは分かってますがある程度は俺が稼ぎます。政府からの指名依頼もこれから沢山来るでしょうし」
桂城和奏と早海橙子は視線を泳がせる。
「何故そんな事が出来る?」
大手配信冒険者事務所の代表取締役社長として利益を出し経営を存続させる事を求められてきた鷹田は仮面冒険者の行動が理解できなかった。
「出来るというかせざるを得ない感じですね。私生活では普通の一般人でいたいんで。となるといくら稼ごうが俺自身の為に使えないんですよ」
まさかの答えに鷹田は唖然とする。
「――それにこれから暫くは日本の冒険者の一番手という扱いを受けるんでしょうけど、養育環境が厳しくダンジョンに潜らざるを得ない子供たちを見殺しするような人間は冒険者の頂点にいるべきじゃないと思うんで」
さっさと誰かに抜いてもらいたいですねとお道化てみせるも冒険者としてのその姿勢に周囲は驚きを隠せない。
「わかった!【炎麗黒猫】に助けを求めてきた少女たちは【研能】が総力を挙げて素晴らしい女性に育てあげてみせようッ!!」
仮面冒険者の姿勢に感化されたのか鷹田は意気軒昂に新クランへの全面協力を誓った。
「ありがとうございます」
「さ、清楓も黒猫ハーバリウムの活動で頂いたお給料、出来るだけ寄付するからッ!!」
「清楓ちゃんもありがとう」
「えへへ」
清楓は炎から感謝され、はにかむ。
「して、女性冒険者は全員受け入れるのは納得したが、男性冒険者はどうする?男が大量に押し寄せればトラブルも必ず起きてしまうぞ?書類審査で弾かなければ反社会的な人物までやって来るかもしれん」
「そうですね……他者を平気を傷つけるような人物には脱退通告をしないといけないと思います。募集の段階から脱退通告条件は明記しておきましょう」
「男性冒険者も全員加入させるつもりなのか?」
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鷹田の問いに炎はしばし考え込み、こう言い放つ――。
「――既に考えてる判別方法があります。複数の大規模会場を同日に確保してもらう事は可能でしょうか?」
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