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第二部
第13話「幼馴染は、僕と約束をする」
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それから暫くして一之瀬が僕の元へと戻ってきてから会計へと向かった。
優衣が言う“デート”のそれなのか全くわからないが……まぁ一之瀬が不機嫌な様子でないことがわかればそれでいい。
その帰り道──結局荷物持ちをすることになった僕である。いやまぁそこまで重くないからいいんだけども。これで『1週間分ね!』とか注文来ててこれだったらマジで萎えるところだったぞ。
「随分買っちゃったね」
「4人分ならこんなもんだろ。普段兄貴いないからどんなもんかわからないし、その辺はどうしようもない。それに、もし余ったらウチの兄が残ったの食べてくれるし」
「廃品回収みたいな言い方ね」
「いや、寧ろ残飯処理係的なあれだろ」
「……やっぱ、扱い雑ね」
「とか言って、本当は特に悪い気はしないんだろ?」
「当然。寧ろピッタリだと思えるほどよ」
……やっぱり僕より兄貴への扱いの方が酷いと思うんだが、それはそれでまぁいいか。
「そういえば、夕飯は誰が作るの?」
「誰って……僕以外の誰が作るっていうんだよ」
先程も言った通り、妹はあんなでも受験生だ。勉強への取り組み方は僕以上だし、その邪魔になることだけはしたくない。
それに、去年のお礼も兼ねてるしな。
「……えっ?」
急に一之瀬が意外そうな目で見てくる。
……何だその『信じられない』と訴えてきそうな目は。男子が料理をしたら何かまずいことでもあるのかよ。そう考えるとバカにされてる気分だ。
だが、一之瀬の反応から察するにそういうことではなさそうだ。
……そういや僕、こいつに手作りご飯とか作ったことなかったな。学校では基本的にこいつが部室にやって来るまでに食べ終えるし、手作り弁当なんて滅多に食べないから確かに驚くか。
──反応に関しては少し反論したいところではあるがっ!
「そっか……そっかー」
「な、何だよ」
「は、ハル君が作るっていうなら、私も……やりたい!」
「私も……ってことは、お前が作ってくれるのか?」
「い、一緒がいい! 抜け駆け禁止!」
「お、おう……」
もちろん最初から任せる気にはなっていなかった。単純に冗談のつもりで言ってみただけなのだが、予想以上に強く反論されたな。
無駄に圧力がある言い方をされると、こっちまでおかしくなるからやめてくれ……。
一之瀬は文武両道だけあって、こいつが作る料理は本当に美味しい。まさに主婦の味というやつに似ている。
……いくら幼馴染とはいえ、“学園一の美少女”が手掛けた料理を食べたことがあるとか、そんな事実を知られたら軽く軽蔑され兼ねない。
もちろんそれはクラスの男子だけではなく、学校全体を敵にするのと同じこと。
……はぁぁあ。面倒くさい。
その日の夜は──断ることも出来ないほどの圧力に押され、結局僕と一之瀬で夕飯を作るという羽目になってしまった。
お昼ご飯は軽くパスタを茹でて味付けをし、ほうれん草とベーコンを混ぜた野菜スパゲティを作ることになってしまった。──一之瀬が。
頼んでもいないのに、やると利かないので任せることにしたのだ。
無駄にスペック高いよな……。本当、これで頭脳明晰だったら本物の『完璧超人』だっただろう。いや……今でも十分完璧超人か。
「ハル君。そこの食材取ってくれる?」
「いいけど。どれだ?」
「そうね。ベーコンで」
「ほい」
「……ありがとう」
スーパーから帰ってきて早々、一之瀬はスパゲティを作り始め、僕はその光景を読書しながら見守っていた。これしかすることがないのだから仕方がない。
一之瀬は水を浸したフライパンの中で茹でられているパスタの麺をかき混ぜる。
……相変わらず美味しそうな料理作りやがって。
元々は僕が考えついたメニューだが、聞いただけで再現するのだから末恐ろしい。
これだから──僕はこいつのことをどうしても意識してしまう。
けど多分……これは、一之瀬が抱く恋愛感情とはまた違う、まったくの別物だと思う。とてもじゃないが、これを恋心とは呼べない。
……何だろうな。
好奇心とは少し違った……別の何かかも。
「──はいっ! 出来上がったから、これ運んでくれる?」
「お、おう」
考え事をしているうちにどうやら出来てしまったらしい。仕事の早い奴だ。
「兄貴ー、優衣ー。昼ご飯の準備出来たぞー」
まるで子どもを呼ぶかのような心境が湧いたが、その言葉は“家族の輪”を表すことでもあると思う。
……今更何を言い訳にしてるのやら。
あいつとだって──とっくに“幼馴染の輪”があるくせに。
やがて降りてきた2人と一緒に食卓を囲む。その間に、またもや一之瀬と兄貴が小競り合いを始めたのは割愛する。
そして、一之瀬が作ったパスタが美味しすぎて少し感動したのは、本人には内緒だ。
優衣が言う“デート”のそれなのか全くわからないが……まぁ一之瀬が不機嫌な様子でないことがわかればそれでいい。
その帰り道──結局荷物持ちをすることになった僕である。いやまぁそこまで重くないからいいんだけども。これで『1週間分ね!』とか注文来ててこれだったらマジで萎えるところだったぞ。
「随分買っちゃったね」
「4人分ならこんなもんだろ。普段兄貴いないからどんなもんかわからないし、その辺はどうしようもない。それに、もし余ったらウチの兄が残ったの食べてくれるし」
「廃品回収みたいな言い方ね」
「いや、寧ろ残飯処理係的なあれだろ」
「……やっぱ、扱い雑ね」
「とか言って、本当は特に悪い気はしないんだろ?」
「当然。寧ろピッタリだと思えるほどよ」
……やっぱり僕より兄貴への扱いの方が酷いと思うんだが、それはそれでまぁいいか。
「そういえば、夕飯は誰が作るの?」
「誰って……僕以外の誰が作るっていうんだよ」
先程も言った通り、妹はあんなでも受験生だ。勉強への取り組み方は僕以上だし、その邪魔になることだけはしたくない。
それに、去年のお礼も兼ねてるしな。
「……えっ?」
急に一之瀬が意外そうな目で見てくる。
……何だその『信じられない』と訴えてきそうな目は。男子が料理をしたら何かまずいことでもあるのかよ。そう考えるとバカにされてる気分だ。
だが、一之瀬の反応から察するにそういうことではなさそうだ。
……そういや僕、こいつに手作りご飯とか作ったことなかったな。学校では基本的にこいつが部室にやって来るまでに食べ終えるし、手作り弁当なんて滅多に食べないから確かに驚くか。
──反応に関しては少し反論したいところではあるがっ!
「そっか……そっかー」
「な、何だよ」
「は、ハル君が作るっていうなら、私も……やりたい!」
「私も……ってことは、お前が作ってくれるのか?」
「い、一緒がいい! 抜け駆け禁止!」
「お、おう……」
もちろん最初から任せる気にはなっていなかった。単純に冗談のつもりで言ってみただけなのだが、予想以上に強く反論されたな。
無駄に圧力がある言い方をされると、こっちまでおかしくなるからやめてくれ……。
一之瀬は文武両道だけあって、こいつが作る料理は本当に美味しい。まさに主婦の味というやつに似ている。
……いくら幼馴染とはいえ、“学園一の美少女”が手掛けた料理を食べたことがあるとか、そんな事実を知られたら軽く軽蔑され兼ねない。
もちろんそれはクラスの男子だけではなく、学校全体を敵にするのと同じこと。
……はぁぁあ。面倒くさい。
その日の夜は──断ることも出来ないほどの圧力に押され、結局僕と一之瀬で夕飯を作るという羽目になってしまった。
お昼ご飯は軽くパスタを茹でて味付けをし、ほうれん草とベーコンを混ぜた野菜スパゲティを作ることになってしまった。──一之瀬が。
頼んでもいないのに、やると利かないので任せることにしたのだ。
無駄にスペック高いよな……。本当、これで頭脳明晰だったら本物の『完璧超人』だっただろう。いや……今でも十分完璧超人か。
「ハル君。そこの食材取ってくれる?」
「いいけど。どれだ?」
「そうね。ベーコンで」
「ほい」
「……ありがとう」
スーパーから帰ってきて早々、一之瀬はスパゲティを作り始め、僕はその光景を読書しながら見守っていた。これしかすることがないのだから仕方がない。
一之瀬は水を浸したフライパンの中で茹でられているパスタの麺をかき混ぜる。
……相変わらず美味しそうな料理作りやがって。
元々は僕が考えついたメニューだが、聞いただけで再現するのだから末恐ろしい。
これだから──僕はこいつのことをどうしても意識してしまう。
けど多分……これは、一之瀬が抱く恋愛感情とはまた違う、まったくの別物だと思う。とてもじゃないが、これを恋心とは呼べない。
……何だろうな。
好奇心とは少し違った……別の何かかも。
「──はいっ! 出来上がったから、これ運んでくれる?」
「お、おう」
考え事をしているうちにどうやら出来てしまったらしい。仕事の早い奴だ。
「兄貴ー、優衣ー。昼ご飯の準備出来たぞー」
まるで子どもを呼ぶかのような心境が湧いたが、その言葉は“家族の輪”を表すことでもあると思う。
……今更何を言い訳にしてるのやら。
あいつとだって──とっくに“幼馴染の輪”があるくせに。
やがて降りてきた2人と一緒に食卓を囲む。その間に、またもや一之瀬と兄貴が小競り合いを始めたのは割愛する。
そして、一之瀬が作ったパスタが美味しすぎて少し感動したのは、本人には内緒だ。
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