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第四部
第24話 ぼっちの現実と理想①
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体育館は全生徒と保護者、来訪者様などが入れるほどの規模を持ち、現在はネットカーテンによって2分割されている。
片方は男子でバスケを。
もう片方は女子でバレーボールをしている。
試合も順調に進み、僕達バスケ組は3チームに分かれてローテーションで試合を回している。
ネットを挟んだ向こう側では女子が3チーム分かれ、現在2組が試合を行っている。
普段男子よりも腕力が劣っていそうに思える女子も、体育の時間となるといきなり豹変する。特に──ドッジボール。あれはもう戦争だ、戦の類だ。体育ではない。そう断言出来る。
一度、美桜に訊ねたことがある。
才色兼備な優等生である美桜にも、体育での苦手競技があるのかと。
何でも卒なく熟すと女子は言う。
だがそれは『客観的』に意見だろうし、本人の意向を聞かない限り信じるのは失礼だ。
だからこそ僕は訊ねた。
……まぁ、興味がなかったわけではないからな。
すると、女神様はこう答えた。
『──ドッジボール、でしょうか。普段のみなさんは和気藹々と取り組んでいるというのに、試合が始まった直後から鬼の形相になり、敵を容赦なく薙ぎ払う大勢に変わって……恐ろしいです』
と、供述していた。
きっとああいうボールを投げてストレスを発散出来るような競技は、男女関係なく本性が滲み出るのだろう。
僕はどちらにも混ざるのは勘弁だがな。……どっちに入っても地獄を見る羽目になる、僕が。
「そっち行ったぞー!」
「オーライ……! いっけ、村瀬!」
「りょーかいっ!」
そうこう考え事をしている内に男子の争いに動きが見えた。
オフェンスとディフェンス共に動きが良く、お互いに譲れない試合展開だったものが、たった1人の選手によって状況が変わった。
身長170センチ前半。男子の中でもかなり小柄であるにも関わらず、まるで本物の主人公のような勢いのあるダンクを決めたのは──伊月だった。
ピピーッと、試合終了を知らせる笛が鳴る。
結果は2対0。試合時間たった5分。授業での試合時間なんてそんなものだ。
そんな短い時間の中でシュートを決めた一躍ヒーローの張本人は、友人と思われる他の男子と友情の証とも言われている“ハイタッチ”を交わしていた。
さすがは陽キャ。
僕にだったら絶対に出来ないようなことを平然とやってのけている。
あいつ、本当にラノベの主人公の生まれ変わりなんじゃないのか? もしくは、転生してきた……とか。
アホらしいオタク脳に支配されていると「ウェーイ!」とハイテンションの伊月が僕の隣へと帰ってきた。
「なあなあ見てたか!? オレのダンクシュート! 綺麗に決まっただろ?」
「あ、ああ。よかったな、綺麗に決まって」
「おっとぉ? 端切れが悪いな。これはこれは、とうとう湊もオレにヤキモチか!?」
「現実を見ろ。理想を見るな」
僕は伊月のことを見ずに、未だにコートの中央でジャンケンを繰り広げているクラスメイト(多分)に視線をやる。
理想を追うのは勝手だが、あまり現実を放任していると碌なことにならない。
経験者だからこそ、言えることだ。
「およ? 決まったっぽいぞ。ってな訳だ! 行ってこい!」
「……もう1人の僕って、何でいないんだと思う?」
「現実を見ろ。理想を見るな」
伊月に言ったことを、一言一句違わずに返された。
ま、まさか、自分が言ったことをそのまま伊月に返されるとは思ってもいなかった。
コートの方では伊月に向かって……ではなく、僕に向かって「早く来い!」と催促されてしまった。もうこれ以上、夢を見るのはやめよう。碌なことにならん。
「ほら、お呼びだぞ?」
「……わかってるよ」
いい加減、覚悟を決めるしかないだろう。
向こうからの『試合始めたいから早く来い』と訴えてくるかのような、視線の圧がスゴい。
僕は立ち上がると、駆け足でコートの中央へと行く。
チームメイトと思われる僕を呼んだ1人を除く残りの3人は「誰だこいつ?」と言わんばかりに僕のことを観察してくる。
やめろ! そんな目で僕を見るな!
ぼっちライフというのはあくまでも、誰にも邪魔と思われず誰にも迷惑をかけないで、“平和的に”過ごすこと──よって、僕のぼっちライフは本日限りで終了だ。
現にこうしてチームメイトから変な目を向けられているし。
離れて見ている伊月はというと、口元を抑えながら必死に笑うのを堪えていた。
よし。後であいつはお説教コース決定だな。
片方は男子でバスケを。
もう片方は女子でバレーボールをしている。
試合も順調に進み、僕達バスケ組は3チームに分かれてローテーションで試合を回している。
ネットを挟んだ向こう側では女子が3チーム分かれ、現在2組が試合を行っている。
普段男子よりも腕力が劣っていそうに思える女子も、体育の時間となるといきなり豹変する。特に──ドッジボール。あれはもう戦争だ、戦の類だ。体育ではない。そう断言出来る。
一度、美桜に訊ねたことがある。
才色兼備な優等生である美桜にも、体育での苦手競技があるのかと。
何でも卒なく熟すと女子は言う。
だがそれは『客観的』に意見だろうし、本人の意向を聞かない限り信じるのは失礼だ。
だからこそ僕は訊ねた。
……まぁ、興味がなかったわけではないからな。
すると、女神様はこう答えた。
『──ドッジボール、でしょうか。普段のみなさんは和気藹々と取り組んでいるというのに、試合が始まった直後から鬼の形相になり、敵を容赦なく薙ぎ払う大勢に変わって……恐ろしいです』
と、供述していた。
きっとああいうボールを投げてストレスを発散出来るような競技は、男女関係なく本性が滲み出るのだろう。
僕はどちらにも混ざるのは勘弁だがな。……どっちに入っても地獄を見る羽目になる、僕が。
「そっち行ったぞー!」
「オーライ……! いっけ、村瀬!」
「りょーかいっ!」
そうこう考え事をしている内に男子の争いに動きが見えた。
オフェンスとディフェンス共に動きが良く、お互いに譲れない試合展開だったものが、たった1人の選手によって状況が変わった。
身長170センチ前半。男子の中でもかなり小柄であるにも関わらず、まるで本物の主人公のような勢いのあるダンクを決めたのは──伊月だった。
ピピーッと、試合終了を知らせる笛が鳴る。
結果は2対0。試合時間たった5分。授業での試合時間なんてそんなものだ。
そんな短い時間の中でシュートを決めた一躍ヒーローの張本人は、友人と思われる他の男子と友情の証とも言われている“ハイタッチ”を交わしていた。
さすがは陽キャ。
僕にだったら絶対に出来ないようなことを平然とやってのけている。
あいつ、本当にラノベの主人公の生まれ変わりなんじゃないのか? もしくは、転生してきた……とか。
アホらしいオタク脳に支配されていると「ウェーイ!」とハイテンションの伊月が僕の隣へと帰ってきた。
「なあなあ見てたか!? オレのダンクシュート! 綺麗に決まっただろ?」
「あ、ああ。よかったな、綺麗に決まって」
「おっとぉ? 端切れが悪いな。これはこれは、とうとう湊もオレにヤキモチか!?」
「現実を見ろ。理想を見るな」
僕は伊月のことを見ずに、未だにコートの中央でジャンケンを繰り広げているクラスメイト(多分)に視線をやる。
理想を追うのは勝手だが、あまり現実を放任していると碌なことにならない。
経験者だからこそ、言えることだ。
「およ? 決まったっぽいぞ。ってな訳だ! 行ってこい!」
「……もう1人の僕って、何でいないんだと思う?」
「現実を見ろ。理想を見るな」
伊月に言ったことを、一言一句違わずに返された。
ま、まさか、自分が言ったことをそのまま伊月に返されるとは思ってもいなかった。
コートの方では伊月に向かって……ではなく、僕に向かって「早く来い!」と催促されてしまった。もうこれ以上、夢を見るのはやめよう。碌なことにならん。
「ほら、お呼びだぞ?」
「……わかってるよ」
いい加減、覚悟を決めるしかないだろう。
向こうからの『試合始めたいから早く来い』と訴えてくるかのような、視線の圧がスゴい。
僕は立ち上がると、駆け足でコートの中央へと行く。
チームメイトと思われる僕を呼んだ1人を除く残りの3人は「誰だこいつ?」と言わんばかりに僕のことを観察してくる。
やめろ! そんな目で僕を見るな!
ぼっちライフというのはあくまでも、誰にも邪魔と思われず誰にも迷惑をかけないで、“平和的に”過ごすこと──よって、僕のぼっちライフは本日限りで終了だ。
現にこうしてチームメイトから変な目を向けられているし。
離れて見ている伊月はというと、口元を抑えながら必死に笑うのを堪えていた。
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