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♡♀ 第十章 思考する彼女とやっぱり大人な彼女 ♀Zzz
23話
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体力と魔力の回復も済み、四人となった一行は奥へと進む。
ティオも道中の戦闘に協力した。その独特の体術はスキルではなく、純粋な力から繰り出されている様だった。上位種相手に体一つで応戦し、その上まだまだ余裕がありそうだった事に三人は驚かされる。
記憶が曖昧だからなのか性格なのかは分からないが、その間もティオの口数は少なかった。
探索を進める事数時間。冥府の大口内の二か所目の聖者の軌跡に辿り着いた。大穴の底も僅かに見えてきた。ここでは階層というものが分かりにくいが、降りてきた距離や感覚的には、もうすぐ70層目辺りに相当すると思われる。
聖者の軌跡内に水場を見つけたメリランダが皆に呼びかける。
「この先、聖者の軌跡があるという情報はないので、今日はここで泊まる事にしましょう。お風呂も当分無理だと思うので私は水場で汗を流してきますが、皆さんはどうします?」
シホ達は死体なので汗などはかかないが、それでも何かと汚れる事は汚れる。死んでも女の子の嗜みというのは忘れたくはない。シホも共にすると言い、エルテにもどうするか尋ねた。
「メリランダが変な事しないなら。ティオもずっと泥だらけなの気になってた。洗ってあげる」
水浴びをする事になったシホ達は手早く服を脱いだ。しかしティオだけは装備を脱ぐのに手間取っていた。力はあるが不器用なのだろうか。
見かねたシホが装備を外すのを手伝う。腰周りの装具を外そうとティオの前に膝を付き、装備が足元へ落ちると、シホの動きが止まった。
シホの目の前には確かに男の象徴なるものがある。それを認識するのに数秒の間を要した。
「おおおおぉぉぉ、おちおち、おち」
取り乱す様子のシホが気になりエルテがやってくる。
「シホどうかした?」
エルテに助けを懇願する様にシホは顔を見上げる。
「おち!おち!」
「シホ落ち着いて。何度か見たから間違いない。それは、おちん・・・・」
シホは食い気味にエルテの名を叫びかき消した。
◆ん?何度か?
そこにメリランダもやって来る。
「この状況はなんだかイケナイ事をしているようですね。私達が勝手に女の子だと思い込んでいたのが悪いのですけど。まぁ、私は死体の処理で何度もソレを見てきましたから、今更何とも思いませんが。しかし、シホさんの初心っぷりは、やはり胸に響くものがありますね」
ティオは特に恥じらう事もなくきょとんとしていた。
「シホ、僕は何か変?」
「へ、変じゃないよ。早く体洗おうかー・・・・」
エルテとメリランダがティオのパサパサで泥だらけの髪を手分けして洗ってあげている傍ら、シホはそれを横目に考えていた。
◆エルテの表情がさっきからこう、柔らかいっていうか・・・。まさかエルテ、弟系美少年が好きだったらどうしよう!エルテの恋愛対象に男が含まれてる以上、これは懸念材料でしかない・・・・。まさかここに来てライバル登場!?やめてよねー。
水浴びを済ますと、髪も綺麗になり美少女度を上げた少年ティオが岩に腰かけている。彼女たちの話題の中心は自然とティオの事になった。
メリランダはティオの口から語られた話を纏める。
「改めて情報を整理してみましょう。ティオさんが目覚めた場所にシホさんが落とした集魂の器が有り、崖を登ってきた事からこの先、“巨龍骨の洞”と呼ばれる区域のどこかに居た事は確かです。それから伝説級の英雄でもそうそう持っていないであろう、龍鱗の鎧。そして人並み外れた怪力。人間ではない異質さを感じます。そしてシホさんとエルテさんに何やら繋がりを感じている」
シホは考えを張り巡らせる。
「私とエルテは出会って日も浅いし、メリランダと私達との違いと言えば人間か魔物かってくらいだよね」
「もう、鈍いですねシホさんは。お二人が特異個体になったと思われる理由。それに龍という要素にティオという名前。これは黒龍ミスティルティオと関係あるんじゃないですか?」
その予測にエルテは驚かなかった。
「何となくは思ってた。でもメリランダ、ここはもう少し出し惜しむとこ」
「いいじゃないですか。この世界には見えざる口うるさい脚本家でもいるのですか⁉」
シホはティオの方を向き問いかける。
「ティオ、黒龍ミスティルティオって分かる?」
「ミスティルティオ?・・・・おお、ミスティルティオ!多分それが僕の名前」
「んん⁉ティオがミスティルティオ⁉」
足をプラプラさせながら微笑んでいるティオの傍らでメリランダが推測を進める。
「お二人はミスティルティオが息絶える場に居合わせたのですよね?その時、シホさんの集魂の器にその魂が入り込んだのではないですか?それが龍に関わる力が渦巻くと言われている巨龍骨の洞に落ちた事で何かが生じた・・・・」
納得した様子のシホ。
「私達も目覚めてすぐは記憶が曖昧だったからティオも暫くすれば記憶戻るのかな?でも何て言うか黒龍様ってもっと威厳のある感じだったけど・・・・。私達、性格までは変わる事はなかったし」
「それに見た目もドラゴンではなく男の娘ですからね。シホさん達の事例より、もっと特別な何かが起こったのかもしれません」
シホがもう一度ティオに尋ねる。
「ティオ、名前以外に何か思い出せた?」
「んー、分からない。やっぱり思い出せない」
「そっか。ティオは何かやるべき事があるって言ってたけど、やっぱり・・・・」
エルテもシホの考えを察し口を開く。
「竜騎兵団・・・・。そこにいる仲間の竜達の開放」
その言葉を聞いたティオはその場に立ち上がると少し表情を曇らせた。
「今僕の胸がもやもやした。何かはわからないけど」
シホはティオのやるべき事であろうと思われる件を改めて伝える。
「ティオは王都の竜騎兵団に使役されてる竜達を助けたいんじゃない?あの竜があなたの仲間なのか家族なのかは分からないけど」
「もやもやが強くなった。仲間・・・・、家族・・・・。僕の家族?やっぱり分からない」
混乱するティオを見かねたメリランダが場を落ち着かせようと話を挟む。
「とりあえず本人が思い出せない限りは行動に移すことは難しいですし、もし俄かに記憶が戻り、一人地上に出て一国の軍に喧嘩を売れば、再び悲劇に見舞われるかもしれません。ティオさんの状態が整うまでは一緒に居てもらうのが最善かと思います。それに私達が探索を進めるに当たっては心強い戦力ですし」
シホは少し眉をしかめるが一定の理解を示す。
「それもそうだよね。だけど記憶が戻ってたら一秒でも早く仲間を助けたいだろうね」
ティオはシホとエルテの間に来ると二人の腕に自分の両腕を絡ませる。
「二人の匂いは好き。僕は守りたいと思う」
その姿を見つめるメリランダ。
「龍の恩返しというやつですか。何も知らないで見たらお二人の妹・・・・。失敬、弟か息子の様ですね」
◆私とエルテの子供!そう言われると悪い気はしない。これがメリランダが言っていた下腹部キュンキュンとかいうやつ⁉けど、エルテはどう思うだろう。
ティオに限らずだけど、もしここから出られたとしてエルテが他の誰かを好きになる事があったなら、私にそれを遮る権利があるだろうか。
私の浮気・・・・。エルテが私の悶々解消を許してくれた時、まだ友達なんだからという言葉には、「私にはまだ選ぶ権利がある」という意味が含まれていないだろうか。
最近エルテに面と向かって好きという事を伝えてない。いや、伝えられなくなってる?あれだけ好き好きアピールしておいて、今更、変に意識するだなんて・・・・。エルテの本当の気持ちを聞くのが怖いのかな、私。
ティオの行動に若干やきもちを焼いたメリランダが、シホとエルテに過剰なスキンシップをしようとするのを二人は鎮静化させつつ、英気を養い次の探索へと四人は備えるのだった。
ティオも道中の戦闘に協力した。その独特の体術はスキルではなく、純粋な力から繰り出されている様だった。上位種相手に体一つで応戦し、その上まだまだ余裕がありそうだった事に三人は驚かされる。
記憶が曖昧だからなのか性格なのかは分からないが、その間もティオの口数は少なかった。
探索を進める事数時間。冥府の大口内の二か所目の聖者の軌跡に辿り着いた。大穴の底も僅かに見えてきた。ここでは階層というものが分かりにくいが、降りてきた距離や感覚的には、もうすぐ70層目辺りに相当すると思われる。
聖者の軌跡内に水場を見つけたメリランダが皆に呼びかける。
「この先、聖者の軌跡があるという情報はないので、今日はここで泊まる事にしましょう。お風呂も当分無理だと思うので私は水場で汗を流してきますが、皆さんはどうします?」
シホ達は死体なので汗などはかかないが、それでも何かと汚れる事は汚れる。死んでも女の子の嗜みというのは忘れたくはない。シホも共にすると言い、エルテにもどうするか尋ねた。
「メリランダが変な事しないなら。ティオもずっと泥だらけなの気になってた。洗ってあげる」
水浴びをする事になったシホ達は手早く服を脱いだ。しかしティオだけは装備を脱ぐのに手間取っていた。力はあるが不器用なのだろうか。
見かねたシホが装備を外すのを手伝う。腰周りの装具を外そうとティオの前に膝を付き、装備が足元へ落ちると、シホの動きが止まった。
シホの目の前には確かに男の象徴なるものがある。それを認識するのに数秒の間を要した。
「おおおおぉぉぉ、おちおち、おち」
取り乱す様子のシホが気になりエルテがやってくる。
「シホどうかした?」
エルテに助けを懇願する様にシホは顔を見上げる。
「おち!おち!」
「シホ落ち着いて。何度か見たから間違いない。それは、おちん・・・・」
シホは食い気味にエルテの名を叫びかき消した。
◆ん?何度か?
そこにメリランダもやって来る。
「この状況はなんだかイケナイ事をしているようですね。私達が勝手に女の子だと思い込んでいたのが悪いのですけど。まぁ、私は死体の処理で何度もソレを見てきましたから、今更何とも思いませんが。しかし、シホさんの初心っぷりは、やはり胸に響くものがありますね」
ティオは特に恥じらう事もなくきょとんとしていた。
「シホ、僕は何か変?」
「へ、変じゃないよ。早く体洗おうかー・・・・」
エルテとメリランダがティオのパサパサで泥だらけの髪を手分けして洗ってあげている傍ら、シホはそれを横目に考えていた。
◆エルテの表情がさっきからこう、柔らかいっていうか・・・。まさかエルテ、弟系美少年が好きだったらどうしよう!エルテの恋愛対象に男が含まれてる以上、これは懸念材料でしかない・・・・。まさかここに来てライバル登場!?やめてよねー。
水浴びを済ますと、髪も綺麗になり美少女度を上げた少年ティオが岩に腰かけている。彼女たちの話題の中心は自然とティオの事になった。
メリランダはティオの口から語られた話を纏める。
「改めて情報を整理してみましょう。ティオさんが目覚めた場所にシホさんが落とした集魂の器が有り、崖を登ってきた事からこの先、“巨龍骨の洞”と呼ばれる区域のどこかに居た事は確かです。それから伝説級の英雄でもそうそう持っていないであろう、龍鱗の鎧。そして人並み外れた怪力。人間ではない異質さを感じます。そしてシホさんとエルテさんに何やら繋がりを感じている」
シホは考えを張り巡らせる。
「私とエルテは出会って日も浅いし、メリランダと私達との違いと言えば人間か魔物かってくらいだよね」
「もう、鈍いですねシホさんは。お二人が特異個体になったと思われる理由。それに龍という要素にティオという名前。これは黒龍ミスティルティオと関係あるんじゃないですか?」
その予測にエルテは驚かなかった。
「何となくは思ってた。でもメリランダ、ここはもう少し出し惜しむとこ」
「いいじゃないですか。この世界には見えざる口うるさい脚本家でもいるのですか⁉」
シホはティオの方を向き問いかける。
「ティオ、黒龍ミスティルティオって分かる?」
「ミスティルティオ?・・・・おお、ミスティルティオ!多分それが僕の名前」
「んん⁉ティオがミスティルティオ⁉」
足をプラプラさせながら微笑んでいるティオの傍らでメリランダが推測を進める。
「お二人はミスティルティオが息絶える場に居合わせたのですよね?その時、シホさんの集魂の器にその魂が入り込んだのではないですか?それが龍に関わる力が渦巻くと言われている巨龍骨の洞に落ちた事で何かが生じた・・・・」
納得した様子のシホ。
「私達も目覚めてすぐは記憶が曖昧だったからティオも暫くすれば記憶戻るのかな?でも何て言うか黒龍様ってもっと威厳のある感じだったけど・・・・。私達、性格までは変わる事はなかったし」
「それに見た目もドラゴンではなく男の娘ですからね。シホさん達の事例より、もっと特別な何かが起こったのかもしれません」
シホがもう一度ティオに尋ねる。
「ティオ、名前以外に何か思い出せた?」
「んー、分からない。やっぱり思い出せない」
「そっか。ティオは何かやるべき事があるって言ってたけど、やっぱり・・・・」
エルテもシホの考えを察し口を開く。
「竜騎兵団・・・・。そこにいる仲間の竜達の開放」
その言葉を聞いたティオはその場に立ち上がると少し表情を曇らせた。
「今僕の胸がもやもやした。何かはわからないけど」
シホはティオのやるべき事であろうと思われる件を改めて伝える。
「ティオは王都の竜騎兵団に使役されてる竜達を助けたいんじゃない?あの竜があなたの仲間なのか家族なのかは分からないけど」
「もやもやが強くなった。仲間・・・・、家族・・・・。僕の家族?やっぱり分からない」
混乱するティオを見かねたメリランダが場を落ち着かせようと話を挟む。
「とりあえず本人が思い出せない限りは行動に移すことは難しいですし、もし俄かに記憶が戻り、一人地上に出て一国の軍に喧嘩を売れば、再び悲劇に見舞われるかもしれません。ティオさんの状態が整うまでは一緒に居てもらうのが最善かと思います。それに私達が探索を進めるに当たっては心強い戦力ですし」
シホは少し眉をしかめるが一定の理解を示す。
「それもそうだよね。だけど記憶が戻ってたら一秒でも早く仲間を助けたいだろうね」
ティオはシホとエルテの間に来ると二人の腕に自分の両腕を絡ませる。
「二人の匂いは好き。僕は守りたいと思う」
その姿を見つめるメリランダ。
「龍の恩返しというやつですか。何も知らないで見たらお二人の妹・・・・。失敬、弟か息子の様ですね」
◆私とエルテの子供!そう言われると悪い気はしない。これがメリランダが言っていた下腹部キュンキュンとかいうやつ⁉けど、エルテはどう思うだろう。
ティオに限らずだけど、もしここから出られたとしてエルテが他の誰かを好きになる事があったなら、私にそれを遮る権利があるだろうか。
私の浮気・・・・。エルテが私の悶々解消を許してくれた時、まだ友達なんだからという言葉には、「私にはまだ選ぶ権利がある」という意味が含まれていないだろうか。
最近エルテに面と向かって好きという事を伝えてない。いや、伝えられなくなってる?あれだけ好き好きアピールしておいて、今更、変に意識するだなんて・・・・。エルテの本当の気持ちを聞くのが怖いのかな、私。
ティオの行動に若干やきもちを焼いたメリランダが、シホとエルテに過剰なスキンシップをしようとするのを二人は鎮静化させつつ、英気を養い次の探索へと四人は備えるのだった。
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