上 下
8 / 38
01 女の子は馴れない

節度を持って…?

しおりを挟む
03

 「ニコラ、お疲れ様。どうだった、初めてのゼミは」
 ゼミが終わった後、リズが声をかけてくる。
 気さくな人なのだろう。
 寮に入ったばかりのニコラを気にかけているらしい。
 「その…とてもためになる話でした。たしかに、今は女なんです。
 男であった時に比べれば…気をつけること多いなって思いました」
 その返答に、リズが妖艶に笑う。
 教えるがわにとっては、生徒のためになることは嬉しいらしい。
 「素直でよろしい。
 保健体育の授業ですでに聞いている話ではあるだろうけど、君たちみたいな女体化したもと男には改めて周知徹底する必要がある。
 特に性のことはね」
 「そうなんですか?」
 「まあなんだ…。女体化したもと男って、ヤリマン多いんだよ」
 リズが渋面になって言う。
 「ヤリマン…ですか…?」
 あからさまな言葉に、ニコラはいぶかしげに問い返す。
 「理由はいろいろあるけど…。
 第一に、一般論として、貞操観念ていうのは女より男の方が低いだろ?
 女の体になったからって、セックスのリスクに対する意識は簡単には切り替わらない。
 第二に、女のアクメって、男の射精よりもずっと深くて気持ちいいからな。
 セックスが大好きになりがち。
 それに加えて、もともと男だっただけに、男がどうすれば喜ぶか心得てる。
 だから自然とモテるようになる。
 モテれば気分がいいもんだから、股も緩くなりがち。
 身もふたもない話だが、それが事実だ」
 「な…なるほど…」
 リズのあからさまだがわかりやすい説明に、妙に納得した気分になる。
 ジュゼッペにきれいだと言われたとき、すごく嬉しい気分になったことを思い出す。
 女というのは、おだられてたり自意識をくすぐられたりすることに、ものすごく弱い生き物なのかも知れない。そう思えたくらいだ。
 「君も、きれいでいい女だからきっとモテるぞ。
 でも、節度は持ってな。
 愛さえあればうまく行くのは、漫画や小説の中だけのことだ」
 「は…はい。わかりました」
 ニコラの心に、リズの言葉は重く響いたのだった。
 きちんと女の体と心のことについて学ばなければ、自分はだらしない女になってしまうかもしれない。
 ヤリマンに堕した女は、あるいは未来の自分の姿。
 そう思えたのだ。

 翌朝。
 「あれ、シャルル。どうして?」
 小雨が降っているにもかかわらず、寮の入口でシャルルが待っていたのだ。
 たしかシャルルの家は、校舎を挟んで寮とは反対側のはずだ。
 「決まっているじゃないか。君を迎えに来たんだ」
 さも当然のように、シャルルは真剣な顔で返答する。
 (まじか…?)
 ニコラは、シャルルの自分に対する気持ちが本気であるのを何となく察する。
 そして困惑する。
 ゼミに出席してあらためてわかった。
 最近女体化した自分は、恋愛どころか女として生活していく準備さえ、まだできていないのだ。
 「今すぐにどうこうとは言わない。
 僕がちょっと焦りすぎていたな。
 でも、一緒に登校するぐらいは認めてくれないか?」
 シャルルの言葉に、ニコラは少し考える。
 (まあそれくらいなら…。別にシャルルのことが嫌いなわけではないし…)
 考えようによっては、女の子として男との距離感を確かめていくいい機会かも知れない。
 まったくシャルルとお付き合いする気がないというわけではないのだ。
 「うん、わかったよ。一緒に学園に行こう」
 「ああ。じゃあ行こう」
 ニコラの返答に、シャルルが嬉しそうな顔になる。
 (笑った顔、けっこう素敵だな…)
 不覚にもどきりとしてしまう。
 シャルルの喜ぶ顔を見ると、自分も嬉しくなってしまうのだ。
 (俺ってけっこうチョロい…?シャルルに強引に押されたら拒めないかも…)
 ゼミで感銘を受けて節度を持つと誓ったはずなのに、もう気持ちが浮つき気味の自分に、ニコラは内心でため息をついていた。
 シャルルが笑った顔だけでこれなのだ。
 この先、デートやプレゼントなどで手を変え品を変えで責められたら、ムードに負けて簡単に股を開いてしまうかも知れない。
 そんな自分が怖かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】注文の多い料理店【TS】ー完結ー

ジオラマ
大衆娯楽
【19年12月19日、完結しました】 完結済みにて、「小説家になろう」にも掲載しています。 https://ncode.syosetu.com/n8657fx/1/ 山道に迷ったオレが入ったのは『注文の多い料理店』だった。 そこは、男を女に変える呪われたレストラン。 オレは気が付かないうちに、どんどん料理されていく。 女に変えられていく。 果たしてオレはここから抜け出すことができるのか。 メス化の毒牙から逃れることができるのか。 ----- キーワード: 密室調教、監禁、監禁調教、性転換、TS、TS、倒錯、性感開発、洗脳、美少女、性描写あり、メス化、雌化、牝化、メスイキ、メス堕ち、女性ホルモン、媚薬、注射、埋め込み、エッチ、エロ、あまあま、和姦、変態、可愛い受け、らぶえっち、無理やり、言葉攻め *宮沢賢治先生の代表作『注文の多い料理店』のオマージュです。 *性転換(TS)の要素が含まれますので、苦手な方はご遠慮ください。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

くすぐり 女子

nana
恋愛
くすぐり小説

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

buddy ~絆の物語~

AYANO
恋愛
小学校5年生の夏。芸能事務所GEMSTONEの元木浩輔にスカウトされ、練習生として入所することになった僚、明日香、深尋、竣亮、誠、隼斗の6人。高校1年の冬ダンス&ボーカルグループ「buddy」としてデビューすることに。 いなくなって初めて大切な存在に気づく僚、気持ちを伝えられない明日香、望みのない恋をする深尋、過去の傷を克服したい竣亮、一途に1人を思い続ける誠、明日香を守りたい隼斗。恋愛、家族愛、友情を通して成長していく6人の幼馴染の20年に渡る物語。 6人の話を中心に進みます。芸能界の話は薄めです 物語は小学生からスタートし、大人へと成長する過程を楽しんでいただけたらと思います。 大学生編からはR15指定になります。 ※※※毎日21:00に更新※※※ エブリスタでは先行公開中 小説家になろうでも公開中

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】入れ替わった双子の伯爵令息は、優美で獰猛な獣たちの巣食う復讐の檻に囚われる

.mizutama.
BL
『僕は殺された。 この世でたった一人の弟である君に、僕は最初で最後のお願いをしたい。 僕を殺した犯人を、探し出してくれ。 ――そして、復讐して欲しい』 山間の小さな村でひっそりと暮らしていた、キース・エヴァンズ。 存在すら知らされていなかった双子の兄、伯爵令息のルイ・ダグラスの死をきっかけに、キースは兄としての人生を歩むことになる。 ――視力を取り戻したキースが見た、兄・ルイが生きてきた世界は、憎悪と裏切りに満ちていた……。 美しき執事、幼馴染、従兄弟、王立学院のライバルたち……。 「誰かが『僕』を殺した」 双子の兄・ルイからのメッセージを受け取ったキースは「ルイ・ダグラス」となり、兄を殺害した真犯人を見つけだすことを誓う。 ・・・・・・・・・・・・ この作品は、以前公開していた作品の設定等を大幅に変更して改稿したものです。 R18シーンの予告はありません。タグを確認して地雷回避をお願いします。

処理中です...