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05 逆侵攻
夜空を染める紅蓮
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02
2018年9月23日
デウス公国中東部、ブラウアイゼン。
デウス公国の工業力を支えてきた一大工業地帯を有するこの町に、連合軍の攻撃がかけられようとしていた。
デウス軍も手をこまねいていたわけではなく、連合軍をブラウアイゼンの手前で迎え撃つべく防衛戦を敷いた。
だが、連合軍の物量の前に膝を屈することとなる。
デウス軍がユニティア、イスパノ、そしてアキツィアの各戦線で敗走し、自国領土内に撤退したのを見た周辺諸国は、続々と連合軍がわに立って参戦したのだ。
もちろん目的は、デウス国内の地下資源の利権だった。
3日に及ぶ戦闘は双方に多大な犠牲を出しつつも、連合側の勝利に決する。
いよいよ連合軍はブラウアイゼンに向けて進撃を開始するのである。
『重そうだな、ニアラス』
「ああ、早いところ任務を終わらせて身軽になりたいよ」
ジョージのひやかしに、エスメロードはおどける。
今回の任務は、対地攻撃と対空戦闘の二面作戦だ。
F-15Jでは荷が重いと判断したエスメロードは、マルチロール機であるSu-35をリースすることにした。
多少値は張ったが、爆弾と対空ミサイルをしこたま積み込んでも充分な加速力と機動性を確保できる性能は魅力だった。
巨大な燃料タンクを機内に持つため、増槽を必要としないのも嬉しい。
「フレイヤ3、キッド。ちゃんと着いてきてるか?」
『ご心配なく。お二人には楽をさせてさし上げます』
フレイヤ隊3番機として編入されたキッドことリチャードが自信ありげに返す。
ブリュンヒルデ隊に新人が入ったので、横滑りする形で配属されたのだ。
(生意気な)
エスメロードは思うが、実際リチャードは若くとも腕は確かだし、最近ではますます強くなりつつある。
『こちらAWACS、ブラウアイゼン市街地に多数の対空兵装を確認した。
注意せよ』
「フレイヤ1、コピー」
エスメロードは短く答える。
デウス軍も必死だ。
周りを見回せば、連合軍の航空隊が空を覆い尽くしている。
機体はF-15SE、ラファール、タイフーンと様々だ。
ここからでは確認できないが、後方の上空にはB-2の爆撃隊もいるはずだ。
それこそ、目視の対空砲火でも当たりそうなほどの混雑ぶりだ。
『ミサイルアラート!』
「来たか、対地攻撃始め!」
フレイヤ隊は、敵地対空ミサイルを回避すると、すぐさま対地攻撃に入る。
まずSu-35が敵地上部隊をピパーに捉え、誘導爆弾を投下する。
ついでジョージのF-15JとリチャードのF-2が同時に投下する。
一瞬のち、燃料気化爆弾が炸裂し、青白い炎が地上を覆う。
『敵防空施設破壊』
「了解、次のターゲットを破壊する」
E-767からの戦果報告を受けて、フレイヤ隊は次の目標に狙いを定める。
敵の防空施設が、機甲部隊が、次々と焼き尽くされていく。
『二時方向より敵航空隊接近』
「フレイヤ1コピー。迎撃する」
フレイヤ隊は飛来する敵空対空ミサイルを急降下でかわし、旋回して上昇しつつ99式空対空誘導弾で反撃する。
目視はできなかったが、レーダーからFA-18Cの反応が消失する。
『フレイヤ隊、敵機を撃墜』
「了解、対地攻撃を再開する」
エスメロードは、Su-35の性能に満足していた。
純然たる戦闘機としてはF-15Jに及ばないが、マルチロール機としては充分すぎる性能を持つ。
特に、対地攻撃と対空攻撃を瞬時にスイッチできるのが素晴らしかった。
地上目標は順調に破壊されていく。
が…。
『キッドよりニアラス。右手を見て下さい。
なにか変だ。
ユニティアのやつら、住宅街を爆撃してやがる!』
「なに?」
リチャードの言葉にエスメロードはヘルメットのバイザーを上げて右手を見る。
確かに、地図に寄れば、右手で燃えている場所は住宅街。
敵部隊はいないし、工場の類いもなかったはずだ。
『青二才、俺たちの任務はブラウアイゼンの制圧だ』
『しかし、民家が目標なんて聞いてませんよ!』
ジョージがリチャードをたしなめるが、リチャードは納得している様子はない。
そんな問答をしている場合にも、右手では立ち並ぶ集合住宅が炎に包まれていく。
ユニティア空軍のB-2やF-15SEの部隊は、明らかに作為的に住宅街を爆撃していた。
「アールヴ、キッド、今は任務に集中だ」
『アールヴコピー』
『キッド…コピー』
エスメロードの言葉に、ジョージとリチャードは意識を任務に戻す。
実の所、エスメロードも納得できなかったが。
『こちら第4機甲師団!
航空隊、ポイントE6のSu-25を落としてくれ!
戦車が攻撃を受けてる!』
「こちらフレイヤ隊、ポイントE6へ向かう」
地上部隊からの支援要請を受けて、フレイヤ隊は進路を北北西に向ける。
多少寄り道することになるが、地上部隊を見殺しにはできない。
地上部隊の中にはケン・クーリッジ率いる陸自混成部隊もいるのだ。
Su-25のレーダー反応はすぐに見つかった。
眼下の地上では、断続的な爆発が起きている。
恐らく連合軍の地上部隊がSu-25の攻撃を受けているのだろう。
「FOX-2」
『FOX-2』
『FOX-2!』
3機が同時に99式を発射する。
Su-25は攻撃機としては高性能だが、ドッグファイトを行えるようにはできていない。
6機の敵攻撃隊は回避を試みるも、あっけなくミサイルに食らいつかれ花火となってブラウアイゼンの夜空を照らす。
『こちら第4機甲師団、支援艦謝す!』
足止めを解かれた地上部隊は、ブラウアイゼン中心部に向けて整然と進軍を開始する。
「よし、地上攻撃に戻るぞ!」
『了解』
『コピー』
フレイヤ隊は進路を所期のコースに戻す。
ブラウアイゼン攻防戦は、連合軍の勝利に決しつつあった。
2018年9月23日
デウス公国中東部、ブラウアイゼン。
デウス公国の工業力を支えてきた一大工業地帯を有するこの町に、連合軍の攻撃がかけられようとしていた。
デウス軍も手をこまねいていたわけではなく、連合軍をブラウアイゼンの手前で迎え撃つべく防衛戦を敷いた。
だが、連合軍の物量の前に膝を屈することとなる。
デウス軍がユニティア、イスパノ、そしてアキツィアの各戦線で敗走し、自国領土内に撤退したのを見た周辺諸国は、続々と連合軍がわに立って参戦したのだ。
もちろん目的は、デウス国内の地下資源の利権だった。
3日に及ぶ戦闘は双方に多大な犠牲を出しつつも、連合側の勝利に決する。
いよいよ連合軍はブラウアイゼンに向けて進撃を開始するのである。
『重そうだな、ニアラス』
「ああ、早いところ任務を終わらせて身軽になりたいよ」
ジョージのひやかしに、エスメロードはおどける。
今回の任務は、対地攻撃と対空戦闘の二面作戦だ。
F-15Jでは荷が重いと判断したエスメロードは、マルチロール機であるSu-35をリースすることにした。
多少値は張ったが、爆弾と対空ミサイルをしこたま積み込んでも充分な加速力と機動性を確保できる性能は魅力だった。
巨大な燃料タンクを機内に持つため、増槽を必要としないのも嬉しい。
「フレイヤ3、キッド。ちゃんと着いてきてるか?」
『ご心配なく。お二人には楽をさせてさし上げます』
フレイヤ隊3番機として編入されたキッドことリチャードが自信ありげに返す。
ブリュンヒルデ隊に新人が入ったので、横滑りする形で配属されたのだ。
(生意気な)
エスメロードは思うが、実際リチャードは若くとも腕は確かだし、最近ではますます強くなりつつある。
『こちらAWACS、ブラウアイゼン市街地に多数の対空兵装を確認した。
注意せよ』
「フレイヤ1、コピー」
エスメロードは短く答える。
デウス軍も必死だ。
周りを見回せば、連合軍の航空隊が空を覆い尽くしている。
機体はF-15SE、ラファール、タイフーンと様々だ。
ここからでは確認できないが、後方の上空にはB-2の爆撃隊もいるはずだ。
それこそ、目視の対空砲火でも当たりそうなほどの混雑ぶりだ。
『ミサイルアラート!』
「来たか、対地攻撃始め!」
フレイヤ隊は、敵地対空ミサイルを回避すると、すぐさま対地攻撃に入る。
まずSu-35が敵地上部隊をピパーに捉え、誘導爆弾を投下する。
ついでジョージのF-15JとリチャードのF-2が同時に投下する。
一瞬のち、燃料気化爆弾が炸裂し、青白い炎が地上を覆う。
『敵防空施設破壊』
「了解、次のターゲットを破壊する」
E-767からの戦果報告を受けて、フレイヤ隊は次の目標に狙いを定める。
敵の防空施設が、機甲部隊が、次々と焼き尽くされていく。
『二時方向より敵航空隊接近』
「フレイヤ1コピー。迎撃する」
フレイヤ隊は飛来する敵空対空ミサイルを急降下でかわし、旋回して上昇しつつ99式空対空誘導弾で反撃する。
目視はできなかったが、レーダーからFA-18Cの反応が消失する。
『フレイヤ隊、敵機を撃墜』
「了解、対地攻撃を再開する」
エスメロードは、Su-35の性能に満足していた。
純然たる戦闘機としてはF-15Jに及ばないが、マルチロール機としては充分すぎる性能を持つ。
特に、対地攻撃と対空攻撃を瞬時にスイッチできるのが素晴らしかった。
地上目標は順調に破壊されていく。
が…。
『キッドよりニアラス。右手を見て下さい。
なにか変だ。
ユニティアのやつら、住宅街を爆撃してやがる!』
「なに?」
リチャードの言葉にエスメロードはヘルメットのバイザーを上げて右手を見る。
確かに、地図に寄れば、右手で燃えている場所は住宅街。
敵部隊はいないし、工場の類いもなかったはずだ。
『青二才、俺たちの任務はブラウアイゼンの制圧だ』
『しかし、民家が目標なんて聞いてませんよ!』
ジョージがリチャードをたしなめるが、リチャードは納得している様子はない。
そんな問答をしている場合にも、右手では立ち並ぶ集合住宅が炎に包まれていく。
ユニティア空軍のB-2やF-15SEの部隊は、明らかに作為的に住宅街を爆撃していた。
「アールヴ、キッド、今は任務に集中だ」
『アールヴコピー』
『キッド…コピー』
エスメロードの言葉に、ジョージとリチャードは意識を任務に戻す。
実の所、エスメロードも納得できなかったが。
『こちら第4機甲師団!
航空隊、ポイントE6のSu-25を落としてくれ!
戦車が攻撃を受けてる!』
「こちらフレイヤ隊、ポイントE6へ向かう」
地上部隊からの支援要請を受けて、フレイヤ隊は進路を北北西に向ける。
多少寄り道することになるが、地上部隊を見殺しにはできない。
地上部隊の中にはケン・クーリッジ率いる陸自混成部隊もいるのだ。
Su-25のレーダー反応はすぐに見つかった。
眼下の地上では、断続的な爆発が起きている。
恐らく連合軍の地上部隊がSu-25の攻撃を受けているのだろう。
「FOX-2」
『FOX-2』
『FOX-2!』
3機が同時に99式を発射する。
Su-25は攻撃機としては高性能だが、ドッグファイトを行えるようにはできていない。
6機の敵攻撃隊は回避を試みるも、あっけなくミサイルに食らいつかれ花火となってブラウアイゼンの夜空を照らす。
『こちら第4機甲師団、支援艦謝す!』
足止めを解かれた地上部隊は、ブラウアイゼン中心部に向けて整然と進軍を開始する。
「よし、地上攻撃に戻るぞ!」
『了解』
『コピー』
フレイヤ隊は進路を所期のコースに戻す。
ブラウアイゼン攻防戦は、連合軍の勝利に決しつつあった。
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