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第五章 真実への道

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 その時、着信音が鳴り始める。どうやら相馬のようだ。
「はい。え? 電源は切ってませんが……? ああ、また電波が入らないところにいたかも……。すみませんでした」
 どうやら、場所が悪く電話がつながらなかったらしい。
(電波が入らない……今時……?)
 誠は違和感を覚える。
 昔ならともかく、現代で電波が入らないところが早々あるとも思えない。
 いつぞや遊覧船が事故で沈んだ海のような、極端な場所ならともかく。ここは田舎とは言え、自分のスマホは普通に通じる。
「相馬さん、電波が入らないところなんてあるんですか……?」
 電話を終えた彼女に聞いてみる。
「ええ、あちらの切り立った崖の下。ごくごく狭い範囲ですけどね。電波塔の向きに岩盤がある場所が合って」
 相馬がそちらを指さす。
(なるほど……電波の盲点てやつか……。場所によっては入らない……。ん……?)
 ふと、少年の頭の中に閃くものがあった。この方法で、犯人は裏をかいたのか。
「相馬さん。相馬さんは確か、外人部隊に入る前はモスカレルの情報戦部隊にいたんでしたね?」
 ちょうど、情報戦のプロがそばにいる。彼女なら、盗聴やそれへの対抗策にも詳しいはずだ。
「ええ……。大したことはしてこなかったけど……」
 相馬は言葉を濁す。よほどひどい部署だったと見える。思い出したくないほどに。
「例えば……こういうことって可能ですかね……?」
 誠は身振り手振りを交えて、自分の推理を語っていく。
「その発想はなかった……。それなら通常の対策は無意味……。いくら部屋の中をクリーニングしても盗聴を防げない……」
 エキゾチックな美貌が、得心と驚愕が入り交じった表情になる。
「ええ、客向けのロッジ全てにワイヤーの痕跡があった謎も解けました。きっと盗聴器も全部の部屋に仕掛けられていたんです。ラバンスキーさんたちが、理由をつけて部屋のシャッフルを要求することも想定の内だったわけです」
 誠がドヤ顔で応じる。
「ワイヤーが除去されていたのは……? 盗聴がバレるとまずいのと……。もうその必要もなくなったってことかしら……?」
 相馬が先回りする。
「おそらくは。ロッジの中の会話は犯人に筒抜けだった。が、ラバンスキーさんたちは盗聴器を壊したことに油断して、余計なことをしゃべってしまった可能性もある……」
 少年はさらに推理を進める。
 仮にも客商売だ。宿泊客の部屋が盗聴されていたなど、信用にかかわる。犯人にとっては都合が悪かったろう。
 そして、本命の盗聴手段は誠が手品のタネに気づく遙か前に撤去されていた。犯人が目的を達成したから、と考えるのが自然だ。
「盗聴なんてする動機のある人って……まさか……。やっぱり……? 二人を殺したのも……?」
 相馬が手で口を抑える。聡明な彼女のこと。動機のある人物はすぐに想像がついたのだ。
「だとすると……疑問がひとつ。ラバンスキーさんがあっさりと迎え入れるとは思えないんですよ。それまでの状況考えたら」
 そこで推理は壁にぶつかってしまう。
 あの夜のラバンスキーは、相当に気が立って警戒心も強まっていたはずだ。
 だが、彼の胃からは茶葉と睡眠薬が検出された。誰かに一服盛られた可能性は高い。ではその誰かとは……? どう考えても合理的な答えが出てこない。
「相馬さん、このことは他言無用に願います。警察には俺から話しておきますから」
「わかりました」
 誠は釘を刺してその場を後にする。まだ謎は残っている。全てが解明されるまでは、みんなを意味もなく不安にさせたくなかった。
(となると……盗聴する動機のある人物の周辺を探ってみなけりゃならんな……)
 誠は次の目標を定めた。
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