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06 鮮血の京都編

恥知らずな恋人たちと復讐の銃弾

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 「藤孝…待って…あんっ!そこは…!」
 「光秀はお尻の穴が弱いもんね…。れろれろ…」
 京都から少し離れた、山城のとある河原。いつ人が通るかもわからない場所で、2人の女がねっとりと交わっている。
 光秀は生まれたままの姿で、木の幹に手をついて尻を突き出している。
 光秀の女の部分より恥ずかしい不浄の穴に、藤孝は下をちろちろと這わせている。指は、光秀の花びらと、一番敏感な突起を、同性ならではの巧みさと優しさで愛撫し続ける。
 光秀は、尻肉に口づけの雨を浴びせられ、排泄のための場所を舌で愛撫される倒錯した官能に、頭の中が真っ白になっていく。
 ここまで強引で積極的な藤孝は初めてだった。
 「だめだめ…!お尻が…もう…ああっ…!」
 光秀は頭の奥が白く弾けた感覚とともに、ぐっと体をのけ反らせて硬直した。
 「光秀、今度はわたしのを舐めてよ…」
 交わりはまだ終わらなかった。それは女同士の泥沼のような快楽の世界だった。
 「ああんっ…光秀…上手…!すごく上手…!お尻の穴も舐めて…!」
 光秀を仰向けに寝かせ、和式便器に座るような格好で顔面騎乗した藤孝は、光秀の舌と唇の甘い感触に悶えるのだった。

 なんとか京中から逃げ延びた光秀と藤孝は、河原で馬を止めて藤孝の体に着いた泥を洗うことにした。
 光秀は、生まれたままの姿で水浴びをする藤孝を見つめていた。やはり美しいと思う。自慢の長い黒髪をシニヨンにまとめているのが、いつもと違う印象を与えて新鮮に感じる。
 「光秀…どうしてわたしを助けたの…?」
 それまで無言だった藤孝が、川の水で体を洗いながら問う。その表情には、根深い悔恨が刻まれていた。
 自分は見捨てられて当然のことをした。光秀が自分を回収しに危険を冒して戻って来たことが、今でも信じられないのだ。
 「どうしてはないだろう?
 私は、そこもとなしでは生きていけないからな」
 光秀は、自分が濡れてしまうのも構わず藤孝を後ろから抱きしめる。
 「光秀、ごめんなさい…。
 わたしはあなたを裏切っただけでなく…義昭様まで危険にさらしてしまった…」
 藤孝は再び大粒の涙を流し始める。
 だが、光秀は藤孝を思い切り強く抱きしめることで答える。
 「謝らなければならないのは私の方だ。藤孝、不安にさせてしまって済まなかった。
 私には…きっとどこかでそこもとを利用しようとする気持ちがあったんだな。
 誤解されても当然だ。私が藤孝を見ていなかったというのは…半分当たっていたのだから…」
 「光秀…んん…」
 光秀と藤孝は、どちらともなく肩越しに唇を重ねていた。
 しばらく互いに唇を堪能した後、光秀は藤孝に向き合い目をのぞき込む。
 「藤孝、どうか信じてくれ。
 確かに義昭様は私にとって大切なお方だ。命に代えても守り、盛り立てる義務が私にはある。
 でも、愛しているのはそこもとなのだ。
 私は、藤孝なしでは生きていけないのだ!」
 「ああ…光秀…!愛しているわ。この世の誰よりも」
 藤孝は涙があふれるのを抑えられなかった。
 先ほどまでの悲しく冷たい涙とは違う。嬉しさとともに後から後からあふれ出て来る温かい涙。
 人はこんなに満たされて嬉しい気持ちになれるのを、藤孝は初めて知った気がしたのだ。
 「光秀、お願い。わたしを抱いて。今すぐに!」
 感極まった藤孝は、光秀の右手を自分の胸の膨らみに押し当てる。
 「ふ…藤孝…。私もそこもとを抱きたいが…ここじゃまずくないか…?」
 感極まっているのは光秀も同じだった。が、さすがにいつ誰が通るかもわからないこんな河原で藤孝を抱くのは恥ずかしかったのだ。
 「もう、じゃあいい!わたしが光秀を抱くから!ん…!」
 「藤孝…んん…」
 光秀は藤孝に唇を奪われ、鎧を脱がされて裸にされていく。
 すでに周りは十分明るいというのに、恥知らずな百合ップルの、蛇の交尾のような愛の交わりは始められてしまうのだった。
 
 さて、そんな恥知らずなガチレズプレイを遠くから見ている者がいた。
 7.62ミリ対人狙撃銃のスコープのセンターに、光秀をとらえている田宮だった。
 高機動車のボンネットに左の肘をつき、ストックをしっかりと肩付けして、射撃を安定させる。問題はない。訓練で何度もやってきたことだ。
 「隊長、これは戦闘じゃない。ただの殺人です!あなた、殺人犯になるつもりですか!?」
 傍らの牛島が、必死で田宮を思いとどまらせようと声をかける。
 無理やりにでもやめさせないのは、復讐心に駆られている者を無理に抑えようとすると、却って爆発する危険があるからだ。
 ともあれ、自衛隊員であるならば、銃弾一発たりとも私的に使うことは許されない。まして、独断で戦闘を行って人を殺したとなればそれは立派な犯罪だ。
 牛島にできることは、とにかく田宮に語り掛けることだけだった。
 「考えてもみて下さい。
 今の二尉は復讐心に憑りつかれて周りが見えなくなってる。
 あなたがそんな風になってるのを見て、安西曹長は喜んだと思いますか?嘆いたんじゃないですか?」
 牛島のその言葉に、田宮は多少冷静さを取り戻す。
 少なくとも、先ほどまでのように復讐心に自分を預け切ってはいない。この引き金を引いたらどうなるかに想像を巡らせることはできるようになっていた。
 (だが、光秀が馬鹿なことを企てなければ、曹長は死ぬこともなく…)
 田宮は風の読みを改めて行う。距離はざっと600メートル。偏差調整を行う必要はないだろう。ワンクリックずらすだけでいい。
 呼吸を整え、トリガーに慎重に指をかける。
 だが、そこでそれまで無言だった信長が口を開く。
 「知よ。一つだけ答えてくれ。
 陸上自衛隊二等陸尉、田宮知はここで終わるのか?」
 信長のその言葉に、知は反射的にトリガーから指を放す。
 「私は美しくてかっこいいお前が好きだ。
 だが、その引き金を引いたら、私の好きな田宮知はどうなるのだ?」
 信長のその言葉に、田宮は光秀を殺す意思を完全になくす。
 確かに馬鹿らしいことだ。一発の銃撃、人一人殺すことで全てを失うのは。
 特に、信長との大切な関係を失いたくはない。
 (だが…)
 田宮は今度は振り上げた拳をどこに降ろすかに悩んでいた。戦友が死んだのだ。とても笑って済ませられるものではない。
 田宮はそこで、新たなターゲットを認めていた。
 地面に四つん這いになり、互いに尻を向け合ったハレンチなポーズで女の部分を擦りつけ合う光秀と藤孝。
 ちょうどこちらは2人の真横だ。そして、藤孝は交わるのに邪魔にならないようにか、髪をシニヨンにまとめている。
 (完璧だ)
 田宮は再びトリガーにゆっくりと指をかける。
 「二尉!」
 「知」
 「殺しはしない。だが、この程度の意趣返しはしても罰はあたらないだろう」
 田宮は牛島と信長の言葉を遮る。
 「その言葉、信じていいのだな?」
 信長は、腰のポーチから自衛隊から借用した小型の双眼鏡を取り出し、光秀と藤孝にピントを合わせる。
 田宮はじっと待つ。
 激しく腰を振り、女の部分を擦りつけ合う光秀と藤孝の律動が早く小刻みになる。そして、2人がほぼ同時にぐっとのけ反って硬直する。
 (今だ!)
 田宮はトリガーに軽く指を添え、静かに絞る。
 スコープの中、7.62ミリの銃弾は田宮の狙い通りにターゲットに着弾していた。
 田宮は狙撃銃のボルトを引いて薬きょうをはじき出し、安全装置をかける。
 取りあえずはこれでいい。光秀とはまたまみえることになるだろう。その時こそ、安西の仇を取ってやる。
 田宮はそう思っていたのだった。
 その時、乾いた音が響いた。
 ボンネットから体を起こした田宮に、信長が平手打ちを浴びせたのだ。
 「すまんが、大将として私的な復讐を認めることはできん。
 これで済んで幸いと心得よ」 
 「恐れ入ります」
 田宮は素直にそう答える。
 信長の言うこともわかったからだ。
 戦闘は相手が降伏すれば終わるが、復讐は相手が死ぬまで続く。
 そして、憎しみと復讐の連鎖が始まれば、それはもはや止めることは不可能だろう。
 もし光秀を射殺していたら、今度は自分が藤孝の復讐心の対象になる。田宮は今更それに気づいていた。
 「牛島、すまんが運転してくれ。帰るとしよう」
 「了解。帰った後が思いやられますがねえ」
 田宮と信長がベンチシートに腰かけたのを確認し、牛島は高機動車のエンジンをかけてその場を後にする。

 高機動車に揺られながら、田宮は今になって涙があふれて来るのを止められなかった。
 復讐心ではない。純粋に戦友を失って悲しいという気持ちが、今になって溢れて来たのだ。
 信長は田宮を引き寄せて思い切り抱きしめる。
 安西が健在だったら、人前でいちゃつくのは自重されたし、とやんわりと苦言を呈されていただろうか?
 だが、信長は田宮の悲しみを受け止めてやりたいと、心から思ったのだった。

 「藤孝!藤孝!死ぬな!死んだらいやだ!」
 光秀はぐったりとなってしまった藤孝に必死で呼びかける。
 「揺らさないで…頭ががんがんする…」
 藤孝は目を開けて、光秀の呼びかけに答える。
 「藤孝…良かった…。
 でも…なんてことだ…」
 光秀は、先ほどの銃声の意味と、狙撃者の意図に気づいた。
 狙撃者は、お団子にしていた藤孝の髪を狙ったのだ。美しかった藤孝の黒髪が無残にその辺に散らばっている。
 藤孝は銃弾が頭のすぐそばを通り抜けた衝撃で気絶していたらしい。
 「髪は女の命だぞ。いくらなんでも卑劣じゃないか…」
 「命までは取らずにおまけしてくれたのか…。2度と戻るなという警告か…」
 光秀も藤孝も、狙撃者が自分たちを殺そうとしてしくじったとは考えなかった。そうであれば、2射、3射目が来なければおかしい。
 「なんにせよ、やつらの気が変わらないうちに逃げた方が良さそうだな」
 「そうね…。義昭様と合流する手はずはついているんでしょう?」
 藤孝はそう言って、自分は義昭に合流できる立場ではないことを思い出す。
 だが、今更他に行く当てがあるわけでもなかった。
 それに、理屈は抜きにして、藤孝は光秀から離れたくなかった。
 2人は立ち上がり、身支度を始める。
 光秀は桔梗の紋をあしらった鎧、藤孝にいたってはは生まれたままの姿だ。このまま移動するわけには行かない。取りあえず周辺の村か町で服を調達しなければならない。
 当然のように朝餉を取っていないから腹も空いている。
 幸いにして、万一の事態を想定して、光秀は常に金銀を持ち歩く習慣をつけている。当面は困らないはずだった。

 敗軍の将とはなってしまったが、生きている以上巻き返しの機会はある。
 今度は簡単には負けない。愛おしい人がそばにいるのだから。
 そう胸に刻み、光秀と藤孝は歩き出す。
 彼女たちにとっても、新たな戦いがまた始まろうとしていたのだった。
 

 
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