私にモテ期とか冗談でしょ？ アラサーオタ喪女に突然の逆ハーレム

０３ 寒い日々だから

やっぱり油断ならない

１２

　「お、これは…１作目じゃないの！再放送してたんだ」
　ローカル局にチャンネルを合わせた瞳が、突然はしゃぎ始める。
　「あれ、これって…」
　「そう、プリ○ュアシリーズの元祖だよ。再放送してたんだね。知らなかった。
　懐かしー！」
　画面の中では、ちょうど変身ヒロインアニメのオープニングが始まったところだった。
　国民的人気を誇る女児向けアニメで、１４年シリーズが続いている。
　その第一作目のようだった。
　“のようだった”というのは、第一作目が放送していた当時、つかさはまだ生まれていなかったのだ。
　（古いアニメだけど…けっこう面白いな…）
　実の所、つかさはいわゆる日アサの中でも、このシリーズだけは欠かさず観ていた。
　はっきり言えば大好きだ。
　「瞳さんは、本放送のとき観てたんですか？」
　「うん。当時すごい人気だったし、なにより面白かったからね。
　いやあ、もう１４年も前かあ」
　「内容的にはどんなお話なんです？」
　「うん、それはね…」
　つかさは、瞳とアニメの話題でしだいに意気投合し始めていた。
　自分の倍以上生きている大人の女と、共通の話題があるのがなんだか嬉しかったのだ。
　つかさは、瞳と遅くまでアニメ談義で盛り上がった。
　どのヒロインが好き。あの悪役は怖かった。あの演出は最高だった。
　そんなことを話していると、夜が更けるのは早かったのである。

　（ん…ここどこ…？あたしの部屋じゃない…）
　カーテンの隙間から差し込む光に目を覚ましたつかさは、一瞬状況がわからなかった。
　知らない天井、いつもと違う枕。
　（ああ…そうか。夕べ雪で帰れなくて、瞳さんとホテルに泊まったんだっけ…）
　頭がはっきりしてくると、ここがどこか、何故自分がここにいるのかを思い出す。
　（瞳さんは…まだ寝てるか…）
　そう思って、横にいるはずの瞳の方を向く。
　「！？」
　そこにあった光景に、つかさは一瞬息を呑んだ。
　そこに眠る瞳は、巨匠が描いた絵画かと見まがう美しさだったのだ。
　流れるような長い髪が、整った顔だちが、少しだけ開いた唇が、朝日に照らされている。
　長いまつげ、ガラス細工のような指、寝相が若干悪いのか開いた浴衣の胸元から見える谷間。
　（朝日が、女をきれいに見せるものなんだな…）
　色っぽく、素直に美しいと思えた。
　女である自分でも、くるものがあるほどだ。
　（兄貴がはまったのもわかった気がする…。
　優しくていい人だけど、やっぱり油断ならない）
　つかさは瞳の寝姿にそんなことを思う。
　自分が男であったら、絶対に惚れていると思う。
　本人に自覚があるかどうかはともかく、瞳は色気で男を虜にする魔女だ。
　そんなことを思わずにはいられないのだった。