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02 恋も仕事も?
まさかまた…?
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07
(図星だったか…)
龍太郎が抱えている問題を図らずも言い当ててしまった瞳は、複雑な気分だった。
問題の核心に迫れた一方、龍太郎の今までの努力を否定している気分になったからだ。
龍太郎は真面目だから、大人の自分が水琴のためになにかしてあげなければ、そのために頑張らなければと肩肘張っていたのだろう。
だが、水琴にしてみれば、そのために龍太郎が悪戦苦闘していることに恐縮してしまっていたのではないか。
そう思えるのだ。
「まあ、私も子供のお世話をした経験はさほどありませんが…。
水琴ちゃんのためになにかしてあげようというんじゃなく、一緒に楽しめることを見つければいいのでは?」
「そ…そうだったのか…。
言われてみれば…水琴がどうしたら楽しめるか考えてばかりいたかも…。
大人が難しい顔をしていたら子供も楽しみようがないか…」
龍太郎は背中を丸めて、字義通り頭を抱える。
(さすがにショックだったかしら…)
今まで自分は努力してきた。
だが、努力の方向性が間違っていた。
勤勉実直な努力家にとっては、これ以上ないほどショックなことだろう。
「まあなんです…。
課長が水琴ちゃんのためにいろいろ頑張ってきたことは、わかってもらえていると思いますよ…?」
瞳は精一杯のフォローを入れる。
情けない顔で頭を抱える龍太郎があまりに哀れだったのだ。
「いや、それではだめだ。
努力しても、その方向が間違ってたら意味がない。
まして、大人である俺が水琴にお情けで理解してもらうなんて恥ずかしいじゃないか」
打って変わって背筋を伸ばした龍太郎が、真剣な眼で瞳を覗き込む。
「そんな大げさな…」
あまりの迫力に気圧された瞳は困惑する。
「秋島くん!」
「は…はい!?」
目を合わせて大きな声で呼びかける龍太郎に、瞳は背筋を伸ばして固まってしまう。
「その…また一緒に水琴の相手をしてもらえないだろうか?
ついでに、どうすれば水琴と一緒に楽しめるかご教授願いたいのだが」
そう言った龍太郎の目は真剣そのものだった。
「近い…近いです課長。
わ…わかりました。
と言っても、私に教えられることなんてわずかだと思いますが…?」
「いやいや、君に指摘されなけりゃ、水琴と一緒に楽しむなんて考えもつかなかった。
ひとつ、ご教授願いたい。
教えられる範囲でいい」
龍太郎は瞳の手を握ってそういう。
「秋島君はすごい。
いつも大人しかった水琴があんなにはしゃいでるのを見たのは初めてだったかも知れない。
俺も、水琴にあんな笑顔になってもらえるようになりたいと思う!」
眼に星を浮かべてそういう龍太郎の願いを拒否することは、瞳にはできなかったのである。
(なんだか妙なことになっちゃったな…。
ていうか…これぜったい水琴ちゃんのことだけじゃないよね…?)
恋愛経験に乏しく、しばらく干物女子をやっていた瞳だが、男の下心や本音には敏感だ。
(よもや、またもてフラグか)
意思に関係なくまたしても男が寄ってきてしまった状況に、そんなことを思ってしまうのだった。
(図星だったか…)
龍太郎が抱えている問題を図らずも言い当ててしまった瞳は、複雑な気分だった。
問題の核心に迫れた一方、龍太郎の今までの努力を否定している気分になったからだ。
龍太郎は真面目だから、大人の自分が水琴のためになにかしてあげなければ、そのために頑張らなければと肩肘張っていたのだろう。
だが、水琴にしてみれば、そのために龍太郎が悪戦苦闘していることに恐縮してしまっていたのではないか。
そう思えるのだ。
「まあ、私も子供のお世話をした経験はさほどありませんが…。
水琴ちゃんのためになにかしてあげようというんじゃなく、一緒に楽しめることを見つければいいのでは?」
「そ…そうだったのか…。
言われてみれば…水琴がどうしたら楽しめるか考えてばかりいたかも…。
大人が難しい顔をしていたら子供も楽しみようがないか…」
龍太郎は背中を丸めて、字義通り頭を抱える。
(さすがにショックだったかしら…)
今まで自分は努力してきた。
だが、努力の方向性が間違っていた。
勤勉実直な努力家にとっては、これ以上ないほどショックなことだろう。
「まあなんです…。
課長が水琴ちゃんのためにいろいろ頑張ってきたことは、わかってもらえていると思いますよ…?」
瞳は精一杯のフォローを入れる。
情けない顔で頭を抱える龍太郎があまりに哀れだったのだ。
「いや、それではだめだ。
努力しても、その方向が間違ってたら意味がない。
まして、大人である俺が水琴にお情けで理解してもらうなんて恥ずかしいじゃないか」
打って変わって背筋を伸ばした龍太郎が、真剣な眼で瞳を覗き込む。
「そんな大げさな…」
あまりの迫力に気圧された瞳は困惑する。
「秋島くん!」
「は…はい!?」
目を合わせて大きな声で呼びかける龍太郎に、瞳は背筋を伸ばして固まってしまう。
「その…また一緒に水琴の相手をしてもらえないだろうか?
ついでに、どうすれば水琴と一緒に楽しめるかご教授願いたいのだが」
そう言った龍太郎の目は真剣そのものだった。
「近い…近いです課長。
わ…わかりました。
と言っても、私に教えられることなんてわずかだと思いますが…?」
「いやいや、君に指摘されなけりゃ、水琴と一緒に楽しむなんて考えもつかなかった。
ひとつ、ご教授願いたい。
教えられる範囲でいい」
龍太郎は瞳の手を握ってそういう。
「秋島君はすごい。
いつも大人しかった水琴があんなにはしゃいでるのを見たのは初めてだったかも知れない。
俺も、水琴にあんな笑顔になってもらえるようになりたいと思う!」
眼に星を浮かべてそういう龍太郎の願いを拒否することは、瞳にはできなかったのである。
(なんだか妙なことになっちゃったな…。
ていうか…これぜったい水琴ちゃんのことだけじゃないよね…?)
恋愛経験に乏しく、しばらく干物女子をやっていた瞳だが、男の下心や本音には敏感だ。
(よもや、またもてフラグか)
意思に関係なくまたしても男が寄ってきてしまった状況に、そんなことを思ってしまうのだった。
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