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最終話 『どっちも好き♡なままでいい⁉』
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しおりを挟むでも、実際にバックでするのは初めての経験で、俺達の間に未だに〈初めて〉というものがあることが、俺にはちょっと新鮮だったりもした。
今まで雪音も頼斗も俺とバックでしようとはしなかった。
理由は多分、今頼斗が言った通りだろう。バックだとシている最中の俺の顔が見えないからだと思う。
俺だってシている時は二人の顔が見たい。
顔が見えている方が安心感があるし。何より、俺とセックスしている時の二人の顔が好きな俺にとって、セックス中に相手の顔が見えないなんて状況は全く好ましくないのである。
それに、雪音に聞いた話も若干影響があるのかも。
性欲処理のためだけに女の子とのセックス経験がある雪音は、好きじゃない子とセックスする時は、いつもバックでするって言っていた。そんな話を聞いてしまったせいで、〈バック=愛の無いセックス〉というイメージが勝手についてしまったところがある。
もちろん、実際はそんな事ないんだろうと思うんだけど、自分が経験したことがないものについてはよくわからない。自分が後ろから突き上げられるセックスにどう感じるのかは、全く想像がつかなかった。
「深雪。愛してるよ」
顔が見えないぶん、頼斗がいつもより自分の声に愛情を込めているように聞こえた。
とびっきり優しい頼斗の声に「愛してるよ」って言われた俺は、それだけでも胸がきゅぅんとなってしまい
「俺も好き……愛してる……」
口からは自然と愛の囁きが漏れてしまっていた。
だけど、ここで気をつけなくちゃいけないのが雪音の存在。
俺は今、頼斗とだけセックスをしているわけじゃなくて、すぐ傍には雪音もいる。どっちも好きなままでいいことを許された俺は、一人だけに「好き」とか「愛してる」を言っちゃいけないと思う。
なので
「雪音も好きだよ。愛してる」
頼斗の次には雪音にも同じ言葉を言ってあげたら、俺に「好き」と「愛してる」を言ってもらえた二人は、心の底から喜んでいる様子だった。
自分では
(今のは完全に二股を掛けている人間のセリフだよね……)
と思わなくもなかったんだけど、これは誰が見ても疑いようのない二股であることは事実。それをここにいる三人が〈良し〉として認めているのだから、もうその事であれこれ悩むのはやめようと思う。
「んっ……」
四つん這いになっている俺の顔を雪音の両手が優しく包んできて、次の瞬間には雪音にキスをされた。
恋人同士になってからする雪音とのキスは、キスをするだけでも気持ちが一つに重なっているような気がして、とても心地良かった。
更に
「んんっ……!」
俺と雪音がキスをしている中、俺の中を押し広げながら挿入ってきた頼斗には、全身が震えるほどの快感が走った。
(どうしよう……。キスも一つになる瞬間も、今までとは比べ物にならないくらい気持ちいい……)
二人とはもう何度もキスやセックスをしているはずなのに、どちらも今までとは全く別物のように感じてしまうことが不思議だった。
(これが好きな人と一つになるって感覚なのかな……)
二人がしてくれることに身体も心も物凄く満たされて、幸せを感じてしまう。この感覚は今までの俺には無かった感覚だった。
頼斗の顔が見えないのが少し残念ではあったけれど、顔が見えなくても背中から頼斗の愛情をしっかりと感じられる。一つに繋がっている部分から、頼斗の愛情がどんどん流れ込んでくるみたいな感じがした。
「ぁ……ん……んっ……んんっ……」
俺の中に挿入ってきた頼斗はすぐには動かず、恋人同士になって初めて一つになる感覚を噛み締めているのかと思った。
でも、それだけじゃないみたいだった。俺の腰を掴んでいる頼斗の手が少し震えているのを感じて、少しでも気を抜くとイってしまいそうになる快感に耐えているのだとわかった。
その証拠に、射精こそしなかったものの、俺の奥まで突き進んできた頼斗のナニは、俺の奥をズンッと突いた瞬間にビクビクッと震えていたから。
「ヤベー……挿れた瞬間にイくとこだった。恋人同士になってからするセックスヤバいかも。今までの深雪とのセックスもめちゃくちゃ気持ち良かったけど、〈こいつは俺の彼女だ〉って思うと、気持ちの昂ぶりとかテンションが全然違う」
危うくイきかけた自分を少し恥じるように、頼斗の照れ臭そうな声が背中から聞こえてきたけれど、こっちは喋りながら俺の中でむくむくっと大きくなる頼斗に身体がぶるっと震えてしまった。
(イきそうなのはこっちだよ……)
そう思った。
頼斗は今、「恋人同士になってからするセックスがヤバい」って言ったけど、それは俺も同じだった。
俺は今、ただのセフレのような関係から恋人同士に変わるだけで、こんなにもセックスの感じ方が違ってくることに驚いている真っ最中である。
俺の中でピクピク震える頼斗を凄く愛しく感じてしまうし、頼斗と一つになっている事実が、身も心も隅々まで満たしてくれる。
俺の中にハッキリと感じる頼斗の存在や熱が全部愛しくて、それを手離したくないから
(このままずっと頼斗と一つになっていたい……)
とさえ思ってしまう。
「そんなに違うものなの? 僕も後で確認してみよ」
初めてでもないのに、挿れた瞬間からイきそうになってしまう頼斗に、雪音は興味津々な顔だった。
でも、このまま俺と頼斗がセックスしている様子をただ見ているだけのつもりもないようで、ズボンを寛げて取り出した自分のナニを俺の口元に持ってくると
「でもその前に、深雪は僕をこっちの可愛いお口で気持ち良くしてね」
と言ってきた。
「っ⁉」
雪音のナニを口元に持ってこられた瞬間、俺はこの体位の意味を理解した。
先に俺と一つになったのは頼斗だけれど、〈三人でスる〉ということは〈三人で気持ち良くなる〉ということでもあるんだ。
頼斗は俺とセックスすることで気持ち良くなって、雪音は俺に口でシてもらうことで気持ち良くなる、と……そういう事だったんだ。
(だから今回はバックなのか……)
正直、雪音が
『だったら、僕は僕で深雪に気持ち良くしてもらおうかな』
って言った時は、どうやって? と思ってしまった。だけど、俺が雪音に口でシてあげれば、三人で一緒に気持ち良くなることは可能……だよね。
でも、それって物凄くエッチな構図だし、セックスしてる最中の俺が口で上手くシてあげられる自信も無い。
頼斗が中にいるだけでも身体中が気持ち良くなっちゃって、その快感に頭の中が真っ白になってしまいそうなのに。ここから頼斗が動くってなったら、自分がどうなってしまうのかがわかったものじゃない。
そもそも、俺は雪音や頼斗に口でシてあげたこと自体が少ない――っていうか、まだ一回ずつしかシてあげたことがない。その少ない経験じゃ、セックスしてる最中じゃなくても上手くできているかどうかがわからないくらいなのに。
それでも
「んっ……」
ここで雪音を差し置いて頼斗と二人だけで気持ち良くなるわけにはいかない俺は、いつの間にやらすっかり勃ち上がってしまっている雪音に手を添えると、ゆっくり雪音を口の中に咥え込んでいった。
「んっ……んんっ……」
完全に勃ち上がっている雪音のナニは大きくて、頼斗が俺の中を満たしているのと同様に、今度は雪音のナニが俺の口の中を満たしていくような感覚……。
「あぁ……気持ちいいよ、深雪……」
俺の口が雪音をどうにか根元まで咥え込むと、雪音の口からは吐息混じりの色っぽい声が漏れた。
三人の身体が一つになったという感覚を覚えた俺は、それが何だか感動的な瞬間に思えてしまったんだけど、同時に物凄い羞恥心も覚えた。
だってさ、後ろからは頼斗に突っ込まれていて、前では俺が雪音のナニを咥えちゃってるんだよ? それって物凄くエッチで興奮しちゃうシチュエーションだよね。
「そろそろ動くぞ、深雪」
「ん……んんっ……」
危うい波は一旦収まったのか、雪音を咥えたままの俺に頼斗の声が優しく話し掛けてきた。
口が塞がっている俺は当然返事ができなかったんだけど、返事の代わりに小さく腰を振ってみせると、頼斗の両手が俺の腰を掴み直し、ゆっくりと腰を送り始めた。
「んっ……んんっ……は、んっ……んっ……」
最初は優しく俺の中を捏ね繰り回すような腰使いだったけれど、ゆっくりとした優しい動きでも、俺の中の頼斗は俺が感じるところを的確に擦りながら奥を突いてくるから、俺は目の前がチカチカしてしまうような強い快感を覚えた。
おまけに、頼斗の動きで身体が揺さぶられてしまう俺は、口に咥えた雪音を自然と扱くような形になってしまい、口の中で擦れる雪音のナニにも感じてしまう。
(口とお尻の両方だなんて……)
最初にお尻の中に指を突っ込まれた時は、正直気持ちいいのか気持ち良くないのかがわからなかったけれど、初めて頼斗にフェラをしてあげた時、口の中で擦れる頼斗のナニを気持ちいいと感じてしまった。
後で知ったことなんだけど、人間は口の中にも性感帯というものがあり、フェラをして気持ち良くなってしまう人間は結構多いらしい。俺はその口内性感帯が最初から敏感だったということだろう。
思い返せば、初めて雪音にディープキスをされた時も、俺は唇を解放してもらった直後に全身の力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。
あの時は、怒りや悲しみや絶望で気力を奪われただけなのかと思ったけれど、本当は雪音の舌に口の中を刺激され、感じてしまっていたんだと思う。
その証拠に、二度目のディープキスを頼斗とした時の俺は、舌で口の中を愛撫される感覚を気持ちいいと思ってしまっていたんだから。
だから
「んんっ……んっ……っ……んんっ……」
今、頼斗と雪音の二人に身体の内側を刺激されている俺は、どちらの刺激にも物凄く気持ち良くなってしまって、身体が感じる一方だった。
気が付けば、上手くできるかどうか自信が無かったフェラも自分から積極的に頭を振って雪音を貪ってしまっているし、頼斗の腰の動きに合わせて自分の腰まで振っている始末。
「ヤバ……深雪が凄くいやらしい……」
「全くだっ……三人でヤるとここまで乱れるのかよっ……とんでもねーな……」
「これは癖になっちゃいそ……」
「っ……マジかっ……勘弁しろっ……」
自分の姿を客観的に見ることはできないけれど、自分が物凄くエッチな事になっていることだけはわかる。
これまでは与えられる刺激に素直な反応を返しているだけだった俺が、今は与えられるというよりも、自分から刺激を求めにいっているような身体の使い方をしてしまっている。
今までの自分からは考えられないような大胆な自分の行動に
(ちょっと待って……少し落ち着いて……)
と、自分で自分を制したいんだけど、心と身体は裏腹というか、一度火が点いてしまった身体は止まらなかった。
そんな俺の大胆な動きには雪音や頼斗も目を見張るものがあるようだし、堪えきれない何かがあるようだ。
「不味い……もうイきそ……」
頼斗は俺の腰をしっかり掴んでガンガン俺を突き上げてくるし
「僕もヤバいかも……だって今日の深雪、本気で僕をイかせようとしてくるみたいなんだもん……」
雪音も俺の顔を両手で挟み、俺にもっと速く頭を上下させるように手を加えてくる。
二人ともいつもより早い段階で限界を迎えてしまいそうだった。
それでも、二人とも俺の前で呆気なく限界を迎えてしまうのはプライドが許さないのか、イきそうになる自分を二度三度とどうにか堪え
「んんっ……んっ……んっ……んー……」
先に俺が限界を迎えそうになった頃になってようやく
「もう無理っ……限界っ……出すよっ、深雪っ……」
「俺も無理っ……イくっ……」
俺が絶頂を迎えるタイミングに合わせるかのように、頼斗は俺の中で、雪音は俺の口の中で絶頂を迎えた。
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