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Final Season
挑戦には苦悩と邪魔がいっぱい?(8)
しおりを挟む自分もいっぱいいっぱいだったけど、悠那さんが海を咥え込んだ瞬間、頭の中を殴られたような衝撃がきた。
「ちょっ……悠那っ⁈」
「んー」
まさか悠那さんがそんな行動に出るとは思っていなかった司さんもびっくりして、海を口に含んだままぷいっと司さんから顔を背ける悠那さんに慌てふためいている。
司さんの魔の手から逃げるなら今しかない。
「んっ……んんっ……」
「っ……悠那君っ……待って……待ってくださいっ……いくらなんでもこれは……不味いですって……やり過ぎ……っ」
先日、生まれて初めて僕から口でシてもらったばかりの海は、口でシてもらうこと自体に慣れていない。にも拘らず、司さんに口でご奉仕するのが大好きだと言う悠那さんに口でサれたら一溜りもなさそうだ。
「ぁ、ん……海のも司と同じくらいおっきいね……」
「ダメだってば……悠那君っ……」
さっき司さんにシてあげていた時と同じように、ねっとりと海に唇を這わせる悠那さんの顔はどこかしらうっとりとしていて、この人は相手が司さんじゃなくても舐めるのが大好きな人なんじゃないかと疑ってしまいそうになる。
そう言えば、BREAKとの一件の際、悠那さんは樹さんのを舐めさせられてたよね。あの時は物凄く嫌がっていたはずなのに、あれから一年半後には平気で司さん以外の人のを舐められるようになっているのはどういうことだ。相手が同じグループの海だから平気なのか?
だとしたら、悠那さんはFive Sのメンバー全員とセックスできちゃうんじゃないだろうか。
司さんは悠那さんの恋人だから言うまでもないが、僕にも一度手を出しているし、海にもこうして口でご奉仕できちゃってる。悠那さんは流されやすい性格だから、強引に言い寄られたら拒み切れるかどうかが怪しいところだ。
もし、間違って司さん以外のメンバーとそんな雰囲気になってしまったうえ、相手に関係を迫られてしまったなら、悠那さんはなんだかんだとセックスしてしまいそうな感じである。
まあ、司さん以外のメンバーが悠那さんに手を出すとは思えないし、今のところ朔夜さんも拒み通しているみたいだから、いざとなったらちゃんと拒否する姿勢は見せるのかもしれないけれど。
「これは由々しき事態だな……」
悠那さんの大胆な行動に、さすがに僕に構っていられなくなった司さんは、僕が司さんから逃げ出す前に僕を解放してくれた。
これはもう……どうなっても知らないからね。っていうか、正直僕も怒っている。
「こら、悠那」
「ぁんっ」
「誰がそこまでしていいって言ったの?」
「だってぇ……司が律のこといっぱい触るから面白くないんだもん」
「触るのと口でご奉仕するのは違うでしょ。それに、悠那だって前に律のことは触ってるじゃん」
「そうだけどぉ……」
機嫌を損ねた司さんに首根っこを掴まれ、海から強引に引き剥がされた悠那さんは、不満気な司さんの顔に負けず劣らずの不満顔をした。
どうやらお互いにヤキモチを焼いているようなのだが、この二人のヤキモチは周りの人間まで巻き込むこともあるから迷惑な時もある。
と言うか、悠那さんが僕と海のことになるとすぐに余計なお節介を焼こうとするのが原因か。口であれこれ言うだけならいいのに、何かしらの行動に出ようとするから。
で、結果的に僕達は被害を被るし、司さんの機嫌も悪くなる……と。とんでもなく迷惑な話だな。
悠那さんを海から引き剥がした司さんは、そのまま悠那さんを自分の元へと連行して行ったから、僕もその隙に海に駆け寄った。
「大丈夫? 海」
大胆過ぎる悠那さんの行動に相当な衝撃を受けたのか、珍しく身体を縮こめている海が心配になる。
いくら海が僕に比べてエッチなことに積極的でも、司さんや悠那さんのレベルにはまだまだついていけないと思う。
「うん……ごめん、律……」
「気にしないで。すぐ止めに入らなかった僕も悪いから」
本当は不満に思う気持ちも腹立たしく思う気持ちもあるけれど、ここで海を責めても仕方ない。海が望んでしてもらったことではなかったし、僕だって司さんに触られた。お互いに危機管理能力が上手く働かなかったと反省しよう。でもって――。
「悠那は俺にお仕置きされたいの? 俺の前であんなことして。俺がどう思うかなんてわかるよね?」
「でも、司だって……」
「言い訳は聞かないよ」
「ぁんっ!」
この二人はまだ続けるつもりか。
まあ、完全に機嫌を損ねてしまったらしい司さんが、このまま悠那さんのしたことを見逃すとは思えないし、何かしらの報復をするつもりであることは容易に想像できたけど。
「ゃっ、ぁ……ちょっと待って、司……これっ……これって……」
悠那さんを連れて僕達がいるソファーの向かい側のソファーに移動した司さんは、余裕で三人は並んで座れるソファーの肘掛に背中を凭れさせ、シートの上に足を伸ばして座った。
“座った”と言うよりは“横になった”と言ったような姿勢ではあるが。とにかく、そんな体勢を取った自分の上に、悠那さんの身体を自分とは逆向きにして乗せると――つまり、悠那さんの頭は司さんの足の方を向き、悠那さんのお尻が司さんの目の前にくるような体勢――、悠那さんのズボンを下着ごと脱がせてしまった。
本日二人目の被害者である。司さんの手によってあっさり下半身を丸出しにされた。
悠那さんの場合、簡単に服を脱がされやす過ぎる気がしなくもないけれど、家の中ではわりとゆったりめな服ばかり着ている悠那さんだから、脱がせるのもさぞ楽なのだろう。
っていうか、司さんと一緒の部屋にいる時は服を着ている時間の方が少ないのかもしれないから、悠那さんにとって司さんの前で服を着ていること自体、最早邪魔臭くて煩わしいのかもしれないよね。司さんに脱がされるのであれば、簡単に身体が従ってしまうように調教されているのかもしれない。
「ほら、悠那。さっきの続きシて。でも、今度は俺も悠那にエッチなことするからね。悠那が俺より先にイったらお仕置き確定」
「そんなぁ……俺、そういう勝負で司に勝ったことないのにぃ……」
一体何が始まるのかは謎だけど、とんでもなく淫らな行為が始まることだけは間違いないだろう。
それでも、今から二人が行う勝負とやらが気になるから、ついつい視線を逸らせずにいると、悠那さんは少し前まで口に咥えていた司さんを再び口の中へと飲み込んでいき、司さんは目の前にある丸出しになった悠那さんのお尻を舐め始めた。
「~っ⁈」
なんだ、これは。僕達は一体何を見せられているという。こんな卑猥な行為が存在するのか? 卑猥を通り越して最早僕の中ではホラーだ。
「んっ……ぁ、んっ……やぁっ、ん……」
「ほらほら。喘いでないでちゃんと舐めてよ。じゃないと俺がイけないよ?」
「んんっ……んっ……んー……」
唖然とする僕の耳に、二人が立てる濡れた音が聞こえてくる。
それはそれで物凄く焦ってしまうのだけど、司さんの顔の前に晒された悠那さんのお尻は僕達からも丸見えで、とても男性のものとは思えない悠那さんの丸みを帯びた滑らかで柔らかそうなお尻にも、僕はどぎまぎしてしまう。
(こ……これ、絶対見たらいけないやつ!)
本能的にそう思うのに、ついつい食い入るように見詰めてしまうのは、所詮僕も男だという証なのかもしれない。
普段女性に欲情することがない僕も、さすがにこんな場面を見たら性欲を掻き立てられてしまうってことなのだろう。
悠那さんが僕と同じ男であることはわかっているし、欲情する対象でないことも認識しているけれど、何度か目にした悠那さんの身体はやっぱり僕と同じ男性のものだとは思えない。今の悠那さんだってどう見ても女の子がエッチなことをしている姿にしか見えないから、僕もなるべく悠那さんの身体は見ないようにと努める。
「あんっ! ゃっ、ぁ……ダメっ……ぁんっ……」
しかも、声まで可愛くて女の子みたいだから、悠那さんのこんな姿を見て興奮しない男もいないんじゃないかと思われる。
「やぁん……舌……舌入れちゃやだぁ……」
「ん? 嫌なの? でも、悠那のココは気持ちいいってピクピクしてるよ?」
「んんっ……ぁん……触っちゃダメぇ……」
海を咥えることにもまだ抵抗がある僕にとって、悠那さんのお尻の孔に舌を差し入れる司さんは未知の生物にも見えた。
あんなところ、僕は絶対に舐められたくないし、舌を挿れられるなんてもってのほかだ。もし、海が僕にそんなことをしたら、思わず手が出てしまうに違いない。
「あぁん……気持ちいいよぉ……そんなのされたら俺……司の舐めてあげられないじゃんかぁ……」
お尻の孔を舌で攻められ、前を手で擦られた悠那さんは泣きそうな声を上げ、司さんにご奉仕してあげている場合ではなくなってしまったようだ。
それでも、どうにか司さんを気持ち良くさせてあげようと、勃ち上がった司さんから手を離さないようにと頑張っている。
二人のとんでもない姿に心を奪われてしまう僕だったが、そんな光景をガン見している自分の存在に気が付くと、こんなことをしている場合ではないことを思い出した。
「海っ……」
「律……」
僕が海を振り返ったのと、海が僕を見上げたのはほぼ同時だった。
海と視線がぶつかった瞬間、僕は海が今までにないくらい興奮した目をしているのがわかった。
もしかして、これは良くない展開なのでは?
「律……僕、もう我慢できない……」
「え……わっ!」
言うが早いか、海は僕の身体を引き寄せてソファーの上に押し倒してしまうと、僕のズボンを司さんよろしく素早く取り払ってしまった。
「海っ……」
既に海は司さんによって下半身を丸出しにされているところに、僕まで下半身丸出しにされてしまったという非常に危険な展開。今リビングにいるメンバーの中で、唯一ズボンを穿いているのは司さんだけという状態になってしまった。
二人の人間の下半身を丸出しにした人間が、どうして一人だけズボンを穿いたままの状態でいられるんだ。ナニは丸出しになっているけれど、下半身を剥き出しにされるよりはよっぽどマシな状態じゃないか。
「海っ……待ってよ……ちょっと落ち着こう? ね?」
「無理。僕もう爆発寸前」
「そんなこと言われても……」
一体何が爆発寸前なんだ。この状況では爆発しそうなものが色々とありそうだ。
二人のあられもない姿に僕でさえ性欲を煽られたくらいだから、海の性欲が爆発しそうなのはわからなくもない。もしかしたら、悠那さんに口でシてもらったのが気持ち良くて、ナニが爆発しそうになっているのかもしれない。もしくは、理性の崩壊を“爆発”という言葉で表現しているとも……。
とにかく、僕にとって爆発寸前な海は危険極まりない存在に違いなく、二人に煽られたからといって爆発されても困る。
「あんっ! やっ、ぁ……ぁっ、あぁんっ……」
僕を押し倒した海の向こうから、遠慮のない悠那さんの喘ぎ声が聞こえてくる。その悠那さんの喘ぎ声が、余計に海を掻き立てているように感じた僕は、今すぐ海の耳を両手で塞ぎたくもなったのだが……。
「っ! ぁっ、んんっ……」
僕の上に覆い被さっていた海の顔が視界から消えたと思った次の瞬間、僕は勃ち上がっていたアレが生暖かいものに包まれるのを感じていた。
「っ……ゃっ……んんっ……」
僕が海に口でご奉仕する、という計画だったと思うのだが、結果的に逆になってしまったらしい。
僕がいつまでたっても海に口でシてあげる気配を見せないから、悠那さんに口でシてもらった海が、僕に代わって口でご奉仕することにしたようだ。
悠那さんの言った「間接的に律に伝わる」ってそういう意味だったの? ってことは、海は悠那さんにシてもらったように僕にスるってこと?
それはそれでなんか嫌だ。なんで自分の恋人のナニを舐めた相手のテクニックを、僕以外の人間に舐められた恋人の実体験をもとに伝授されないといけないんだ。それって間接的に僕に伝わっているというより、間接的に悠那さんに舐められてる気分にもなりそうじゃないか。
「ぁ、んっ……ゃだっ……んんっ……」
僕が海にシてあげた時とは明らかに違う舐め方と舌使いに、悠那さんにほんの少し舐められただけで違うものなのかと驚いた。
これじゃ海が慌てふためいてしまったのも無理はない。だって……。
「ゃっ…あ……ぁっ、ぁっ……ん……」
腰から下が溶けてしまいそうなくらいに気持ちいい。絶妙な舌使いが僕の弱いところを刺激してくるような感じがして、頭が真っ白になりそうだ。
「律……気持ちいい?」
「ゃっ……喋らないで……っ」
僕の不安通りの望ましくない展開も嫌だけど、司さんや悠那さんのすぐ傍で海に舐められている状況が嫌過ぎる。
どうしてこうなるんだ。お互い部屋ですればいい話なのに。
「あぁっ、ん……司っ……やだぁ……イっちゃぅ……」
「もうイっちゃうの?」
「だってぇ……中ぐちゅぐちゅ……前も後ろも一緒にされて気持ちいぃ……」
もっとも、こんな状況を作り出した二人は、今度こそ僕達のことを完全に忘れているようだけど。
僕が目を離した隙に司さんの指は悠那さんの中に埋められ、音が立つほどに激しく中を掻き回しながら、もう片方の手で勃ち上がった悠那さんを扱き上げていた。悠那さんはそんな司さんから与えられる刺激に腰を揺らしながら喘いでいる有り様だった。
これじゃ勝負も何もあったものじゃないだろう。そもそも、そうされていること自体が既にお仕置きみたいなものだと思うから、司さんの言うお仕置きとは? と思ってしまう。
「ダメっ……ダメぇっ……もうイっちゃぅ……イっちゃうからぁ……」
腰より頭が下にある体勢のせいか、胸の上までずり下がっているシャツにより、悠那さんはほぼ全裸と言ってもいい状態だった。背中から腰にかけてのラインといい、その先にあるお尻から太腿にかけてのラインといい、どこをとっても男らしくない悠那さんの身体が視界の端にチラつくたびに、僕はそういうビデオを見ながら海といやらしいことをしている気分になってしまう。
「ぁっ、あっ、ん……あぁぁんっ!」
あっちを見てはいけない。と、自分に言い聞かせて目を閉じた時だった。悲鳴にも似た一際甲高い喘ぎ声が耳を突き、悠那さんがイったことを知る。
どうやら勝負は司さんの勝ちで終わったらしい。このまま二人がおとなしく落ち着いてくれるとは思わないけれど。
「あ……ん……んん……」
「まだ休んじゃダメだよ。俺がイってないんだから」
ほらね。やっぱりそうなる。悠那さんがイって終わりになるはずがないんだ。
「見て? 海と律もエッチなことしてるんだから、俺達も二人に負けないようにエッチなことしよ」
でもって、勝負あったところでちゃっかり僕達に目を向けるのもやめて欲しい。僕達のことはどうかそっとしておいてくれないものか。
「ほんとだ。海が律に口でシてあげてるんだ。俺としては、律にサせたかったのに」
司さんに攻められ始めたあたりから周りのことに意識が向かなくなっていた悠那さんは、司さんに言われて僕達に目を向けてくる。
だから、見なくていいんだってば。見られたくないのに。
ついでに言うと、“律にサせたかった”はほんとに余計なお世話だから。
「悠那は二人がどんな風にエッチなことするか興味津々だったよね」
「うん」
「だったら、たっぷり見物させてあげるね」
「え?」
射精の余韻で身体の自由が利かないのか、司さんにされるがままの悠那さんは上の服まで司さんに脱がされてしまい、素っ裸の状態でテーブルの上に乗せられた。
そんなところに悠那さんを乗せられると、僕と海のしていることが悠那さんに丸見えになっちゃうじゃないか。勘弁しろ。
「ちゃんとよく見るんだよ」
「えっと……うん……あぁっ!」
悠那さんもよくわからない顔でテーブルの上に身体を乗せていたわけだけど、悠那さんの後ろから悠那さんの腰を掴んだ司さんが、さっきまで散々指で掻き回していた部分に自分をねじ込んだものだから、悠那さんは目を見開いて声を上げた。
マジか……。今度はそんな体勢でセックスを始めやがった。そんなところで始められたら、今度は僕達が二人からガン見されることになるじゃないか。ほんと無理なんだけど。
「あぁんっ……ぁっ、ん……あっ……」
背後から突き上げられる悠那さんは、とてもじゃないけど僕達をじっくり見物できる状態ではなく、僕達からも感じている悠那さんの顔がはっきり見えてしまうから、お互い恥ずかしいことこのうえなしだった。
「海っ……もういい……もうやめてっ……」
ただでさえ、二人の前で海に口でサれているのが恥ずかしくてしょうがないのに、セックスしてる二人に見られながらご奉仕されるなんて無理すぎる。海には今すぐ理性を取り戻してもらい、僕をどこか安全なところに避難させて欲しい。
僕が心の底からそう願っているというのに
「ダメ……やめない……」
海は僕の要望を聞く気がないようで、より一層強く僕を吸い上げてきた。
「っ……ぁ……ダメっ……ぁっ……」
二人が見ている前で簡単にイって堪るかと、我慢に我慢を重ねていた僕だけど、司さんに強制的に勃たされてしまったうえ、いやらしい悠那さんの姿に性欲を掻き立てられ、海にまで口でサれてしまっては我慢のしようもなかった。
もともと海は僕よりこっち方面の勉強に熱心だから、口でスるのも僕よりは上手かったんだと思う。そこに悠那さんのテクニックが加わったわけだから、僕が海に追い詰められるのにそんなに時間は掛からなかった。
海の口の中で爆発寸前を迎えていた僕は、司さんの真似なのか、僕のお尻の孔に指を埋めてきた海にビクっとなると、焦りと刺激に身体の熱が上がってしまい、海が僕の先端をちゅうぅっと強く吸い上げた瞬間、海の口の中へ白濁を放ってしまっていた。
「ぁ……あー……」
身体が痙攣したみたいにビクビクっと震え、海の口の中に射精した僕は、それまで我慢していた感情を一気に解き放てた解放感に意識が飛びそうになる。
いや、実際数秒間は意識が飛んでいたんだと思う。だって僕、海の指が僕の中を掻き回し続けていることに全然気が付かなかったわけだから。
更に――。
「やっ……な、何っ⁈」
ようやく意識を取り戻した時、僕も悠那さんと同じようにテーブルの上に身体を乗せられていたものだから、僕はそうなるまでの間、完全に海に身体を委ねていたことになる。
「僕も律の中でイきたい」
「えっ⁈」
僕の昂ぶった欲望は吐き出されたけれど、海の欲望はまだ海の中で燻ぶったままだった。
司さんと悠那さんが僕達の目の前でセックスをおっぱじめてしまった以上、海が止まらなくなるのは無理もない話だ。
でも、だからって司さんや悠那さんと全く同じ体勢でセックスする必要なんてないと思うんだけどっ! これって一体何プレー⁈
「律……」
「んんっ!」
悠那さんと同じ体勢にさせられた僕は、これまた司さんと同じように後ろから僕の腰を掴み、僕の中に挿入ってきた海に息を詰めた。
「ゃあっ……ダメ……海っ……」
爆発寸前状態が続く海のアレはいつもより大きくて、入り口を押し広げて挿入ってくる時はちょっとだけ引き攣れるような痛みを感じた。
それでも、何度か海と身体を重ねてきたぶん、痛みも気になるほどのものではなく、なんだかんだと根元まで海を呑み込んでしまった僕だった。
「は、ぁっ……んん……」
まさか司さんと悠那さんの前でセックスする日が来るなんて……。だからこの二人に関わるのは危険なんだ。
「んっ……律も……律も一緒に気持ち良くなろ……」
しかも、なんで悠那さんと顔を突き合わせて、後ろからそれぞれの恋人に犯されなくちゃならないんだ。リビングのテーブルはテーブルでしかなく、ベッドなんかじゃないっていうのに。
五人暮らしのリビングに置くテーブルだからと、事務所が無駄に大きくて頑丈なテーブルを選んだのが間違いだ。これがガラス版の洗礼されたデザインのテーブルだったら、割れる恐れがあるから僕達が上に乗せられることもなかったのに。
「お。これはこれで興奮するシチュエーションだね。それぞれの彼氏に見られながら後ろから犯される気分はどう?」
「くっ……」
理性をなくした海の行動は司さんにとっても少し意外だったみたいだけれど、同じ体勢で向かい合ってセックスする状況にはまんざらでもなさそうな顔だった。
僕にとっては破廉恥極まりなく、屈辱的にも思える状況に興奮する司さんに、僕は得も言われぬ苛立ちを覚えそうになる。
気分はどうだって? そんなの、最悪に決まってるじゃないか。
「悠那にもお仕置きしなきゃいけないから、この際、二人には思いっきり恥ずかしいことでもしてもらおうかな」
幸い、後ろから突っ込まれているおかげで二人に恥ずかしい部分は見られなくて済むと思っていたのに。
司さんがとんでもなく恐ろしいことを言うものだから、僕は恐怖で身体が震えあがった。
お仕置きは悠那さん一人にすればいいじゃないか。そこにまで僕を巻き込む必要はないだろ。
そもそも、どう考えても今回一番の被害を被っているのは僕で、僕が一番の貧乏くじだ。せっかく頭を悩ませていた曲作りも終わり、晴れて自由の身になったというのに、こんな仕打ちはあんまりだと思う。一体僕が何をした。
「さて。第二ラウンドと行きますか」
恐怖に打ち震える僕とは裏腹に、悠那さんと僕を纏めて見下ろす司さんの目は楽しそうだった。
「いいじゃん。凄くいいと思うよ。特にこっちの曲。ダークで格好いい感じの曲ってリクエストした方の曲が僕は気に入ったなぁ」
「ありがとうございます」
二月末日。学校が終わるなりマネージャーと一緒にプロデューサーを訪ねた僕は、そこで自分が作った曲にいい返事が貰えてほっと胸を撫で下ろした。
本当は昨日プロデューサーに曲を持って行こうと思っていたけれど、その前日にあんなことがあったから、散々悩んで完成させた二曲目の曲を一日で作り直した。
あんなことがあったおかげで僕の心はすっかり荒み、ダークの極みみたいになったからな。曲のインスピレーションが一気に浮かんできて、二時間ほどで曲を作り上げたのである。
最初に作った曲もそれなりに悪くないと思ったけれど、昨日作った曲の方がプロデューサーの希望に沿っていると思えたから、音源を差し替えて持って来た。僕の読みは当たったらしく、プロデューサーはそっちの曲を絶賛してくれた。
「二曲とも採用するね。いや~、ほんとびっくりだね。律君は作曲の才能があるよ。これからもお願いするから頼むね」
「ど……努力します」
僕に才能があるからなのか、感情任せに作った曲がたまたま当たったのかどうかはわからない。どちらにせよ、僕にはまだ自分に作曲の才能があると思い上がれるほどの自信はない。
でも、苦労して完成させた曲を認めて貰えるのは嬉しいと思ったから、これからは本腰を入れて曲作りに取り組んでみるのもいいと思うきっかけにはなった。
「そう言えば、明日は卒業式なんだっけ?」
「はい」
「早いものだねぇ。出逢った時は高校一年生だったのに、もう卒業なのか」
「自分でもちょっと実感が湧かないですね」
Five SのCD制作を担当するのはデビューの時からこのプロデューサーだ。僕達のことは当然デビュー前から知っているから、それなりに感慨深く思うところもあるのだろう。
自分が高校を卒業する歳になったことには僕も色々と思うところがある。高校生になったばかりの頃は、自分の高校生活がこんなものになるなんて思っていなかった。地元の高校に海と一緒に通い、平凡で穏やかな高校生活を送ると思っていたのに。
それが、アイドルオーディションを海と一緒に受けに行き、二人揃って合格をし……。地元を離れることになったのがきっかけで、海と付き合うことにもなったんだよね。
もし、僕が海の誘いに乗らずにオーディションを受けなかったら、今頃僕と海が付き合っていたかどうかもわからない。案外、延々と仲良し幼馴染みのままでいたかもしれないよね。
僕は海のことが好きだし、海と恋人同士になったことも後悔はしていない。でも……。
「海君にも卒業おめでとうって伝えといてね」
「……はい」
一昨日のことはやっぱり納得がいかないし腹立たしいから、昨日今日とロクに海と口を利いていなかったりする。
もちろん、司さんや悠那さんも無視している状態の僕なのである。
(ほんと、海はあの二人から悪い影響ばっかり受けて……)
乗せられやすい海にも腹が立つけれど、そんな海を利用して、良からぬことをさせようと唆す司さんや悠那さんの方がもっと質が悪い。
明日は卒業式だというのに、こんな気持ちで卒業式を迎えるのはちょっと嫌だ。
(帰ったら仲直りでもするか)
僕が怒るのは当然だとわかっている海も、この二日間でしっかり反省したようだし。司さんと悠那さんはさておき、海のことは許してあげようと思う。
そろそろ海の誕生日も近いし。
「そうそう。帰ったらみんなにこれ渡しといて」
「なんですか? これ」
「みんなのソロ曲だよ。作詞はそれぞれが担当することになってるから、そろそろ作業に取り掛かってもらわないとね」
「ああ、そう言えばそうでしたね。わかりました。渡しておきます」
「詳しいことはまたマネージャーに伝えとくから」
「はい」
作曲が終わったら今度は作詞か。なかなかアルバム作りの作業から解放されないな。
でもま、僕も明日をもって高校生ではなくなるわけだから、アイドルとしての仕事はあるに越したことはない。学生生活はまだ続くけど、これまで以上に仕事に責任を持って行動しなきゃだよね。
いくつかの雑談を交わし、建物を後にした僕は、マネージャーの運転する車の中で、海との仲直りの方法をずっと考えていた。
ほんと、この数日間は大変の連続だったな。いっぱい悩んだし、邪魔が入って来たりもして……。最後にはとんでもないアクシデントにも見舞われもした。
だけど、いくつになっても新しいことに挑戦するのは楽しいものだと実感はした。
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