僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Season 2

第10話 イチャラブライフを取り戻せ!(1)

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 季節はすっかり秋めいて、だいぶ過ごしやすい日々が続いている。暦は10月になり、今年も残すところあと二ヶ月。Five Sとしてデビューしてから八ケ月が過ぎ、メンバーとの共同生活を経て、俺の中でもかなりの変化があった年になったと思う。
 頗る可愛い恋人もできたし。
 ありすさんと一緒にやるランキング番組も放送開始から半年が経ち、収録現場もだいぶ和やかになったと思うけど……。
「司君。その後、彼女さんとはどうなの?」
「えっとぉ……」
 ありすさんが俺に彼女がいると思い込んでいるこの状況は、些かどうなんだ? と思わなくもない。
 そりゃ確かに、俺には恋人の悠那がいて、ありすさんにも恋人がいるってことは認めている。実際、悠那は彼女と言えば彼女と言っていいほどに可愛いけど、厳密に言えば彼女ではない。だって、悠那は男だし。
 だからといって、彼氏って言い方もちょっと違う気がするから、悠那は俺の彼女ってことでいいんだろうか。
「仲良くしてますよ」
「そうなんだ。妬けちゃうなー。司君の彼女がどんな子なのか、一度見て見たい。写真とかないの? スマホで撮ったりしてないの?」
「いや……さすがにそれはちょっと……」
「だよね~」
 あはは。と笑うありすさんに、俺は思わず苦笑いだ。
 いやいや。あなた会ったことありますけどね。俺の可愛い彼女に。俺とはしょっちゅう一緒に仕事してるし、仕事中もわりとイチャイチャしてますけど。
 俺と悠那の仲がいいのはもう有名で、仕事現場で俺達の仲睦まじい様子を見るスタッフにも
『ほんと仲良しだね。さすがルームメイト』
 なんて言われてしまうくらいだ。
 ついでに
『凄く仲良しだけど、可愛い悠那君にくっつかれてムラッとこない?』
 と、俺を心配する声もある。
 そんなもの、ムラムラするに決まってるだろ。そういうこと聞いてくるってことは、お前も悠那見てムラムラしてんのか? って言いたくなる。
 俺が可愛くてエッチな悠那に四六時中ムラムラして、実際エッチなこともいっぱいしているだなんて、周りの人間は思っていないんだろうな。
 個人的には、悠那が俺の恋人だってことを言い触らしたいし、イチャイチャしてるところも見せつけたい。が、現実はそういうわけにもいかない。人前でイチャイチャはするけれど、あくまで仲良しルームメイトのていである。ところ構わずキスとかしないし、恋人モードも出さないように気をつけている。
 だから、そのぶん家の中では存分にイチャイチャしたくなるわけだけど。
 最近、その家の中でのイチャイチャが窮地に立たされてる。俺と悠那イチャイチャしていると、陽平がすぐ文句を言ってくるようになった。
 前に陽平が朝帰りした時――朝ではなく、昼頃帰ってきたから昼帰りか?――、学校を休んだ悠那とエッチしてたことが、相当気に入らなかったらしい。
 あの日、前日の疲れが出た悠那は、朝になっても布団の中から出ることができなくて、仕方がないから学校を休ませることにした。一日に三回イっちゃった悠那は、さすがに体力の限界だったんだろう。イき過ぎて起きられないとかほんと可愛いし、エッチ大好きで堪らん。ってなる。
 最初は俺も疲れた悠那をゆっくり休ませてあげようと思ってたけど、家の中に悠那と二人っきりって状況も珍しいし、ベッドの上の悠那にちょっかい出して遊んでいたら、悠那もなんだかんだと俺に甘えてくるから、あれよあれよという間に……ね。
 家に誰もいないから、悠那もいつもは我慢している声を我慢しなくてもよくて、それはもう、可愛い喘ぎ声をいっぱいあげてくれた。悠那は真っ昼間からエッチことをしている状況にも感じちゃうから、俺も止まらなくなって、悠那をたくさん可愛がってあげていたところに陽平が帰ってきた。まさか陽平が部屋に入ってくるとは思わなかった俺と悠那は、何故か激怒した陽平から二時間も説教された。
 その日以来、陽平は俺達のイチャイチャに口煩くなってしまったのだ。
 今更……という気がしなくもないし、何がそんなに気に入らないの? って不満もあるけど、なんか最近の陽平はご機嫌斜めなんだよね。あの日のダンスレッスンも珍しくやる気がなかったっていうか、なんか辛そうにしてたし。
 これは、どう考えても湊さんと何かあったとしか思えない。
 陽平と湊さんのことにはあまり口出ししようと思わない俺だけど、そのせいで、俺と悠那のイチャラブライフを邪魔されるのは困る。俺と悠那は家の中でしか恋人らしく過ごせないんだから、もっと自由にイチャイチャさせて欲しい。
「でも、司君って一人暮らしとかじゃないよね? プライベートも事務所に管理されてる感じだから、なかなか彼女にも会えないんじゃない?」
 その心配は必要ない。なにせ、俺とその彼女は同じ屋根の下、同じ部屋で一緒に暮らしているんだから。
 それに、事務所が用意したマンションの一室に住んでいるといっても、監視カメラが付いているわけではないし、盗聴されているわけでもない。オフの日に出掛けるのは自由だし、陽平のように外泊するのも仕事に影響がなければ問題ない。もちろん、この日はどこに行く、どこにいる、くらいの報告はマネージャーにするけど、よっぽどのことじゃない限り、事務所も自由にさせてくれる。
「ええ、まあ……そうですね」
 もちろん、そんなことは言えないけど。
 アイドルとして活動する俺達は、プライベートにも自由がないと思われている方が好都合だった。





「うー……ストレスー……」
 俺が仕事から帰って来て少ししたら、悠那が学校から帰ってきた。学校から帰ってき悠那は、俺に抱き付いた瞬間、陽平に
『俺の前でベタベタすんな。部屋でしろ』
 と怒られ、ムスッとした顔のまま俺を部屋に連れ込むと、俺にぎゅぅっとしがみつきながら不満を零してきた。
 今まで当たり前にしていたことに、いきなり文句を言われることにかなりの不満があるようだし、ストレスも感じるらしい。
 陽平としては、イチャイチャするなら部屋でしろ、って言ってるだけだから、俺と悠那がイチャイチャしていること自体に文句を言っているわけでもないんだけど。
「湊さんの誕生日以来、陽平って変じゃない? 前はちょっと嫌味言うくらいで、怒ったりなんかしなかったのに」
 イラついているのかなんなのか、俺の首にグリグリと頭を押し付けてくる悠那が可愛い。
 何それ。怒ってんの? 随分可愛い怒り方だな。
「ほんと、どうしたんだろうね。湊さんにまた気に入らないこと言われたのかな?」
 陽平が湊さんから告白された話を、俺は悠那に喋ってしまっていた。ほんとは言うつもりなんてなかったんだけど、ここ最近の陽平の不機嫌っぷりを悠那と検証していた際、うっかりと……。
「だからって、俺達に当たらなくてもいいじゃん。せっかく司と一緒にいるんだから、俺はずっと司とイチャイチャしてたい」
「俺も悠那とイチャイチャしたいよ。こんな風に……」
 言いながら、まだ制服を着替えていない悠那のシャツの中に手を滑り込ませると
「ん……ダメ、司。また陽平に怒られちゃう……」
 ダメとか言いながら、悠那の期待するような目が俺を見上げてきた。
 陽平のせい(おかげ?)で、悠那は焦らしプレイを覚えたようだ。ほんとはシして欲しい癖に、そんなことないよ、って素振りを見せる悠那が逆にいやらしく見える。
「ダメ? じゃあ触らない」
 俺が悠那のシャツの中からあっさり手を引き抜くと、悠那は残念そうな顔になり
「意地悪……」
 恨めしそうな目になって、ぷくっとほっぺたを膨らませた。
 覚えたての焦らしプレイはまだ物にできていないようである。
「嘘だよ。ほんとは触りたい」
 拗ねた悠那に謝るようなキスをして、悠那をベッドの上にやんわり押し倒すと、悠那の手はすぐに俺の背中へと回ってきた。
 これのどこかダメだって? シて欲しくて堪らないって感じじゃん。
「シたい?」
「うん」
「声、我慢できる?」
「頑張る」
「ちゃんと塞いでてあげるよ」
「うん……」
 俺は悠那の制服を脱がしに掛かりながら、悠那の唇を塞いでいった。
 ただでさえ、頑張っても感じる声を抑えるのが難しい悠那が、エッチしてるのを気付かれないくらいにまで声を殺すのは至難の業だ。でも、それができないと俺とエッチできなくなるような今の状況では、無理でもなんでもやるしかない。一度、シている最中の俺達の部屋に乱入してきた陽平は、最中だろうがなんだろうが、俺達に不満をぶつけることに躊躇いがない。あの後も、俺と悠那は二回ほどヤってる最中の部屋に乱入され、陽平から物凄い不満をぶつけられている。
 おかげで、俺と悠那のセックス頻度も、前に比べると少し落ちてしまっているのであった。
「ぁんっ……!」
「悠那、我慢」
「わかってるけど……でも、出ちゃうし出したいよぉ……」
「困ったね。日が空く方が感度良くなっちゃうからね、悠那は。日が空かなくても感度いいけど」
「だって……そのぶん我慢してるんだもん。ちょっと触られるだけでも凄く感じちゃう」
「可愛いなぁ」
「だから、お願い。ちゃんと俺の口塞いでて」
「うん」
 口を塞いだところで、くぐもった声が漏れてしまうけど。それでも、塞いでいるのと塞いでいないのとではかなり違う。加えて布団を被ってしまえば、部屋の外にまで丸聞こえってほどにはならない。
 今まで本能のままにセックスしていた悠那にとっては、声を我慢することもまた、大きなストレスになっているんだろう。
「司っ……」
「ん? もうイきそうなの?」
「うんっ……だから……」
「わかってるよ」
 俺にぎゅぅっとしがみ付いてくる悠那の身体を抱き返した俺は、なるべく音を立てないように悠那を突き上げながら、これからどうするべきかを考えていた。



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