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第1章  山桜が綺麗すぎて

8話 染井吉野に実が実る

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あなたは友達や親友や恋人ってなんだと思いますか??
ちょっとした違いで仲が悪くなりますよね。
人と人が一緒に歩く事は凄く難しいと思います。
でも、人は1人では立ち続ける事はできないと思います。
そんなこと分かってますよね

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


降りしきる雨に、回りの音は静かに感じた
その中をバシャバシャと走りながら昔の思い出に向かう。
結香の中であの日の染井吉野ほど綺麗な桜並木はなかったのだ。
陽に照らされ喜ぶかのように輝き、優しく草花の香りの風が吹くそんな時に君に出会えた。
佑丞だけは、私を見てくれたのだ。
皆が言うような私ではなく、弱くて不器用でいい子じゃない私に特別な言葉をくれた。
もう一度だけ、見たかった。
見れば元気になれると思ったから、嘘つきのずるい私に戻れるから。
でも、春はもう通りすぎていて次の春を待っていたのだ。
染井吉野には蕾すら咲いていないのを見ると人の冷たさを感じてしまうほど、濡れていたのだ。
蕾すら咲いていない桜の木に人は何を思うのだろう。
もう雫なのか雨なのか分からないほどの雫が垂れる。
桜は次の春まで人から忘れられるのに寂しくないのだろうか。

後ろからバシャバシャと足音が聞こえてきた。

「結香、ごめんな。思い出したよ。」

「桜を見ると、佑丞を思い出せたし頑張れたんだよ。どれだけきついことがあっても桜は私の支えだったんだ。
でもね、春が過ぎれば桜は咲かないの。
思い出にすがるしかなかったの」

「学校の交流会の時だよね。
あの時の結香を見て綺麗だって
守りたいって思ったんだ。」

今の結香には考えられないほどだ、約一年半前虐めをうけていたのだ。
明るく、天真爛漫な性格で、話しやすく偏見がないことから前の学校でも人気だった。
そんなことを気に入らない、女子や一部の男子が虐めを起こし、その他男子も離れていったのだ。
それからというもの、先生すら回りとコミュニケーションをとれていない結香が悪いと話を聞こうとしなかった。
真も学校が違う事から頼れなかったようだ。
1度虐めが始まれば膨れ上がるのは当たり前だった。
服が濡れるのは当たり前、物がなくなるのは当たり前の中、死ぬことも考えていた時に佑丞に出会うのだ。
桜が満開で5月上旬の時に交流会という周辺の学校の同い年で、レクリエーションをして仲を育むというものだった。
結香は回りに声をかけないためか、他校な生徒すら関わろうとしなかった。
その時に佑丞と目があった。
真っ直ぐ私の所に来て声をかけてくれたのだ。

「なんとなくなんだけどさ、体調悪い??
体調悪いなら先生呼ぶけど」

「大丈夫だよ。ありがとう」

昔から佑丞は全く見てないようで見ているのだ。
とても優しく、回りを優先する子だった。
ただ、口は悪いしストレートに言うのがキズらしい。
その日は、何するにしても側にいてペアを組んでくれた。
それだけでも、久しぶりに楽しく疲れるほど笑ったんだ。
でも、楽しい時間はすぐに過ぎていくと共に現実へと引き戻される。
終わった後は自然と距離が開いていく。
また、楽しくない日が続くと思うと引き裂かれるほどだった。
泣きたくなる。なんで私が虐められないといけないのか、虚しい怒りを覚えていたんだ。
いつも1人で、決まった時しか綺麗に輝けない桜に嫉妬さえある。
私はこれだけきついのに、それを嘲笑うかのように輝く桜に。
わからないくらい自然に雫が垂れる
そんな時ですら、佑丞は優しかった。

「大丈夫、何かあったなら話を聞くよ」

「佑丞君はまだ帰ってなかったんだね
大丈夫だよ。聞いてもいいかな、桜を見てどう思う。」

「今から帰るよ。無理すんなよ
綺麗だと思うよ。僕さ山桜って桜が好きでさ結香ちゃんにぴったりだと思ったんだ。
凄く綺麗で、儚くていつ散ってもおかしくないから守りたくなる」

「口説いてるの?私は、染井吉野かな。
白って温かく感じるんだよね。何か優しく包んでくれそうな。
山桜見てみたいなぁ~」

「口説くとかじゃないよ。染井吉野、綺麗だよね、凄く分かる。
俺、来年から○○って学校に行くんだけどそこに山桜咲いてるよ。」

「えっ!?そうなの。
私も、まだ決まってないけどそこに言ったらって親に言われたの。」

「一緒の学校に行けたらいいね。楽しくなりそう。俺は結香ちゃんの味方だから」

その言葉が嬉しかった。誰かに味方だと仲間だと言ってほしかったんだ。
その時の桜は唯一今でも一番綺麗に見えていたと思う。
そして、進学校へと進み佑丞と一年ぶりに出会えたのだ。

「私は、あの言葉があったから虐めに耐えられたし頑張ってこれて、佑丞が味方だって言ってくれた事が嬉しかったのに私に気づいてくれないし、会った事とか言ってくれた言葉すら忘れてるのひどいよ。」

「ごめん。本当に最低だと思う。
でもね、本当に思って言ったことなんだ。
今でもその言葉に嘘はなかったて誓える」

「嬉しいのか、悲しいのかもうわかんない。」

「俺が守るから。もう忘れないし側にいたいんだ。だからもう1度言うけど俺の彼女になってください」

結香は下を向き、雫と雨に濡れながら頷いた。
二目惚れだった。運命だと思えるほどに、君の隣にたてるのが心強かった。
君の花びらは雨と雫に濡れていたが優しく包みこんだ。
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