いつから異世界転生ものだと思っていた？

002 光

誰も居ないことに、助けがないことに絶望した。その後、どのくらい経ったのか全くわからない。しかし、少し冷静になったら、いくつか分かったことがあった。あれだけ叫んだはずなのに、喉が全く痛くない。そして、圧迫感と暗闇から、何かの中に詰め込まれていると勝手に思っていたが、どうやら何かやらかして、海に沈められるわけではないらしい。
あれから、少なくとも何時間かは経っているだろう。しかし、なんの動きもない。だから殺されるわけではないと判断する。…餓死させる気でなければ、だが。
ふと、今何時なのかが気になった。今何時なのか。朝の訪れを告げる暖かな太陽の光もなければ、夜の訪れを知らせる涼しげな淡い月の光もないので、光で何となく何時かを予想することはできなかった。目の前は暗闇なわけで、そこから夜なのではないかと考えてはみたが、何か違う、ような気がする。だから、よく分からない。
体内時計で時の流れを感じようとしても、何かが狂ってしまったのか、よく分からない。お腹が空かない。自分はもう死んでいるのではないか、という気さえする。しかし、「人は死ぬとなにも感じなくなる」、と聞いたことがある。死んだ人間が言っていたわけではないから確かではないが、圧迫感や、少しひんやりとした、湿った感じを感じるから死んではいないと思うことにした。

それより、今何故こうなっているかを思い出さなければならない。思い出したら、ここから出る方法が分かるかもしれない。いくつか疑問を出して、それに答えていくことにした。

Q.こうなる前、自分は何をしていた？
A.分からない……

が、1問目で躓いた。焦る。なんでだろうか、全く思い出せない。全く違うことなら思い出せるだろうか。

Q.好きなバライティー番組は？
A.世界の果てまで行ってK

Q.好きなことは？
A.小動物の世話

全く関係ないことなら思い出せた。少し安心する。しかし、少しして安心できるものではないということに気付く。

Q.（そもそも、僕は誰だ？）
A.……分から、ない

自分自身の重要なことがわからないことに大きなショックを受けた、その時だった。

何かが溜まった気がした。なぜだかよく分からない。ただ、

何かが、溜まった。

今まで動けなかったにもかかわらず、動かなければと感じた。動けると感じた。思い切り、伸びる、伸びる。背伸びをする感じで伸びた。不思議と簡単に動けた。何か壁に当たったが、気にせず伸びる、伸びる、伸びる。グゥーッと伸びる。すると、真っ暗だった視界が心なしか明るくなっていく。

あと少し。

そう心の深くで感じる。あと少し、グイッと伸びる。すると、視界が段々と明るくなっていく。もう少しすると、コソッと軽い音がして。何かを突き抜けた。