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13.元魔王、睨まれる【中編】
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「すごくおおきかったねー」
「ああ、俺も将来あれぐらいは倒せるようになってみせるぜ!」
ギルドの近くまでやってきた。
何やら興奮した面持ちで話す小さき少年少女の話が聞こえるが、どうやら既に解決した様子。
この街の人々も、そんな様子を笑顔で見ながら往来を行く。
「えー、さすがにあんなに大きなぶたさんは無理じゃない?」
「俺なら出来る。いや、やってみせる!」
どうやらギルドで暴れたのは大きなぶたらしい。
どこかから逃げ出してきたのだろうか。
「お兄ちゃんが怪我したらやだよ」
「じゃあ怪我しないように頑張る。それならいいだろ」
「うん、がんばってー」
「あとあれ、ぶたさんじゃなくてオークな!」
「へー、そうなんだー」
その会話を最後に小さな者たちもまた、ギルドから離れるように歩いていった。
それにしても、ギルドを破壊したのはオークなのであるな。それもかなり大きな個体の……。
あっ。
「ねえ、もしかして……」
「ええ、わたしもちょっと心当たりがあるような」
「……まさか」
「あはは……そのまさかかもね」
何の気なしにキングオークもゴブリンよろしく転送したが、はて。
どこに送られて、処理されるんだったか。
……うん、ギルドだ。
「あまり気は進まないけど、モリタケも納品しないとだし」
「うん……中に入りましょうか」
「……観念しよう」
「ほら。ま、まだお姉さんたちのせいって決まったわけじゃないからね」
四人は断頭台へ進むかのごとく重い足取りで、ギルドの扉を開く。
中に入れば、ギルド内にいる人間の視線が一斉にこちらへ注がれる。
冒険者らしいというか、顔がいかついのが多いために睨まれているようにも思える。
「おい、あいつらじゃねえか?」
「ああ。あの燃えるような赤い髪は間違えようがねえよな」
目立つもんね。勇者娘の赤い髪。
「……ってことはだ」
こちらに近づいてくる冒険者たち。やはりギルドを破壊した罪で捕まるのか。
次第に迫る筋肉。圧倒的な熱量。
そして……。
「うおぉぉぉ! おまえらやるじゃねえか!」
あれっ?
「オークキングを四人で倒したのかよ!」
「しかも、勇者の卵とはいえ新米もいいところだってのによ。どうなっているんだこいつらは!」
てっきり捕まるものかと。
「あの、ギルドの施設を破壊した俺たちを捕まえるんじゃあ……?」
「何言ってんだ。そりゃ確かにお前らが壊したんだろうがよ。それはそもそも魔物の大きさを想定できなかったギルドの連中の落ち度だ」
「それに、あんなのが街に来たらそれどころじゃなかったからな」
「ああ、あんなのがきたらどれだけの被害になったことか」
つまり、セーフ?
「大丈夫そう……かしら?」
「……ギルド次第だと思うけど、怒られはしない?」
「みたいだねー。あー、よかった~」
三人娘たちもホッと一息といった様子。
「すいませ~ん。通してくださいー!」
すると、冒険者たちの筋肉をかきわけて受付嬢がこちらにやってきた。
「あの、お話があるので応接間までお願いします」
どうやら呼び出しのようであるな。しかも受付ではなく個室にだ。
筋肉もとい冒険者たちが騒ぎ立てる中、受付嬢に連れられて建物の奥へ。
「では、この部屋へどうぞ」
「ああ、俺も将来あれぐらいは倒せるようになってみせるぜ!」
ギルドの近くまでやってきた。
何やら興奮した面持ちで話す小さき少年少女の話が聞こえるが、どうやら既に解決した様子。
この街の人々も、そんな様子を笑顔で見ながら往来を行く。
「えー、さすがにあんなに大きなぶたさんは無理じゃない?」
「俺なら出来る。いや、やってみせる!」
どうやらギルドで暴れたのは大きなぶたらしい。
どこかから逃げ出してきたのだろうか。
「お兄ちゃんが怪我したらやだよ」
「じゃあ怪我しないように頑張る。それならいいだろ」
「うん、がんばってー」
「あとあれ、ぶたさんじゃなくてオークな!」
「へー、そうなんだー」
その会話を最後に小さな者たちもまた、ギルドから離れるように歩いていった。
それにしても、ギルドを破壊したのはオークなのであるな。それもかなり大きな個体の……。
あっ。
「ねえ、もしかして……」
「ええ、わたしもちょっと心当たりがあるような」
「……まさか」
「あはは……そのまさかかもね」
何の気なしにキングオークもゴブリンよろしく転送したが、はて。
どこに送られて、処理されるんだったか。
……うん、ギルドだ。
「あまり気は進まないけど、モリタケも納品しないとだし」
「うん……中に入りましょうか」
「……観念しよう」
「ほら。ま、まだお姉さんたちのせいって決まったわけじゃないからね」
四人は断頭台へ進むかのごとく重い足取りで、ギルドの扉を開く。
中に入れば、ギルド内にいる人間の視線が一斉にこちらへ注がれる。
冒険者らしいというか、顔がいかついのが多いために睨まれているようにも思える。
「おい、あいつらじゃねえか?」
「ああ。あの燃えるような赤い髪は間違えようがねえよな」
目立つもんね。勇者娘の赤い髪。
「……ってことはだ」
こちらに近づいてくる冒険者たち。やはりギルドを破壊した罪で捕まるのか。
次第に迫る筋肉。圧倒的な熱量。
そして……。
「うおぉぉぉ! おまえらやるじゃねえか!」
あれっ?
「オークキングを四人で倒したのかよ!」
「しかも、勇者の卵とはいえ新米もいいところだってのによ。どうなっているんだこいつらは!」
てっきり捕まるものかと。
「あの、ギルドの施設を破壊した俺たちを捕まえるんじゃあ……?」
「何言ってんだ。そりゃ確かにお前らが壊したんだろうがよ。それはそもそも魔物の大きさを想定できなかったギルドの連中の落ち度だ」
「それに、あんなのが街に来たらそれどころじゃなかったからな」
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つまり、セーフ?
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「すいませ~ん。通してくださいー!」
すると、冒険者たちの筋肉をかきわけて受付嬢がこちらにやってきた。
「あの、お話があるので応接間までお願いします」
どうやら呼び出しのようであるな。しかも受付ではなく個室にだ。
筋肉もとい冒険者たちが騒ぎ立てる中、受付嬢に連れられて建物の奥へ。
「では、この部屋へどうぞ」
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