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13.元魔王、睨まれる【前編】
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オークキングをギルドに送り、休憩を経てその場を発つ。
目的のキノコも思った以上の数が見つかりホクホク顔での凱旋。
ゴブライたち先導の元、オークキングとの戦いを終えて森の出口に戻ってきた。
「デハゴシュジン。モリデサガシモノアルトキ、マタヨンデ」
「その時はゴブライの名前を呼べばいいのかな」
「イエ。ボウニチカラコメレバ、ゴブライワカル」
「棒……もしかして、魔法のタクトに魔力を込めればって事?」
「ウン」
「わかった。その時はお願いするね」
ここらでゴブライたちとはお別れである。
「イツデモドウゾ」
「プギィ! ……プギィ!?」
「また来るから、それまで元気でね!」
別れを惜しんだ勇者娘にミニボアが再度捕獲されて、頬ずりをされている。
「プ、プギィ……」
もう好きにしてくれといった感じで、遠いところを見る目のミニボア。
今度森に来るときは何かおみやげでも持って来るとしよう。
「ばいば~い」
「……またね」
別れ際に勇者娘、魔女娘、スカウト娘が手を振り、それに手を振り返すゴブライ。
言葉は通じずとも、伝わる事もあるということであるな。
それからしばし歩き、街へと帰還。
いろいろあったおかげで今は夕暮れ時。
……さて、とりあえずはギルドへ行かなければな。
納品も魔物のようにギルドカードで送ることができれば楽であるのだが。
受付嬢も、「あくまでこれは戦闘効率化の一助なので」と言ってたか。
早くゆっくりしたいところではあるが、もう一踏ん張りだな。
そんな事を考えつつモリタケを納品する目的でギルドに向かっていると、なにやら街が騒がしい。
それは往来を行く人が多いせいだろうが、そのほとんどが冒険者と思える姿格好の者である。
「何かあったのかな?」
「そうよね。普段ならもっと静かなはずだもん」
「……事件?」
「誰かに訊いてみればいいんじゃないかな……おーい、そこのお兄さーん」
そう言うなり、スカウト娘が冒険者の一団に突っこんでいった。
後を追えば、顔の整った優男といった感じの冒険者が前に出てスカウト娘に応対した。
「どうしたのかなお嬢さん」
「なにか騒がしいみたいだったので、何かあったのかなって」
「ああ、そのことか。ギルドでちょっとした騒ぎがあってね。まあ騒ぎは既に収まったから、君たちは気にしなくていいと思うよ」
なにやら言い回しがおかしい気が。
スカウト娘も首を傾げている様子だ。
「……? そうなんですねー。ありがとうございます」
「いやいやお安いご用さ。それよりも、もしよかったらこの後俺たちと一緒に食事でもどうかな?」
さらに突然始まる食事の誘いに一瞬固まるスカウト娘。
「えーっと、ごめんなさい。仲間も一緒なのでご遠慮させてもらいますね」
スカウト娘がこちらをチラリ。
それを追うように優男もチラリ。ちなみにその背後の一団は鼻を伸ばし、こちらもとい、三人娘をガン見している様子。
「ああ、それならそちらの女の子たちも歓迎するよ。その少年の子守りは大変だろう? たまには楽しんでもいいと思うんだけど」
そちらの女の子とは、つまり我は入っていないのだろう。
それにしても子守りか。見た目だけであればそう見えなくもないな。
「一応聞いてみますけど」
「結構よ」
「……ごめんなさい」
「そういうことみたいです」
スカウト娘は笑みを浮かべると、こちらに近づいて我の後ろに回り込む。
それから背中に重みがかかる。後ろから腰の辺りに手を回され人形でも抱かれる感じである。
少々鬱陶しいが、オークキングのおかげで振りほどくほどの気力が沸いてこない。
「あっ!」
「……道の往来で大胆」
「こちらは四人なかよくやるので、失礼しますね~」
「そうかい。それは残念だ」
優男は笑ってそう言うが、目が笑ってない。
そんな目からの視線が我に向けられている。
優男の後ろの集団の睨みも加わって、視線が痛い。
「ほら、離れて。ギルドにいってみましょう」
「……何があったかは行けばわかるしね」
「ほら、マオくんも行こ」
さっさとこの場から退散するのが吉であるな。
頷いてから歩を進める。
さて、何があったのやら。
「いやあ、まさがギルドが急に爆発するとはな。おかげで大騒ぎだったぜ!」
すると、そんな往来を行く筋骨隆々な冒険者らしき人物の一言が聞こえてきた。
……どうも穏やかな話ではなさそうなのに、冒険者が笑い話みたいに言っているのが気になるな。
目的のキノコも思った以上の数が見つかりホクホク顔での凱旋。
ゴブライたち先導の元、オークキングとの戦いを終えて森の出口に戻ってきた。
「デハゴシュジン。モリデサガシモノアルトキ、マタヨンデ」
「その時はゴブライの名前を呼べばいいのかな」
「イエ。ボウニチカラコメレバ、ゴブライワカル」
「棒……もしかして、魔法のタクトに魔力を込めればって事?」
「ウン」
「わかった。その時はお願いするね」
ここらでゴブライたちとはお別れである。
「イツデモドウゾ」
「プギィ! ……プギィ!?」
「また来るから、それまで元気でね!」
別れを惜しんだ勇者娘にミニボアが再度捕獲されて、頬ずりをされている。
「プ、プギィ……」
もう好きにしてくれといった感じで、遠いところを見る目のミニボア。
今度森に来るときは何かおみやげでも持って来るとしよう。
「ばいば~い」
「……またね」
別れ際に勇者娘、魔女娘、スカウト娘が手を振り、それに手を振り返すゴブライ。
言葉は通じずとも、伝わる事もあるということであるな。
それからしばし歩き、街へと帰還。
いろいろあったおかげで今は夕暮れ時。
……さて、とりあえずはギルドへ行かなければな。
納品も魔物のようにギルドカードで送ることができれば楽であるのだが。
受付嬢も、「あくまでこれは戦闘効率化の一助なので」と言ってたか。
早くゆっくりしたいところではあるが、もう一踏ん張りだな。
そんな事を考えつつモリタケを納品する目的でギルドに向かっていると、なにやら街が騒がしい。
それは往来を行く人が多いせいだろうが、そのほとんどが冒険者と思える姿格好の者である。
「何かあったのかな?」
「そうよね。普段ならもっと静かなはずだもん」
「……事件?」
「誰かに訊いてみればいいんじゃないかな……おーい、そこのお兄さーん」
そう言うなり、スカウト娘が冒険者の一団に突っこんでいった。
後を追えば、顔の整った優男といった感じの冒険者が前に出てスカウト娘に応対した。
「どうしたのかなお嬢さん」
「なにか騒がしいみたいだったので、何かあったのかなって」
「ああ、そのことか。ギルドでちょっとした騒ぎがあってね。まあ騒ぎは既に収まったから、君たちは気にしなくていいと思うよ」
なにやら言い回しがおかしい気が。
スカウト娘も首を傾げている様子だ。
「……? そうなんですねー。ありがとうございます」
「いやいやお安いご用さ。それよりも、もしよかったらこの後俺たちと一緒に食事でもどうかな?」
さらに突然始まる食事の誘いに一瞬固まるスカウト娘。
「えーっと、ごめんなさい。仲間も一緒なのでご遠慮させてもらいますね」
スカウト娘がこちらをチラリ。
それを追うように優男もチラリ。ちなみにその背後の一団は鼻を伸ばし、こちらもとい、三人娘をガン見している様子。
「ああ、それならそちらの女の子たちも歓迎するよ。その少年の子守りは大変だろう? たまには楽しんでもいいと思うんだけど」
そちらの女の子とは、つまり我は入っていないのだろう。
それにしても子守りか。見た目だけであればそう見えなくもないな。
「一応聞いてみますけど」
「結構よ」
「……ごめんなさい」
「そういうことみたいです」
スカウト娘は笑みを浮かべると、こちらに近づいて我の後ろに回り込む。
それから背中に重みがかかる。後ろから腰の辺りに手を回され人形でも抱かれる感じである。
少々鬱陶しいが、オークキングのおかげで振りほどくほどの気力が沸いてこない。
「あっ!」
「……道の往来で大胆」
「こちらは四人なかよくやるので、失礼しますね~」
「そうかい。それは残念だ」
優男は笑ってそう言うが、目が笑ってない。
そんな目からの視線が我に向けられている。
優男の後ろの集団の睨みも加わって、視線が痛い。
「ほら、離れて。ギルドにいってみましょう」
「……何があったかは行けばわかるしね」
「ほら、マオくんも行こ」
さっさとこの場から退散するのが吉であるな。
頷いてから歩を進める。
さて、何があったのやら。
「いやあ、まさがギルドが急に爆発するとはな。おかげで大騒ぎだったぜ!」
すると、そんな往来を行く筋骨隆々な冒険者らしき人物の一言が聞こえてきた。
……どうも穏やかな話ではなさそうなのに、冒険者が笑い話みたいに言っているのが気になるな。
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