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魔王の未来と街の準備

06話 技名を叫ぶ(4/4)

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「収束蓮華、合わせし力は四重奏、<カルテットアロー>!」

 詠唱の後に発動した地水火風の属性と思われる、黄・青・赤・緑の四色にきらめく魔法の矢がジャイアントグレートピッグに向かう。

「フゴオォォォォォォ!」

 だがそれを向けられた本人は構わず突進を繰り出し、四色の矢を額で弾き飛ばした後に魔道士の少女に迫っていく。

「あっ……」
「くそっ、二人とも急いで馬車まで走るんだ! ここは僕がなんとか抑えてみせる!」

 少女はその場にへたり込み、それを剣士の青年がかばおうとしている。様子を見るにどうやらここまでのようだな。

 このままなら最悪全滅。どちらにしても一番前に出た剣士は死ぬか、よくても大怪我を負うことは免れないだろう。そして予想通り、獲物を持っていかれる心配はなかったようだな。

 なにより今ならば獲物を横取りしても文句は言われまい。

 外套のフードが風圧でめくれないように左手で抑えつつ、走る魔獣に向かって急降下を行う。

 狙うは剣士の男に向けて、突進の真っ最中である豚の魔獣の頭部から鼻先にかけた中心部分。斬撃や魔法が効かないのならば、その体内に相応の衝撃を与えてやればいい。まあ女戦士の打撃では威力が足りなかったようだがな。

 外套が風圧によって激しくはためく音を耳にしながら、右腕を振りかぶる。そうして魔獣に迫る刹那の時間にふと一考。そういえば奴らは攻撃する際に技名を叫んでいたか。

 そうするのが人間たちのやり方ならば、真似をして同業者だと思わせておくのが得策であろう。技名は適当に、そうだな。

「魔王拳ッ!」
「「えっ!?」」

 ドゴオオォォォォン。

 寸分違わず狙った箇所に拳が命中。ジャイアントグレートピッグは突進そのままの速度でつんのめったことにより、半回転したのちに地面に片膝をたてる形で降り立つことになった俺の上を飛ぶように通過。空中で錐揉み回転をしながら剣士の青年と魔道士の少女に迫っていく。

「えっ、ちょ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 二人は叫び声を上げるばかりで避ける余裕はなさそうに見える。

「ふぅ、仕方ないな」

 すかさず再度の空中移動で魔獣を追い越して、二人を抱える形で回収して事なきを得る。

「って何だ!?」
「もしかして飛んでる?」

 その際にフードがめくれたが、急に体が浮いたことに驚いている今の状況ならば誰も俺の顔を覚える余裕などないだろう。

 しばらく転がった後で勢いをなくして倒れた魔獣はピクリとも動かない。
 そのことからしても狙い通りに問題なく獲物を仕留められたようだ。
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