2 / 76
魔王の未来と街の準備
01話 お一人魔王様、ご案内(2/3)
しおりを挟む
「誰もいない……か」
与えられた記憶は時系列で並んでいるわけではないために、こうなった原因はわからないが、おそらくは全滅したとみていいのだろう。
実は主である魔王がいない間に引っ越しましたとか、もう魔王の配下やーめた、なんて事は……いやいや、こういう事を考えるのは良くないな。よし、今後細かいことを気にするのはやめだ。
どんな理由にせよ今の俺はお一人様魔王ということになるが、それも今この瞬間までである。配下が誰もいないのであれば作ればいいだけのこと。
「ならば魔王としての最初の仕事は決まったな」
やるべきは配下の召喚だ。
右手親指の腹を噛み、それによってできた傷口から滴る血に魔力を混ぜる。
「さあ、いでよ、新たなる配下よッ!」
紫色の血が同色の魔力と合わさることで蠢き、注ぐ魔力の量に比例して徐々に膨張していく。
やがてそれは人型へと変化し、俺にとってはじめての配下となる存在がこの場に現れた。
「魔王様、此度は私めを呼び出していただきありがとうございます。そして遅ればせながらではありますが、ご生誕おめでとうございます」
膝をついて頭を垂れた後にそう言ってきたのは、暗黒色の甲冑と、それに色を合わせた金属製の篭手と靴を身にまとっている、金色の髪を肩下まで伸ばした女だ。
「うむ。よくぞ参ったな暗黒騎士よ」
暗黒騎士は召喚できる配下の中でも最上位の魔物といえるだろう。
今の残存魔力からして同等の配下をもう一人というのはさすがに厳しい。よって残りの魔力は中位以下の配下の召喚に使いたいところだ。
「ところで魔王様、他の配下たちが見当たらないようなのですが。うっ、それにこの部屋の状態はいったい……」
新たな配下が手で鼻と口を覆いながら、辺りを見回す。
どうやら暗黒騎士も魔王城の惨状に気づいたようだな。
「探知の魔法でも確かめたのだが、この部屋に限らず城の内部は全てもぬけの殻だった。どうやら先代の魔王軍は全滅したようだぞ?」
「なんと! ということは魔王様と二人きり。うふ、うふふ、ふふ……くちゅん! ……失礼しました。ではまずは魔王軍の再編からでしょうか……くちゅん!」
なにやら興奮しだした様子の暗黒騎士が怪しく笑っている。その際にホコリを吸い込んだのか、くしゃみをして余計にホコリが舞う。
とりあえずこの部屋の惨状をどうにかしなくては、今後の魔王軍の計画を練るのにも支障がでるだろう。
「そうだな。だがその前に」
「その前に?」
「部屋の掃除からするとしよう。でなければ、そのかわいいくしゃみで他の配下に対して、暗黒騎士の威厳が保てなくなってしまうからな」
「かわ……ごほん。魔王様のお心遣い感謝いたします。……うふ、うふふふふっ、くしゅん!」
なにやら暗黒騎士が悶えはじめたが、触れない方がいい気がしなくもない。もしや配下を作る際になにか間違えたのだろうか。
……まあ細かいことを気にするのはよそうと決めたばかりだ。それよりもやれることから順番にこなしていくとしよう。
与えられた記憶は時系列で並んでいるわけではないために、こうなった原因はわからないが、おそらくは全滅したとみていいのだろう。
実は主である魔王がいない間に引っ越しましたとか、もう魔王の配下やーめた、なんて事は……いやいや、こういう事を考えるのは良くないな。よし、今後細かいことを気にするのはやめだ。
どんな理由にせよ今の俺はお一人様魔王ということになるが、それも今この瞬間までである。配下が誰もいないのであれば作ればいいだけのこと。
「ならば魔王としての最初の仕事は決まったな」
やるべきは配下の召喚だ。
右手親指の腹を噛み、それによってできた傷口から滴る血に魔力を混ぜる。
「さあ、いでよ、新たなる配下よッ!」
紫色の血が同色の魔力と合わさることで蠢き、注ぐ魔力の量に比例して徐々に膨張していく。
やがてそれは人型へと変化し、俺にとってはじめての配下となる存在がこの場に現れた。
「魔王様、此度は私めを呼び出していただきありがとうございます。そして遅ればせながらではありますが、ご生誕おめでとうございます」
膝をついて頭を垂れた後にそう言ってきたのは、暗黒色の甲冑と、それに色を合わせた金属製の篭手と靴を身にまとっている、金色の髪を肩下まで伸ばした女だ。
「うむ。よくぞ参ったな暗黒騎士よ」
暗黒騎士は召喚できる配下の中でも最上位の魔物といえるだろう。
今の残存魔力からして同等の配下をもう一人というのはさすがに厳しい。よって残りの魔力は中位以下の配下の召喚に使いたいところだ。
「ところで魔王様、他の配下たちが見当たらないようなのですが。うっ、それにこの部屋の状態はいったい……」
新たな配下が手で鼻と口を覆いながら、辺りを見回す。
どうやら暗黒騎士も魔王城の惨状に気づいたようだな。
「探知の魔法でも確かめたのだが、この部屋に限らず城の内部は全てもぬけの殻だった。どうやら先代の魔王軍は全滅したようだぞ?」
「なんと! ということは魔王様と二人きり。うふ、うふふ、ふふ……くちゅん! ……失礼しました。ではまずは魔王軍の再編からでしょうか……くちゅん!」
なにやら興奮しだした様子の暗黒騎士が怪しく笑っている。その際にホコリを吸い込んだのか、くしゃみをして余計にホコリが舞う。
とりあえずこの部屋の惨状をどうにかしなくては、今後の魔王軍の計画を練るのにも支障がでるだろう。
「そうだな。だがその前に」
「その前に?」
「部屋の掃除からするとしよう。でなければ、そのかわいいくしゃみで他の配下に対して、暗黒騎士の威厳が保てなくなってしまうからな」
「かわ……ごほん。魔王様のお心遣い感謝いたします。……うふ、うふふふふっ、くしゅん!」
なにやら暗黒騎士が悶えはじめたが、触れない方がいい気がしなくもない。もしや配下を作る際になにか間違えたのだろうか。
……まあ細かいことを気にするのはよそうと決めたばかりだ。それよりもやれることから順番にこなしていくとしよう。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる