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第2章 始めての育成を経て、危険人物として知れ渡る
58話 ユウトとマサトの災難2
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ーーぺったん……ぺったん……ぺったん……ぺったん。
ーーぺったん……ぺったん。
ーーぺったん。
俺が異世界から元の世界に戻ってきてしまってから、3週間ぐらいが過ぎた。
留置所に入って、ひたすら暇な時間と、取り調べの日々が続いている。
しかも、取り調べは難航していて進む気配がない。
やれ、あの凶器はどこで入手しただの、全身についていた血は誰のものだの。
馬鹿にされるのがオチだろうが、試しに異世界で入手したもので、血はスライムのものと、そう一度言ってみた事がある。
すると、案の定の反応だった。
それ以外に話せることもなかったため、ひたすら無駄なやり取りが続いていた。
おそらくは別の場所でマサトも同じような目にあっているんだろう。
そういえば、何故かは分からないが、俺が異世界に行っている間の、この世界での俺という存在は切り取ったかのように無くなっていた。
異世界に来る前に適当に捕まえた財布くんと共に3人で銀行に入ったはずが、異世界から戻ってきた時の剣と装備を着用した状態で銀行に入り、騒ぎを起こしたとそういう事になっていた。
意味がわからないし、考えても答えはでなさそうだから、余計なことは考えずにさっさと寝るか。
明日も早いしな。
そうしてすぐに、また次の日の朝が来た。
短い時間で朝の作業を一通りやった後の、点呼の時間。
「点呼用意!」
同室のやつらと腰を下ろす形で横に並び、いつものようにそれが始まる。
……ん?
そのはずなのに、いつまで経っても1人目のやつが番号を言わない。
何してんだ、早くしろ。
担当官にどやされるだろうが。
だが、そうなる気配もない。
ふと担当官の顔を見れば、その目が虚ろなものに変わっていて何も反応がない。
おかしいと思い、顔を傾けると両脇に並んでいるやつも同じだ。
誰もが死んだような目になっている。
確か、前にもこれと同じような事があったよな。
この世界に戻って、マサトが俺のすぐ近くに現れた時だ。
まさか、また誰かが異世界から戻ってくるのか?
もしくは……。
そうしてそれが起こった。
元の世界に戻ってきて、一気にどん底へと突き落とされた時に願ったおかげなのは知らないが、それが叶ったらしい。
俺の足元に黒い魔法陣が突如浮かび上がり、俺の体が黒い靄のようなものに包まれていく。
それを見て自然と笑いがこみ上げる。
「はっ、はははっ、あはははは。いいぞ! 今からコンティニューだ!」
そうして全身が黒に飲み込まれた次の瞬間。
前回の召喚時にも見た、薄暗い境目の見えない巨大な空間に移動していた。
「おかえりなさい勇者。2度目の召喚は初めてだったから、少し時間がかかってしまったの。ごめんなさいね」
現れたのは、長い白髪を床に付くほどに伸ばし、両目を黒の帯のようなもので覆っている女性。
1度目に来た時は声だけだったが、こんな姿をしていたのか。
「へえ、女神様はそんな姿をしていたんだ」
「……え? 私の姿が見えるの?」
「うん、前は見えなかったけど、今ははっきりと見えるかな」
「そう……。まあいいわ、すぐにあなたのお友達も連れてくるから少し待っててね」
それから、少しして人が現れた。
もちろんそれは、かつて一緒に異世界を冒険したマサトだった。
「おお……って、そこにいるのはもしかしてユウトか?」
「ああ、また俺たち一緒みたいだ。それにあれ見なよ」
「え? ほー、あれがもしかして女神……えっと、そうだアーリアか?」
「多分そ」
「アアァアアアアァァァァ!」
すると突然女神アーリアが甲高い声で絶叫し始めた。
「な、なんだ!?」
「うお!」
しばらく続いたその声だが、やがて収まると女神アーリアが口を開く。
「……あぁ、ごめんなさいね。ちょっとびっくりしてしまったの。それと勘違いしているようだけど、私はそんな名前の女神じゃないわよ」
「違うのか? 俺たちはてっきり……」
あの世界の女神と言えば、一神三徒教で崇められている女神アーリアだ。
それ以外は聞いたことがないから知らないし、前回ここに来た時は女神とだけ言ってたから、てっきりアーリアだと思っていたんだが。
「ああ。あの世界じゃ、その女神が崇められてたからな」
「確かにそうよね。基本的に私の姿は見えないはずなのだけれど、あなた達には見えているみたいだから名乗るわ。私の名前は女神オルタナ。ここにいる時はそう呼んでくれて構わないけど、有名な女神じゃなくて恥ずかしいから、あちらの世界では私の名前を口にしないでね」
女神オルタナか。
有名どころは女神アーリアだけど、そうじゃない女神もいたんだな。
「わかった。それで、女神オルタナ様。俺たちは2度目の異世界転移をされるってことでいいんだよな?」
「……そうだ。またあの世界に行けるのか!?」
「ええ、もちろん。この後きちんと神殿に送るわ。……でもその前に。あなたたち2人に少し訊きたい事があります」
よし、異世界転移確定だ。
それを聞いて俺とマサトは共にガッツポーズをする。
「おお! それに、女神様とお話か。前回とは違ってそれっぽくなってきたな!」
マサトが言うように、前回は簡単な説明とスキルを貰ったら、それであっさりと異世界に送られたからな。
「それで、訊きたい事とは何でしょうか」
ーーぺったん……ぺったん。
ーーぺったん。
俺が異世界から元の世界に戻ってきてしまってから、3週間ぐらいが過ぎた。
留置所に入って、ひたすら暇な時間と、取り調べの日々が続いている。
しかも、取り調べは難航していて進む気配がない。
やれ、あの凶器はどこで入手しただの、全身についていた血は誰のものだの。
馬鹿にされるのがオチだろうが、試しに異世界で入手したもので、血はスライムのものと、そう一度言ってみた事がある。
すると、案の定の反応だった。
それ以外に話せることもなかったため、ひたすら無駄なやり取りが続いていた。
おそらくは別の場所でマサトも同じような目にあっているんだろう。
そういえば、何故かは分からないが、俺が異世界に行っている間の、この世界での俺という存在は切り取ったかのように無くなっていた。
異世界に来る前に適当に捕まえた財布くんと共に3人で銀行に入ったはずが、異世界から戻ってきた時の剣と装備を着用した状態で銀行に入り、騒ぎを起こしたとそういう事になっていた。
意味がわからないし、考えても答えはでなさそうだから、余計なことは考えずにさっさと寝るか。
明日も早いしな。
そうしてすぐに、また次の日の朝が来た。
短い時間で朝の作業を一通りやった後の、点呼の時間。
「点呼用意!」
同室のやつらと腰を下ろす形で横に並び、いつものようにそれが始まる。
……ん?
そのはずなのに、いつまで経っても1人目のやつが番号を言わない。
何してんだ、早くしろ。
担当官にどやされるだろうが。
だが、そうなる気配もない。
ふと担当官の顔を見れば、その目が虚ろなものに変わっていて何も反応がない。
おかしいと思い、顔を傾けると両脇に並んでいるやつも同じだ。
誰もが死んだような目になっている。
確か、前にもこれと同じような事があったよな。
この世界に戻って、マサトが俺のすぐ近くに現れた時だ。
まさか、また誰かが異世界から戻ってくるのか?
もしくは……。
そうしてそれが起こった。
元の世界に戻ってきて、一気にどん底へと突き落とされた時に願ったおかげなのは知らないが、それが叶ったらしい。
俺の足元に黒い魔法陣が突如浮かび上がり、俺の体が黒い靄のようなものに包まれていく。
それを見て自然と笑いがこみ上げる。
「はっ、はははっ、あはははは。いいぞ! 今からコンティニューだ!」
そうして全身が黒に飲み込まれた次の瞬間。
前回の召喚時にも見た、薄暗い境目の見えない巨大な空間に移動していた。
「おかえりなさい勇者。2度目の召喚は初めてだったから、少し時間がかかってしまったの。ごめんなさいね」
現れたのは、長い白髪を床に付くほどに伸ばし、両目を黒の帯のようなもので覆っている女性。
1度目に来た時は声だけだったが、こんな姿をしていたのか。
「へえ、女神様はそんな姿をしていたんだ」
「……え? 私の姿が見えるの?」
「うん、前は見えなかったけど、今ははっきりと見えるかな」
「そう……。まあいいわ、すぐにあなたのお友達も連れてくるから少し待っててね」
それから、少しして人が現れた。
もちろんそれは、かつて一緒に異世界を冒険したマサトだった。
「おお……って、そこにいるのはもしかしてユウトか?」
「ああ、また俺たち一緒みたいだ。それにあれ見なよ」
「え? ほー、あれがもしかして女神……えっと、そうだアーリアか?」
「多分そ」
「アアァアアアアァァァァ!」
すると突然女神アーリアが甲高い声で絶叫し始めた。
「な、なんだ!?」
「うお!」
しばらく続いたその声だが、やがて収まると女神アーリアが口を開く。
「……あぁ、ごめんなさいね。ちょっとびっくりしてしまったの。それと勘違いしているようだけど、私はそんな名前の女神じゃないわよ」
「違うのか? 俺たちはてっきり……」
あの世界の女神と言えば、一神三徒教で崇められている女神アーリアだ。
それ以外は聞いたことがないから知らないし、前回ここに来た時は女神とだけ言ってたから、てっきりアーリアだと思っていたんだが。
「ああ。あの世界じゃ、その女神が崇められてたからな」
「確かにそうよね。基本的に私の姿は見えないはずなのだけれど、あなた達には見えているみたいだから名乗るわ。私の名前は女神オルタナ。ここにいる時はそう呼んでくれて構わないけど、有名な女神じゃなくて恥ずかしいから、あちらの世界では私の名前を口にしないでね」
女神オルタナか。
有名どころは女神アーリアだけど、そうじゃない女神もいたんだな。
「わかった。それで、女神オルタナ様。俺たちは2度目の異世界転移をされるってことでいいんだよな?」
「……そうだ。またあの世界に行けるのか!?」
「ええ、もちろん。この後きちんと神殿に送るわ。……でもその前に。あなたたち2人に少し訊きたい事があります」
よし、異世界転移確定だ。
それを聞いて俺とマサトは共にガッツポーズをする。
「おお! それに、女神様とお話か。前回とは違ってそれっぽくなってきたな!」
マサトが言うように、前回は簡単な説明とスキルを貰ったら、それであっさりと異世界に送られたからな。
「それで、訊きたい事とは何でしょうか」
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