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第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく
28話 魔王城侵攻8
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ここからは再び、クロエのテレパスでサポートを受けながら進めていく。
『それじゃあクロエ、よろしく頼むぞ』
『はーい、映像で見てるから頑張ってね。と言いたいところだけどー』
『ん? どうした……って、なるほど』
何かトラブルでも起きたのかと思ったが、目の前の光景を見て納得する。
姿を見えなくしてから1つ目の部屋に転移すると、既に決着がついていた。
何匹いるのか数えるのが面倒な程にいるオオカミたちに囲まれて、ひざをついている剣を持った勇者っぽい見た目の冒険者。
次に見えたのは、尻もちをついている弓と杖をそれぞれ手にした女性の冒険者。
そして最後に、大の字に押し倒された形で腹の上に乗られている男女の戦士。
姿を現して、これを行った主の元へ向かうが、冒険者たちは息も絶え絶えで、急に現れた俺を気にする余裕もないようだ。
「おお、来たか。こちらは既に終わったぞ!」
ここでの相手は、オオカミと人を混ぜ合わせたような見た目をしている、ウェアウルフのウルガだ。
どうやら『眷属召喚』による物量攻撃で一気に制圧したようだな。
俺が冒険者達に近付こうとしたところ、召喚されたであろうオオカミたちが道を開けてくれる。
その間を通り抜けながら、クロエに声を飛ばす。
『クロエ』
『えっとね。その中だと、ひざをついてる人とわんこに乗られてる女の人がそうだよ』
クロエの言う通り、この中で問題視されている異世界人は勇者の加護持ちと女性の戦士。
その間を通って、標的の2人を異世界送還する。
「こんなはずじゃーー」
「いやっ、なにこれーー」
残りはこちらの世界の人間と、残しておいても無駄に危害を加えるような異世界人ではないため、チサトさんのいる、先程ユウトが戦っていた部屋へと転移させた。
「ありがとうウルガ、おかげで楽ができた」
「いいってことよ。おかげで久しぶりに体を動かせたからな! お前たちもよくやった」
「「「ウォオーン!」」」
一斉に部屋のオオカミたちが鳴くと、姿が光の粒子に代わり、溶けるようにして消えていく。
転移耐性を実際に確認するために、ウルガを呼んだ時に聞いた話だと、これは呼び出した時にいた、元の場所へと帰ったということらしい。
「それじゃあ次に行ってくる」
「おう、いってこい!」
さて、次は注意が必要だったか。
『クロエ、転移するタイミングの指示を頼む』
『うん、……今なら入り口付近は安全だよ』
『わかった』
そうして『隠遁』の効果を再発動させて、2つ目の部屋へと転移する。
すると直後に熱波を浴びることになった。
それもそのはずで、次の部屋に来ていた勇者パーティーの相手は空飛ぶ赤色のドラゴン。
巨大な口から炎のブレスを吐いて、向かってくる冒険者に浴びせているのが見える。
どうやらウルガの時とは違い、残りの部屋はどちらも勇者の加護持ちが2人いるために、少々手こずっているようだ。
人数は全部で5人。
後ろに魔法使いが2人いて、魔法を放つ姿が見える。
そのすぐ前で大楯を構えた戦士が、ドラゴンの発している炎のブレスから魔法使いたちをその熱から守っている。
となると直接戦っている2人が勇者の加護持ちだな。
「行け、氷の弾丸」
「落ちろ、重力の渦」
氷の弾丸がドラゴンへと飛んでいき、同時に飛んでいる相手の真下に茶色い魔法陣が浮かんで、そこにドラゴンの巨体が地面へと吸い寄せられる。
ドラゴンの近くで戦っている勇者の加護持ちは後回しで、まずはこっちからだな。
『クロエ、後衛からやるぞ』
『それなら、楯を構えてる人がそうかな。魔法使いの子たちは部屋の方にねー』
『了解』
転移で魔法使い2人をさっきと同じ部屋へと飛ばし、即座に大楯の戦士に触れて元の世界に送り飛ばす。
「えっ? なんだこの光ーー」
姿を隠したままのおかげで、すんなりと事が運んだな。
「は?」
「あいつらどこに行った!?」
そこで前衛の2人が、部屋から他の仲間が消えていることに気づいたようだ。
すると、その瞬間を隙と見たのか、ドラゴンが身を翻して巨大な尻尾で前方にいる2人を叩く。
「ぐっ!」
「うあっ!」
それにより2人は弾かれて宙を舞ってしまう。
そこでクロエからすかさず指示を受ける。
『あとはその2人が対象者だね』
『任せろ!』
俺は飛ばされた1人へと急接近して、受け止めると同時に異世界送還を行った後、床に放る。
「今、何かに触ーー」
そうした事で、残された最後の1人が俺の存在に気づいたらしい。
「まさか、見えない敵がいるのか!?」
だが今更気づいたところでもう遅い。
更に力が増したことで速度を上げた俺は、もう1人の背後に急接近して、その背中に触れたところで元の世界へと送る。
「なんだっていうんだーー」
よし、これでここは終わりだな。
『リアさっすがー!』
『これで残りは1部屋だな』
ドラゴンを見上げつつ、そうクロエに答える。
すると、空を飛んでいたドラゴンが地上に降りて来ながらも、赤く光りだした。
それは急速に小さくなって、人型になった後で光が失せる。
現れたのは先程のドラゴンと同じ、赤い鱗を持ったドラゴニュートのドラグニルさんだ。
今見た通り、ドラゴンに変化して戦うことが可能で、攻撃の多彩さが売りらしい。
「ふぅ、少し苦戦していたので助かりましたよリアさん」
「それはなによりだったな」
「残りはあと1部屋ですかな?」
「ああ、早速だけど行ってくる。ここよりも人数多いから急がないと」
「そうですな。ワシは先に戻って、お茶でもいただきながら健闘を祈っておりますので」
そうして、いよいよ最後の部屋へ。
『それじゃあクロエ、よろしく頼むぞ』
『はーい、映像で見てるから頑張ってね。と言いたいところだけどー』
『ん? どうした……って、なるほど』
何かトラブルでも起きたのかと思ったが、目の前の光景を見て納得する。
姿を見えなくしてから1つ目の部屋に転移すると、既に決着がついていた。
何匹いるのか数えるのが面倒な程にいるオオカミたちに囲まれて、ひざをついている剣を持った勇者っぽい見た目の冒険者。
次に見えたのは、尻もちをついている弓と杖をそれぞれ手にした女性の冒険者。
そして最後に、大の字に押し倒された形で腹の上に乗られている男女の戦士。
姿を現して、これを行った主の元へ向かうが、冒険者たちは息も絶え絶えで、急に現れた俺を気にする余裕もないようだ。
「おお、来たか。こちらは既に終わったぞ!」
ここでの相手は、オオカミと人を混ぜ合わせたような見た目をしている、ウェアウルフのウルガだ。
どうやら『眷属召喚』による物量攻撃で一気に制圧したようだな。
俺が冒険者達に近付こうとしたところ、召喚されたであろうオオカミたちが道を開けてくれる。
その間を通り抜けながら、クロエに声を飛ばす。
『クロエ』
『えっとね。その中だと、ひざをついてる人とわんこに乗られてる女の人がそうだよ』
クロエの言う通り、この中で問題視されている異世界人は勇者の加護持ちと女性の戦士。
その間を通って、標的の2人を異世界送還する。
「こんなはずじゃーー」
「いやっ、なにこれーー」
残りはこちらの世界の人間と、残しておいても無駄に危害を加えるような異世界人ではないため、チサトさんのいる、先程ユウトが戦っていた部屋へと転移させた。
「ありがとうウルガ、おかげで楽ができた」
「いいってことよ。おかげで久しぶりに体を動かせたからな! お前たちもよくやった」
「「「ウォオーン!」」」
一斉に部屋のオオカミたちが鳴くと、姿が光の粒子に代わり、溶けるようにして消えていく。
転移耐性を実際に確認するために、ウルガを呼んだ時に聞いた話だと、これは呼び出した時にいた、元の場所へと帰ったということらしい。
「それじゃあ次に行ってくる」
「おう、いってこい!」
さて、次は注意が必要だったか。
『クロエ、転移するタイミングの指示を頼む』
『うん、……今なら入り口付近は安全だよ』
『わかった』
そうして『隠遁』の効果を再発動させて、2つ目の部屋へと転移する。
すると直後に熱波を浴びることになった。
それもそのはずで、次の部屋に来ていた勇者パーティーの相手は空飛ぶ赤色のドラゴン。
巨大な口から炎のブレスを吐いて、向かってくる冒険者に浴びせているのが見える。
どうやらウルガの時とは違い、残りの部屋はどちらも勇者の加護持ちが2人いるために、少々手こずっているようだ。
人数は全部で5人。
後ろに魔法使いが2人いて、魔法を放つ姿が見える。
そのすぐ前で大楯を構えた戦士が、ドラゴンの発している炎のブレスから魔法使いたちをその熱から守っている。
となると直接戦っている2人が勇者の加護持ちだな。
「行け、氷の弾丸」
「落ちろ、重力の渦」
氷の弾丸がドラゴンへと飛んでいき、同時に飛んでいる相手の真下に茶色い魔法陣が浮かんで、そこにドラゴンの巨体が地面へと吸い寄せられる。
ドラゴンの近くで戦っている勇者の加護持ちは後回しで、まずはこっちからだな。
『クロエ、後衛からやるぞ』
『それなら、楯を構えてる人がそうかな。魔法使いの子たちは部屋の方にねー』
『了解』
転移で魔法使い2人をさっきと同じ部屋へと飛ばし、即座に大楯の戦士に触れて元の世界に送り飛ばす。
「えっ? なんだこの光ーー」
姿を隠したままのおかげで、すんなりと事が運んだな。
「は?」
「あいつらどこに行った!?」
そこで前衛の2人が、部屋から他の仲間が消えていることに気づいたようだ。
すると、その瞬間を隙と見たのか、ドラゴンが身を翻して巨大な尻尾で前方にいる2人を叩く。
「ぐっ!」
「うあっ!」
それにより2人は弾かれて宙を舞ってしまう。
そこでクロエからすかさず指示を受ける。
『あとはその2人が対象者だね』
『任せろ!』
俺は飛ばされた1人へと急接近して、受け止めると同時に異世界送還を行った後、床に放る。
「今、何かに触ーー」
そうした事で、残された最後の1人が俺の存在に気づいたらしい。
「まさか、見えない敵がいるのか!?」
だが今更気づいたところでもう遅い。
更に力が増したことで速度を上げた俺は、もう1人の背後に急接近して、その背中に触れたところで元の世界へと送る。
「なんだっていうんだーー」
よし、これでここは終わりだな。
『リアさっすがー!』
『これで残りは1部屋だな』
ドラゴンを見上げつつ、そうクロエに答える。
すると、空を飛んでいたドラゴンが地上に降りて来ながらも、赤く光りだした。
それは急速に小さくなって、人型になった後で光が失せる。
現れたのは先程のドラゴンと同じ、赤い鱗を持ったドラゴニュートのドラグニルさんだ。
今見た通り、ドラゴンに変化して戦うことが可能で、攻撃の多彩さが売りらしい。
「ふぅ、少し苦戦していたので助かりましたよリアさん」
「それはなによりだったな」
「残りはあと1部屋ですかな?」
「ああ、早速だけど行ってくる。ここよりも人数多いから急がないと」
「そうですな。ワシは先に戻って、お茶でもいただきながら健闘を祈っておりますので」
そうして、いよいよ最後の部屋へ。
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