11 / 63
第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく
11話 欲深な異世界人に決別を2
しおりを挟む
転移で移動してきたのは、解析室と同じように映像を映し出す画面が置いてある部屋だった。
しかし、解析室にあるような機械は無く、画面もシンプルな長方形の厚みのある透明の板が何個か壁に立てかけられているだけのようだ。
そして、その透明の板にはダンジョンの入り口から通路、各部屋の内部と思われる風景が映し出されている。
「無事についたのか? なんだかダンジョンって言って良いのかわからない部屋だが」
あとは不思議なことに、この部屋は外に出るための通路や扉がない密室だった。
「うん、そうだよー。ここは監視部屋で、入ってくる冒険者とあまりにも実力差がある子たちに、逃げられるように指示を出したりする場所かな」
「こんな部屋があったんだな」
「みんなが少しでも生き残るためにね」
なるほどな。
ダンジョンでは手強い敵ばかりと出会うと言われてきたが、そういう仕掛けがあったからなのか。
通りでユウト率いる勇者パーティーでダンジョンに潜った時は、ボスフロアまで素通りできていたわけだ……。
「よくぞいらっしゃった客人。私は霧の魔物スモッグ、この隠者のダンジョンの守護を務めさせて貰っている。クロエ様もお久しゅうございます」
「スモッグさんこんにちはー」
そして、スモッグと名乗ってきた魔物は黒い人型をしてはいるが、本人の言うように、薄い霧状の体の持ち主のようで、その背後が透けて見える。
「リアだ、よろしく頼む。ところで、ダンジョンの守護ってことは……」
「うん、スモッグさんはここ、隠者のダンジョンのボスなんだよ」
一緒に転移してきたギミックミミックやブラッディスライムとは違って、このように魔物でも会話の出来る種類も存在する。
俺の知る限りではあるが、ダンジョンボスは全て言葉を話す。
そして、それらは倒した後で例外なく一定の時間を経て復活を果たす。
そうなると結界を消すための仕掛けが解除されてしまうというのは有名な話だ。
「現在はダンジョン内部に冒険者はいないため、罠は解除しておいた。安心して内部を見て回るとよい」
するとスモッグさんが何かしたのか、壁の一つが音を立てて、通路が現れる。
「ありがと、早速見て回ろっか!」
「ああ、行こうか」
そこを2人と2体で通って外に出る。
出口はどうやらボスフロアの脇に通じていたようで、広間に出た。
奥に結界を解除するための仕掛けが置いてあるから、ボスフロアであることは一目でわかる。
部屋の中には霧が立ち込めていて、ボスが戦うのに有利な場所となっているようだな。
「こんなところに隠し通路があったのか」
「これなら、わざわざ冒険者が来るまで待ち構えなくても済むからねー」
確かに。
いつもボスフロアに来ると、決まってボスが待っていたぞという雰囲気を見せているが、毎回そんな事をしていたら待ちくたびれそうだしな。
そうそう、毎回と言えばだ。
「そういえばボスって何で復活するんだ?」
ダンジョンの不思議の1つだな。
他には何故か復活する宝箱とか、消えたり現れたりする部屋とかもあったよな。
ちょうどいい機会だし、知っておきたい。
「えっとねー、それは冒険者が戦うボスは偽物っていうのかな。本体じゃないの」
「本体じゃない?」
「うん、生き物で言う心臓が魔王城にあって、その他の部分が倒されても時間はかかるけど、少しすると復活できるんだよー」
「そういうことだったのか」
それでボスはいくら倒しても復活するのか。
つまりは弱い魔物は戦闘を避けつつ、復活できるボスが冒険者の相手をすることで被害を最小限にできるということか。
どうも魔王軍側は人間側も含めて、極力双方に被害を出さないようにしているみたいだな。
それから俺たちはダンジョン内部を練り歩き、中盤あたりにある部屋に当たりを付けて、ギミックミミックとブラッディスライムと共に、当日の予行演習を行った。
ーーそして2日後、目的の異世界人を含む冒険者パーティーが隠者のダンジョンに到着。
彼らがダンジョン中盤に差し掛かったところで、俺たちは配置について作戦を開始する。
俺は息を思い切り吸い込んだ後で、予め決めていた言葉を大声に乗せて、ダンジョン内に響かせた。
「うわああああ! 誰か助けてくれええええ!」
しかし、解析室にあるような機械は無く、画面もシンプルな長方形の厚みのある透明の板が何個か壁に立てかけられているだけのようだ。
そして、その透明の板にはダンジョンの入り口から通路、各部屋の内部と思われる風景が映し出されている。
「無事についたのか? なんだかダンジョンって言って良いのかわからない部屋だが」
あとは不思議なことに、この部屋は外に出るための通路や扉がない密室だった。
「うん、そうだよー。ここは監視部屋で、入ってくる冒険者とあまりにも実力差がある子たちに、逃げられるように指示を出したりする場所かな」
「こんな部屋があったんだな」
「みんなが少しでも生き残るためにね」
なるほどな。
ダンジョンでは手強い敵ばかりと出会うと言われてきたが、そういう仕掛けがあったからなのか。
通りでユウト率いる勇者パーティーでダンジョンに潜った時は、ボスフロアまで素通りできていたわけだ……。
「よくぞいらっしゃった客人。私は霧の魔物スモッグ、この隠者のダンジョンの守護を務めさせて貰っている。クロエ様もお久しゅうございます」
「スモッグさんこんにちはー」
そして、スモッグと名乗ってきた魔物は黒い人型をしてはいるが、本人の言うように、薄い霧状の体の持ち主のようで、その背後が透けて見える。
「リアだ、よろしく頼む。ところで、ダンジョンの守護ってことは……」
「うん、スモッグさんはここ、隠者のダンジョンのボスなんだよ」
一緒に転移してきたギミックミミックやブラッディスライムとは違って、このように魔物でも会話の出来る種類も存在する。
俺の知る限りではあるが、ダンジョンボスは全て言葉を話す。
そして、それらは倒した後で例外なく一定の時間を経て復活を果たす。
そうなると結界を消すための仕掛けが解除されてしまうというのは有名な話だ。
「現在はダンジョン内部に冒険者はいないため、罠は解除しておいた。安心して内部を見て回るとよい」
するとスモッグさんが何かしたのか、壁の一つが音を立てて、通路が現れる。
「ありがと、早速見て回ろっか!」
「ああ、行こうか」
そこを2人と2体で通って外に出る。
出口はどうやらボスフロアの脇に通じていたようで、広間に出た。
奥に結界を解除するための仕掛けが置いてあるから、ボスフロアであることは一目でわかる。
部屋の中には霧が立ち込めていて、ボスが戦うのに有利な場所となっているようだな。
「こんなところに隠し通路があったのか」
「これなら、わざわざ冒険者が来るまで待ち構えなくても済むからねー」
確かに。
いつもボスフロアに来ると、決まってボスが待っていたぞという雰囲気を見せているが、毎回そんな事をしていたら待ちくたびれそうだしな。
そうそう、毎回と言えばだ。
「そういえばボスって何で復活するんだ?」
ダンジョンの不思議の1つだな。
他には何故か復活する宝箱とか、消えたり現れたりする部屋とかもあったよな。
ちょうどいい機会だし、知っておきたい。
「えっとねー、それは冒険者が戦うボスは偽物っていうのかな。本体じゃないの」
「本体じゃない?」
「うん、生き物で言う心臓が魔王城にあって、その他の部分が倒されても時間はかかるけど、少しすると復活できるんだよー」
「そういうことだったのか」
それでボスはいくら倒しても復活するのか。
つまりは弱い魔物は戦闘を避けつつ、復活できるボスが冒険者の相手をすることで被害を最小限にできるということか。
どうも魔王軍側は人間側も含めて、極力双方に被害を出さないようにしているみたいだな。
それから俺たちはダンジョン内部を練り歩き、中盤あたりにある部屋に当たりを付けて、ギミックミミックとブラッディスライムと共に、当日の予行演習を行った。
ーーそして2日後、目的の異世界人を含む冒険者パーティーが隠者のダンジョンに到着。
彼らがダンジョン中盤に差し掛かったところで、俺たちは配置について作戦を開始する。
俺は息を思い切り吸い込んだ後で、予め決めていた言葉を大声に乗せて、ダンジョン内に響かせた。
「うわああああ! 誰か助けてくれええええ!」
0
お気に入りに追加
1,426
あなたにおすすめの小説
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
Archaic Almanac 群雄流星群
しゅーげつ
ファンタジー
【Remarks】
人々の歴史を残したいと、漠然と心に秘めた思いを初めて人に打ち明けた――あの日、
私はまだ若く、様々な可能性に満ち溢れていた。
職を辞し各地を巡り、そして自身のルーツに辿り着き、河畔の草庵で羽筆を手に取るまでの幾年月、
数多の人と出会い、別れ、交わり、違えて、やがて祖国は無くなった。
人との関わりを極限まで減らし、多くの部下を扱う立場にありながら、
まるで小鳥のように流れていく積日を傍らから景色として眺めていた、
あの未熟でちっぽけだった私の後の人生を、
強く儚く淡く濃く、輝く星々は眩むほどに魅了し、決定付けた。
王国の興亡を、史書では無く物語として綴る決心をしたのは、
ひとえにその輝きが放つ熱に当てられたからだが、中心にこの人を置いた理由は今でも分からない。
その人は《リコ》といった。
旧王都フランシアの南に広がるレインフォール大森林の奥地で生を受けたという彼の人物は、
大瀑布から供給される清水、肥沃する大地と大樹の守護に抱かれ、
自然を朋輩に、動物たちを先達に幼少期を過ごしたという。
森の奥、名も無き湖に鎮座する石柱を――ただ見守る日々を。
全てを遡り縁を紐解くと、緩やかに死んでいく生を打ち破った、あの時に帰結するのだろう。
数多の群星が輝きを増し、命を燃やし、互いに心を削り合う、騒乱の時代が幕を開けた初夏。
だからこそ私は、この人を物語の冒頭に据えた。
リコ・ヴァレンティ、後のミッドランド初代皇帝、その人である。
【Notes】
異世界やゲーム物、転生でも転移でもありません。
クロスオーバーに挑戦し数多のキャラクターが活躍する
そんなリアルファンタジーを目指しているので、あくまで現世の延長線上の物語です。
以前キャラ文芸として応募した物の続編更新ですが、ファンタジーカテゴリに変更してます。
※更新は不定期ですが半年から1年の間に1章進むペースで書いてます。
※5000文字で統一しています。およそ5ページです。
※文字数を揃えていますので、表示は(小)を推奨します。
※挿絵にAI画像を使い始めましたが、あくまでイメージ画像としてです。
-読み方-
Archaic Almanac (アルカイクxアルマナク) ぐんゆうりゅうせいぐん
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる