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第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく

11話 欲深な異世界人に決別を2

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 転移で移動してきたのは、解析室と同じように映像を映し出す画面が置いてある部屋だった。

 しかし、解析室にあるような機械は無く、画面もシンプルな長方形の厚みのある透明の板が何個か壁に立てかけられているだけのようだ。

 そして、その透明の板にはダンジョンの入り口から通路、各部屋の内部と思われる風景が映し出されている。

「無事についたのか? なんだかダンジョンって言って良いのかわからない部屋だが」

 あとは不思議なことに、この部屋は外に出るための通路や扉がない密室だった。

「うん、そうだよー。ここは監視部屋で、入ってくる冒険者とあまりにも実力差がある子たちに、逃げられるように指示を出したりする場所かな」

「こんな部屋があったんだな」

「みんなが少しでも生き残るためにね」

 なるほどな。
 ダンジョンでは手強い敵ばかりと出会うと言われてきたが、そういう仕掛けがあったからなのか。
 通りでユウト率いる勇者パーティーでダンジョンに潜った時は、ボスフロアまで素通りできていたわけだ……。

「よくぞいらっしゃった客人。私は霧の魔物スモッグ、この隠者のダンジョンの守護を務めさせて貰っている。クロエ様もお久しゅうございます」

「スモッグさんこんにちはー」

 そして、スモッグと名乗ってきた魔物は黒い人型をしてはいるが、本人の言うように、薄い霧状の体の持ち主のようで、その背後が透けて見える。

「リアだ、よろしく頼む。ところで、ダンジョンの守護ってことは……」

「うん、スモッグさんはここ、隠者のダンジョンのボスなんだよ」

 一緒に転移してきたギミックミミックやブラッディスライムとは違って、このように魔物でも会話の出来る種類も存在する。
 俺の知る限りではあるが、ダンジョンボスは全て言葉を話す。

 そして、それらは倒した後で例外なく一定の時間を経て復活を果たす。
 そうなると結界を消すための仕掛けが解除されてしまうというのは有名な話だ。

「現在はダンジョン内部に冒険者はいないため、罠は解除しておいた。安心して内部を見て回るとよい」

 するとスモッグさんが何かしたのか、壁の一つが音を立てて、通路が現れる。

「ありがと、早速見て回ろっか!」

「ああ、行こうか」

 そこを2人と2体で通って外に出る。
 出口はどうやらボスフロアの脇に通じていたようで、広間に出た。

 奥に結界を解除するための仕掛けが置いてあるから、ボスフロアであることは一目でわかる。
 部屋の中には霧が立ち込めていて、ボスが戦うのに有利な場所となっているようだな。

「こんなところに隠し通路があったのか」

「これなら、わざわざ冒険者が来るまで待ち構えなくても済むからねー」

 確かに。
 いつもボスフロアに来ると、決まってボスが待っていたぞという雰囲気を見せているが、毎回そんな事をしていたら待ちくたびれそうだしな。
 そうそう、毎回と言えばだ。

「そういえばボスって何で復活するんだ?」

 ダンジョンの不思議の1つだな。
 他には何故か復活する宝箱とか、消えたり現れたりする部屋とかもあったよな。
 ちょうどいい機会だし、知っておきたい。

「えっとねー、それは冒険者が戦うボスは偽物っていうのかな。本体じゃないの」

「本体じゃない?」

「うん、生き物で言う心臓が魔王城にあって、その他の部分が倒されても時間はかかるけど、少しすると復活できるんだよー」

「そういうことだったのか」

 それでボスはいくら倒しても復活するのか。
 つまりは弱い魔物は戦闘を避けつつ、復活できるボスが冒険者の相手をすることで被害を最小限にできるということか。

 どうも魔王軍側は人間側も含めて、極力双方に被害を出さないようにしているみたいだな。

 それから俺たちはダンジョン内部を練り歩き、中盤あたりにある部屋に当たりを付けて、ギミックミミックとブラッディスライムと共に、当日の予行演習を行った。

 ーーそして2日後、目的の異世界人を含む冒険者パーティーが隠者のダンジョンに到着。

 彼らがダンジョン中盤に差し掛かったところで、俺たちは配置について作戦を開始する。
 俺は息を思い切り吸い込んだ後で、予め決めていた言葉を大声に乗せて、ダンジョン内に響かせた。

「うわああああ! 誰か助けてくれええええ!」
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