8 / 63
第1章 育成準備につき、裏で密かに動いていく
8話 追放と新たな出会い6
しおりを挟む
ーーこれは少し前の記憶。
パーティー脱退を言い渡されて、ユウトに話があると酒場の裏手に同行した時の事だ。
「それで、話ってなんだ」
2人きりということで、どうやらユウトは他のパーティーメンバーに聞かせたくない話があるようだ。
「少し確認したいことがあってね」
「確認したいこと?」
今さら何を確認するというのだろうか。
「どうも気になっててさ。単刀直入に聞くけど、リアさ、戦闘の時にいつもサンドバッグ共を高所から落として潰してるって、あれ嘘だろ?」
それを聞いた瞬間、ドクンと心臓の鼓動が早まった。
落ち着け。
確証はないだろうから、ハッタリだろう。
それにしても、敵とはいえ相手のことをサンドバッグ呼ばわりとは、ユウトにとって彼らはそんな認識だったのか……。
「ちゃんと倒してるが、どうしてそう思う?」
「それは簡単だよ。あれだけ倒して経験値を稼いでいるはずなのに、一向に強くなった気配を見せないからさ」
それはそうだ。
実際に倒してないんだから強くなるはずもない。
まあ強さが視認できるわけでもないし、適当に誤魔化すことにする。
「俺は転移能力者だからな。少しずつだが転移の能力が向上しているぞ」
「ふ~ん。まあ、リアがそう言うならそれでいいんだけどね。仮に本当に逃していたのだとしても、その分だけ後からじ~っくりとお楽しみの回数が増えるってだけだからさ」
やっぱりこいつは気に食わない。
それに、これを聞きたいがために俺と話をしたかったのか?
もしそうなら不快なだけだし、さっさと切り上げてしまいたい。
「話はそれだけか。それなら俺はもう行くぞ」
しかし、そうではなかったらしい。
ユウトに回り込まれて、道を塞がれる。
「いやいや、今のはちょっと気になることを聞いただけ。言っておきたかったのはさ、スノーちゃんについてだ」
スノーについて?
「スノーがどうかしたのか」
こいつらの元に残しておきたくはないが、スキルの特性のおかげで彼女が何かされるということは、まずないだろう。
「スノーちゃんはさ、『聖女』の特性で俺たちがスノーちゃんの体に手を出したりなんかすると、汚れたとみなされて全ての力を失うのは知ってると思うけど」
そう。スノーは回復に結界、それに加えて光属性の魔法を1人で使う事が出来る貴重な存在。
いくら指定召喚でも、これだけのスキルを探し出すことは難しいとされている。
その代わりにユウトが言った通りの制約があって、それを破るとスキルは失われる。
そんな分かりきったことを、なぜ今さらになって話すのか。
「何がいいたい」
「いやね。ここだけの話なんだけど、1週間後に魔王城への侵攻が決まった」
移動手段も確保して、俺に言う前に魔王城に攻め込むところまで決まっていたんだな……。
まあ、どちらにしてもパーティーを外された俺が行くことはないのだろうが。
「それも済んで、残党狩りを終わらせるとどうなるか」
途端にユウトが下卑たような、嫌な笑いを見せてくる。
「世界は平和になって、ご褒美タイムだ! 『聖女』もお役ごめんで、その後は美味しく俺たちがスノーちゃんをいただくよ!」
その意味を察して、頭に血が上った俺はユウトに掴みかかるが、勇者に敵うはずもなくーー
この後も、地に伏した俺にスノーをどうするのか下衆な言葉を並べていたが、思い出したくもない。
だが、クロエのおかげで目が覚めた。
魔王軍に付いた以上、容赦をするつもりはない。
「そういうことで、今から1週間前後のところで魔王城に勇者たちが来るみたいです」
そうして俺は魔王城の玉座の間にて、玉座に座る魔王様、アギトさんに魔王城侵攻の話をしていた。
パーティー脱退を言い渡されて、ユウトに話があると酒場の裏手に同行した時の事だ。
「それで、話ってなんだ」
2人きりということで、どうやらユウトは他のパーティーメンバーに聞かせたくない話があるようだ。
「少し確認したいことがあってね」
「確認したいこと?」
今さら何を確認するというのだろうか。
「どうも気になっててさ。単刀直入に聞くけど、リアさ、戦闘の時にいつもサンドバッグ共を高所から落として潰してるって、あれ嘘だろ?」
それを聞いた瞬間、ドクンと心臓の鼓動が早まった。
落ち着け。
確証はないだろうから、ハッタリだろう。
それにしても、敵とはいえ相手のことをサンドバッグ呼ばわりとは、ユウトにとって彼らはそんな認識だったのか……。
「ちゃんと倒してるが、どうしてそう思う?」
「それは簡単だよ。あれだけ倒して経験値を稼いでいるはずなのに、一向に強くなった気配を見せないからさ」
それはそうだ。
実際に倒してないんだから強くなるはずもない。
まあ強さが視認できるわけでもないし、適当に誤魔化すことにする。
「俺は転移能力者だからな。少しずつだが転移の能力が向上しているぞ」
「ふ~ん。まあ、リアがそう言うならそれでいいんだけどね。仮に本当に逃していたのだとしても、その分だけ後からじ~っくりとお楽しみの回数が増えるってだけだからさ」
やっぱりこいつは気に食わない。
それに、これを聞きたいがために俺と話をしたかったのか?
もしそうなら不快なだけだし、さっさと切り上げてしまいたい。
「話はそれだけか。それなら俺はもう行くぞ」
しかし、そうではなかったらしい。
ユウトに回り込まれて、道を塞がれる。
「いやいや、今のはちょっと気になることを聞いただけ。言っておきたかったのはさ、スノーちゃんについてだ」
スノーについて?
「スノーがどうかしたのか」
こいつらの元に残しておきたくはないが、スキルの特性のおかげで彼女が何かされるということは、まずないだろう。
「スノーちゃんはさ、『聖女』の特性で俺たちがスノーちゃんの体に手を出したりなんかすると、汚れたとみなされて全ての力を失うのは知ってると思うけど」
そう。スノーは回復に結界、それに加えて光属性の魔法を1人で使う事が出来る貴重な存在。
いくら指定召喚でも、これだけのスキルを探し出すことは難しいとされている。
その代わりにユウトが言った通りの制約があって、それを破るとスキルは失われる。
そんな分かりきったことを、なぜ今さらになって話すのか。
「何がいいたい」
「いやね。ここだけの話なんだけど、1週間後に魔王城への侵攻が決まった」
移動手段も確保して、俺に言う前に魔王城に攻め込むところまで決まっていたんだな……。
まあ、どちらにしてもパーティーを外された俺が行くことはないのだろうが。
「それも済んで、残党狩りを終わらせるとどうなるか」
途端にユウトが下卑たような、嫌な笑いを見せてくる。
「世界は平和になって、ご褒美タイムだ! 『聖女』もお役ごめんで、その後は美味しく俺たちがスノーちゃんをいただくよ!」
その意味を察して、頭に血が上った俺はユウトに掴みかかるが、勇者に敵うはずもなくーー
この後も、地に伏した俺にスノーをどうするのか下衆な言葉を並べていたが、思い出したくもない。
だが、クロエのおかげで目が覚めた。
魔王軍に付いた以上、容赦をするつもりはない。
「そういうことで、今から1週間前後のところで魔王城に勇者たちが来るみたいです」
そうして俺は魔王城の玉座の間にて、玉座に座る魔王様、アギトさんに魔王城侵攻の話をしていた。
0
お気に入りに追加
1,427
あなたにおすすめの小説
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
救世の魔法使い
菅原
ファンタジー
賢者に憧れる少年が、大魔法使いを目指し頑張るお話です。
今後の為に感想、ご意見お待ちしています。
作品について―
この作品は、『臆病者の弓使い』と同じ世界観で書いたシリーズ物となります。
あちらを読んでいなくても問題ないように書いたつもりですが、そちらも読んで頂けたら嬉しいです。
※主人公が不当な扱いを受けます。
苦手な人はご注意ください。
※全編シリアスでお送りしております。ギャグ回といった物は皆無ですのでご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる