異世界転移ダイヤル115

アゲハ

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第1章 シェードシティ~隕石が堕ちてくる国~

#04 決戦前夜の決断

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夜6時。もうすぐ、スイトがやって来る。
僕は、店主と誕生日パーティーの準備をしていた。

準備しているうちに、スイトの友達と思われる人々が数人やってきた。
決戦前夜の誕生日パーティーがもうすぐ、始まる。
スイトが来たら、まずはクラッカーを発射し、歌を歌う。
そう確認しているうちに、スイトがやってきた。
クラッカーの音が、鳴り響いた。

パカッ!!!

みんな「せーの、ハッピバースデートゥーユー♪、ハッピバースデートゥーユー♪、ハッピバースデーディアスイト♪、ハッピバースデートゥーユー♪19歳の誕生日、おめでとうー!!」

スイト「わー、みんなありがとう!カナルさんも店長も......、本当にみんなありがとう!」

店主「ケーキもあるぜ。」

スイト「美味しそう!早く食べさせて。」

カナルは心の中で思った。
そのケーキ、虫をこねてくっつけて作ってるのに......。
美味しそうってないと思う。

スイト「美味しい!カナルさんも一緒に食べましょうよ!」

カナル「あ、あ......、僕は全然いいですよ。皆さんで美味しく食べてもらったら。」

スイト「いやいや、食べて下さい。とても美味しいですから、ね?」

笑って「ね?」って言ったのが可愛すぎる......。
これでは断れない。仕方ない、一口だけ食べてみよう......。

カナル「本当に美味しい。ほんのり香る花のような匂いと酸味と甘味がマッチし合ってる......。」

スイト「ですよね!やっぱりー!」

そんな感じでその後も盛り上がり、店長が用意してくれていた料理、他にもみんなで喋っていたりしていると、いつの間にかパーティーは深夜まで続いたという。

そして、他の人が帰り、店長とカナルとスイトだけになった時のこと......。

スイト「私も片付け手伝いますよ。」

カナル「いやいや、いいですよ。今日の主役は休んどいて下さい。」

スイト「そんなの悪いですよ。」

こんな他愛のない会話を二人でしていると、店長がカナルに素朴な疑問を投げつけてきた。

店主「なあ、旅人。何でこの国に来ようと思ったんだ?」

その質問に、カナルは一瞬、口をつぶった。
誕生日パーティーのこのいい雰囲気の中、隕石のことを話していいものなのか、と。
その前に、隕石が来るなんてこの町では予測もされていない。
予測の技術がないだけかもしれないが、カナルは本当に隕石が落ちて来るのか少しばかり疑っていた。

だが、カナルは隕石のことを話すことにした。
もし、この町に何かあったとしても、店長やスイトや、この町の人々の命だけは助かってほしいから、命さえあれば、どうにかなるはずなんだ。

カナル「明日の昼、この町に隕石が落ちてくるらしいです。僕は、その隕石を止めに来ました。」

スイト&店主「は?」

開いた口がふさがらないとはこういうことなのだろうか、と思わせるほどの口の開きようである。
しかし、きっとこれが真実、のはず。

店主「そ、それは本当なのか?というか、あんたどこから来たんだ!?」

カナル「一言で言いますと、隕石の話は、真実です。僕は、遠い、遠い、国からやって来ました。そして......。」

カナルはその後、この国に来た目的を全て話した。
隕石がこの国にやって来ていること、カナルがLv300なこと、そしてその隕石が明日落ちてくること......。

いや、厳密に言えば全てではない。
異世界から来たことだけは歴史が変わるので伏せておいて、遠い国からやって来た、ということにしておいた。

結論から言うと、全て受け入れてもらえた。
こんな隕石が落ちてくるとかいうこんなバカな話、したって信じてもらえないものだと思っていたが、この国の人々はみんな優しかった。
優しかったからこそ、良かったんだ。

だが、一つだけ、大きな問題があった。
この国の剣士や武士の人々はレベルが全体的に低かったのだ。
カナルはLv300だが、この国ではLv100を越えている人が一人もいないのだ。
ということは、実質カナルが一人で隕石を止めなければならない......。

決戦前夜。お店の二階のベッド。
カナルは一人で思い悩んでいた。

カナル「いやいや、僕一人で隕石を!?んなの無理に決まってるだろ......。」

そんなとき、声をかけてくれたのは、あの人工知能だけだった。

エターナル「諦めないで下さい、カナルさん。あなたはLv300ですし、破壊なんていうチートスキルまで覚えているんです。無理な訳がないんです。頑張って下さい!」

カナル「......そう、だよな。」

しかし、カナルは乗り気ではなかった。


心。


特に取り柄もない、ただの20歳会社員が死んでもないのに急に異世界に連れてこられて、急に国を救ってくれって言われても。
アニメやマンガだったら異世界に転移やら転生してスライムになったとか、ドラゴン育てたとか言ってるけど、それとこれは全然違うから。

そんな主人公、凄いと思うよ。
だって異世界に飛ばされても一切戸惑っている姿を見せないから。
僕は最初から戸惑って、何も出来なくて。
隕石を止めろって言われても、心の準備がまだ何も出来ていない。

それでも、止めなければ、店長に、スイトや、町の人たちがみんな死んじゃう......。
というか、悪ければ僕も死ぬかもしれない......。

そこでやっとカナルは決断した。

やっぱり、みんなのためにも、僕のためにも、隕石は止めなければいけない。
必ず、必ず止めなければ。
僕にはスキル破壊があるんだ。

そのためにも、眠いしもう今日は寝よう。

そして翌朝......。

to be continedーーー。
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