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第一部ヴァルキュリャ編 第一章 ベルゲン
赤い髪のアイツ
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「知らされていないのであれば話すことはないと言われた。そのことについてオージンと話したければ、事実を得てからにせよと」
「事実って……」
「まぁ、当然だ。ヴァルキュリャからオージンに何かを請うなど、出来る立場ではない。そして、その日、オージンはヴァルキュリャを魔物との戦いから解放し、人か神族かの選択をもたらした」
「その日だったんですか!」
「あぁ、すぐに姉妹達は戦線からエイケン家へ集まり、皆ヴァルホルへ帰るという選択をした。……さぁ、次は何が知りたい?」
やはり何か違和感が残る。
たが、俺は質問を続けることにした。
「オージンがアセウスにかけた封印のことは何か知っていますか? 俺ら、……あんまり大きな声で言わない方が良いのかもしれないけど、神の血の力を解放したいんです」
シグルは眉を寄せると、目を伏せた。
「知らぬ。私が見た時は、既にただの無力な赤子だった。力の片鱗も感じなかったのだ、封印の魔力なんてなおのこと。魔剣が醸し出す魔力は身も凍るほどであったがな」
「あの魔剣は強いのですか?」
「まごうことなき神器だ。最高のものオージンにふさわしい、破格の魔力を秘めている。何百年という月日を経て、今はその魔力は深い眠りに落ちているようだが」
「それって、今はしょぼいってことですか?」
「あれを見て神器と思うものがどれほどいようか。在りし日は鞘の中にあっても神器であることを隠せぬほどに、もっと殺気だっていた。まるで別物だ」
眉をしかめたまま冷笑するシグルが、なんだか悔しい。
あの魔剣はアセウスの、最高で大切な腹心なのだ。
そしてつまり、俺にとっても。
本来の力が失われてしまった神の剣。
ドリストーンを手に入れて、グランとリオンを本気にさせにゃあいかんのか?
全然やりますけど!
取り戻しますよ、勇者の剣!!
俺は伝説のコンピューターRPGゲームのキャラクターみたいに、握りこぶしを作った、頭の中で。
テテッテテ テテッテテ テッレ!
「お前も血の契約を交わしているのだろう? エルドフィン・ヤール」
ドキリッ
心臓をひと跳ねさせた俺は、シグルを見た。
シグルの透けた姿、冷ややかな顔の向こうから、驚いた顔をしたソグンが俺を見ていた。
ヴァルキュリャ内でもそんなに格が違うのか。
三番目のお気に入りは何でもお見通しってか?
「そんなことも、分かるのですか?」
「まぁな」
俺はなんと言ったら良いのか分からず、沈黙してしまった。
血の契約を知っているのは、アセウスと、多分察しているだろうアセウスの親父さんだけなのだ。
「どうした。急にだんまりか?」
「だって……」
俺にだって分かる。
エイケン家の魔剣とエルドフィンの血の契約なんて、それこそ誰にも認められないはずだ。知られていい話じゃない。
「そう警戒するな。咎めている訳ではない。継承者が決めたことなのだろう? ただ、魔剣が変わり果てた理由になり得るかと思ってな」
「?! 俺が契約したから?」
「違う。血の契約があまりにも多く成され過ぎているからだ。魔剣は人間の血でがんじがらめだ」
シグルの哀れむような目が印象的だった。
俺にじゃぁない。
一体誰に、そんな風に哀れんだ目を向けているのだろう。
視線の先には何もないのに。
え? 血の契約ってなんの話か知らねーぞって?
そりゃそうだ。話したことねぇもん。
説明しろって?
……しょうがねぇなぁ。
ざっくり話してやるから、まぁ聞けや!
アセウスの魔剣。
それは、エイケン家に代々伝わる家宝とされる剣だ。
剣自体が魔力を持っていて、使い手として認められた者の呪文で魔法が発現する。
呪文は攻撃や防御など、単純なものが両手の指で数えられるほど、あるだけ。
使い手には代々当主が選ばれるから、呪文もエイケン家の当主から当主へと剣と共に伝えられているのだという。
ほら、あれだ。
記憶にあるだろ?
《守りし槍》! とか、《聳えし槍》! とか、あれさ。
同時に、剣は使い手に加護をもたらす。
呪文を唱えなくとも、剣に触れるものが居なくとも、剣そのものが使い手を危機から守ってくれるという加護だ。
どちらかというと、この加護の方が重要視されていて、魔剣の代名詞のように語られていると聞いた。
そりゃそうだ、魔法の剣が守ってくれるなんて、特別過ぎてすげぇー上がる。
魔剣の持つこの二つの力は、使い手だけに限定されたものだ。
使い手に選ばれた代々の当主以外には、ただの剣に過ぎない。
……のだが、実は例外があるんだ。
それが、血の契約だ。
つづくっ!
「事実って……」
「まぁ、当然だ。ヴァルキュリャからオージンに何かを請うなど、出来る立場ではない。そして、その日、オージンはヴァルキュリャを魔物との戦いから解放し、人か神族かの選択をもたらした」
「その日だったんですか!」
「あぁ、すぐに姉妹達は戦線からエイケン家へ集まり、皆ヴァルホルへ帰るという選択をした。……さぁ、次は何が知りたい?」
やはり何か違和感が残る。
たが、俺は質問を続けることにした。
「オージンがアセウスにかけた封印のことは何か知っていますか? 俺ら、……あんまり大きな声で言わない方が良いのかもしれないけど、神の血の力を解放したいんです」
シグルは眉を寄せると、目を伏せた。
「知らぬ。私が見た時は、既にただの無力な赤子だった。力の片鱗も感じなかったのだ、封印の魔力なんてなおのこと。魔剣が醸し出す魔力は身も凍るほどであったがな」
「あの魔剣は強いのですか?」
「まごうことなき神器だ。最高のものオージンにふさわしい、破格の魔力を秘めている。何百年という月日を経て、今はその魔力は深い眠りに落ちているようだが」
「それって、今はしょぼいってことですか?」
「あれを見て神器と思うものがどれほどいようか。在りし日は鞘の中にあっても神器であることを隠せぬほどに、もっと殺気だっていた。まるで別物だ」
眉をしかめたまま冷笑するシグルが、なんだか悔しい。
あの魔剣はアセウスの、最高で大切な腹心なのだ。
そしてつまり、俺にとっても。
本来の力が失われてしまった神の剣。
ドリストーンを手に入れて、グランとリオンを本気にさせにゃあいかんのか?
全然やりますけど!
取り戻しますよ、勇者の剣!!
俺は伝説のコンピューターRPGゲームのキャラクターみたいに、握りこぶしを作った、頭の中で。
テテッテテ テテッテテ テッレ!
「お前も血の契約を交わしているのだろう? エルドフィン・ヤール」
ドキリッ
心臓をひと跳ねさせた俺は、シグルを見た。
シグルの透けた姿、冷ややかな顔の向こうから、驚いた顔をしたソグンが俺を見ていた。
ヴァルキュリャ内でもそんなに格が違うのか。
三番目のお気に入りは何でもお見通しってか?
「そんなことも、分かるのですか?」
「まぁな」
俺はなんと言ったら良いのか分からず、沈黙してしまった。
血の契約を知っているのは、アセウスと、多分察しているだろうアセウスの親父さんだけなのだ。
「どうした。急にだんまりか?」
「だって……」
俺にだって分かる。
エイケン家の魔剣とエルドフィンの血の契約なんて、それこそ誰にも認められないはずだ。知られていい話じゃない。
「そう警戒するな。咎めている訳ではない。継承者が決めたことなのだろう? ただ、魔剣が変わり果てた理由になり得るかと思ってな」
「?! 俺が契約したから?」
「違う。血の契約があまりにも多く成され過ぎているからだ。魔剣は人間の血でがんじがらめだ」
シグルの哀れむような目が印象的だった。
俺にじゃぁない。
一体誰に、そんな風に哀れんだ目を向けているのだろう。
視線の先には何もないのに。
え? 血の契約ってなんの話か知らねーぞって?
そりゃそうだ。話したことねぇもん。
説明しろって?
……しょうがねぇなぁ。
ざっくり話してやるから、まぁ聞けや!
アセウスの魔剣。
それは、エイケン家に代々伝わる家宝とされる剣だ。
剣自体が魔力を持っていて、使い手として認められた者の呪文で魔法が発現する。
呪文は攻撃や防御など、単純なものが両手の指で数えられるほど、あるだけ。
使い手には代々当主が選ばれるから、呪文もエイケン家の当主から当主へと剣と共に伝えられているのだという。
ほら、あれだ。
記憶にあるだろ?
《守りし槍》! とか、《聳えし槍》! とか、あれさ。
同時に、剣は使い手に加護をもたらす。
呪文を唱えなくとも、剣に触れるものが居なくとも、剣そのものが使い手を危機から守ってくれるという加護だ。
どちらかというと、この加護の方が重要視されていて、魔剣の代名詞のように語られていると聞いた。
そりゃそうだ、魔法の剣が守ってくれるなんて、特別過ぎてすげぇー上がる。
魔剣の持つこの二つの力は、使い手だけに限定されたものだ。
使い手に選ばれた代々の当主以外には、ただの剣に過ぎない。
……のだが、実は例外があるんだ。
それが、血の契約だ。
つづくっ!
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