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序章
卒業記念日 feat. アセウス①
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今、俺が見上げる空はどんな色に見えていると思う……?
黒だ! 黒!! 真っ黒だ!!
あの異空間の黒より忌々しいっ!!
俺とアセウスは(とストーカー分隊長ジトレフは)、次なる冒険の目的地、ベルゲンへ向かいオッダの町を出た。
わくわくドキドキの新しい旅立のはずだった。(第二話①の爽やかさを見てくれ)
きっと空は青く澄み渡り、町を抜けても海へと続いていたはずだ。
(BGMはもちろんセカオ○♪)
それが、いきなりケチがついた。
オッダの町の加工鍛治に青い塊を見て貰うつもりだったが、ストーカーのせいでそうもいかなくなった。
交換のために持ってきた物資は、仕方なく、安めの相場でまとめて買い取って貰った。
宿屋の主人が知り合いの商人を紹介してくれて、昨夜のことで好意的だから結構勉強してくれたとは思う。
だが、まとめ売りでは限界がある。
相場の良い専門問屋に持ち込めれば、ベルゲンへの旅路でも余裕を持てたはずだ。
全部、後からついて行くだけだって言いながら、真後ろで圧をかけて来やがるストーカーのせいだ。
「ついて行く」って、「尾いて行く」だろ!!
だったら公言しないで尾けられた方がまだマシだった気がする。
そもそも、あんな奴を後ろに連れて、町の中など歩きたくない。
本当俺あいつ嫌い!!!
いかん。つい熱くなってしまった……
気を取り直して、ちょっと、また説明するな!
ベルゲンは結構遠い海側にある。
近道を行くにはいくつもの山や谷や川や海を越えなければならず、
迂回するにはこれも果てしない距離の川沿いを歩かなければならない。
アセウスから地図で説明を受けて、え? 何年の旅?? とドン引きした。
旅してる間にまた狙われるのなら、あんまり意味がないのだ。
ゴンドゥルの力を使ってなんとかできねぇものかと考えている俺にアセウスが笑った。
セウダとオッダから等距離にある海と山に挟まれた町、ローセンダールの山奥に、空間転移の魔法を使える戦士がいるそうだ。
アセウス一族が北の親戚と会う時はいつもそのルートで行き来していたらしい。
ということで、山をひとつ越えればすぐにローセンダールだ!
「オッダを旅立って一日目、まぁ、こんなところか」
「思ったより何にもないな。俺もう疲れたよ、アセウッシュ~」
「? それなに?」
日が落ち始めた頃、俺たちは山間部に入っていた。
「今夜はここで野宿だよな。俺、その辺見て良さげな場所探してくる」
「俺は薪集めとくよ。一応気をつけろよ、エルドフィン。……えぇっとーっジトレフさーん、この辺で野宿をする予定なのですがーーっ」
アセウスの呼び掛けに、俺はチラと奴の方を振り返った。
ストーカーは少し辺りを見回した後、適当な場所に腰を下ろした。
腰を下ろしたままでも、俺たちが視界に入る、少し離れたところだ。
「ふっざけんなあいつ。アセウスがせっかく気ぃ遣って声かけてやってんのに」
歩いている時もそうだが、俺たちと一緒に、という気持ちはサラサラないらしい。
普通に考えれば、野宿なら、人は多くまとまった方が安全だ。
交替で眠るにしても、人が多ければそれだけ休める時間が増える。
それなのに、あくまで別行動をとろうとする。
ああいうところが俺は癇に障るのだ。
「ジトレフさん、火も起こさないみたいだし、一応声かけてくるよ」
「……お前に任せるよ」
呼びに行ったアセウスは、すぐに一人で戻ってきた。
「構わないでくれって言われちゃった。そう言われてもなー」
アセウスは困ったような、心配そうな顔でストーカーを眺めた。
そうなのだ。狙われてるかもしれないアセウスとしては、同じ視界内である近くだが、手は届かない距離に、一人で置くのが心配なのだ。
「くっそ、消えろっっまぢで」
俺はアセウスに聞こえないようにジトレフに舌打ちをした。
そのまま、大きめの岩に囲まれた場所に全裁の獣皮を引いて、アセウスと隣り合って座った。
近くには大きな木が何本も生えていて、近付くものを知らせてくれるだろう、いい場所だった。
アセウスが手慣れた手付きで近くに火を焚いてくれる。
うーん、昨日の今日だと……やっぱり交替で寝ずの番するしかないかなぁ……
面倒くささにうちひしがれていると、アセウスがポツリと呟いた。
「……やっぱりさ、俺、お前に隠し事できねーや」
「ん? なに?」
「エルドフィン、お前、もう俺と旅するの終わりにしたいとか思ったことない?」
びっくり発言だった。
アセウスを見ると、半分を焚き火の揺らぐ炎に照らされた整った顔が、真剣な面持ちで俺に向けられていた。
―――――――――――――――――――
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代 アセウス
【冒険のお邪魔イケメン】
オッダ部隊第二分隊長 ジトレフ
【冒険の目的地】
ベルゲン
【冒険の経由地】
ローセンダール
黒だ! 黒!! 真っ黒だ!!
あの異空間の黒より忌々しいっ!!
俺とアセウスは(とストーカー分隊長ジトレフは)、次なる冒険の目的地、ベルゲンへ向かいオッダの町を出た。
わくわくドキドキの新しい旅立のはずだった。(第二話①の爽やかさを見てくれ)
きっと空は青く澄み渡り、町を抜けても海へと続いていたはずだ。
(BGMはもちろんセカオ○♪)
それが、いきなりケチがついた。
オッダの町の加工鍛治に青い塊を見て貰うつもりだったが、ストーカーのせいでそうもいかなくなった。
交換のために持ってきた物資は、仕方なく、安めの相場でまとめて買い取って貰った。
宿屋の主人が知り合いの商人を紹介してくれて、昨夜のことで好意的だから結構勉強してくれたとは思う。
だが、まとめ売りでは限界がある。
相場の良い専門問屋に持ち込めれば、ベルゲンへの旅路でも余裕を持てたはずだ。
全部、後からついて行くだけだって言いながら、真後ろで圧をかけて来やがるストーカーのせいだ。
「ついて行く」って、「尾いて行く」だろ!!
だったら公言しないで尾けられた方がまだマシだった気がする。
そもそも、あんな奴を後ろに連れて、町の中など歩きたくない。
本当俺あいつ嫌い!!!
いかん。つい熱くなってしまった……
気を取り直して、ちょっと、また説明するな!
ベルゲンは結構遠い海側にある。
近道を行くにはいくつもの山や谷や川や海を越えなければならず、
迂回するにはこれも果てしない距離の川沿いを歩かなければならない。
アセウスから地図で説明を受けて、え? 何年の旅?? とドン引きした。
旅してる間にまた狙われるのなら、あんまり意味がないのだ。
ゴンドゥルの力を使ってなんとかできねぇものかと考えている俺にアセウスが笑った。
セウダとオッダから等距離にある海と山に挟まれた町、ローセンダールの山奥に、空間転移の魔法を使える戦士がいるそうだ。
アセウス一族が北の親戚と会う時はいつもそのルートで行き来していたらしい。
ということで、山をひとつ越えればすぐにローセンダールだ!
「オッダを旅立って一日目、まぁ、こんなところか」
「思ったより何にもないな。俺もう疲れたよ、アセウッシュ~」
「? それなに?」
日が落ち始めた頃、俺たちは山間部に入っていた。
「今夜はここで野宿だよな。俺、その辺見て良さげな場所探してくる」
「俺は薪集めとくよ。一応気をつけろよ、エルドフィン。……えぇっとーっジトレフさーん、この辺で野宿をする予定なのですがーーっ」
アセウスの呼び掛けに、俺はチラと奴の方を振り返った。
ストーカーは少し辺りを見回した後、適当な場所に腰を下ろした。
腰を下ろしたままでも、俺たちが視界に入る、少し離れたところだ。
「ふっざけんなあいつ。アセウスがせっかく気ぃ遣って声かけてやってんのに」
歩いている時もそうだが、俺たちと一緒に、という気持ちはサラサラないらしい。
普通に考えれば、野宿なら、人は多くまとまった方が安全だ。
交替で眠るにしても、人が多ければそれだけ休める時間が増える。
それなのに、あくまで別行動をとろうとする。
ああいうところが俺は癇に障るのだ。
「ジトレフさん、火も起こさないみたいだし、一応声かけてくるよ」
「……お前に任せるよ」
呼びに行ったアセウスは、すぐに一人で戻ってきた。
「構わないでくれって言われちゃった。そう言われてもなー」
アセウスは困ったような、心配そうな顔でストーカーを眺めた。
そうなのだ。狙われてるかもしれないアセウスとしては、同じ視界内である近くだが、手は届かない距離に、一人で置くのが心配なのだ。
「くっそ、消えろっっまぢで」
俺はアセウスに聞こえないようにジトレフに舌打ちをした。
そのまま、大きめの岩に囲まれた場所に全裁の獣皮を引いて、アセウスと隣り合って座った。
近くには大きな木が何本も生えていて、近付くものを知らせてくれるだろう、いい場所だった。
アセウスが手慣れた手付きで近くに火を焚いてくれる。
うーん、昨日の今日だと……やっぱり交替で寝ずの番するしかないかなぁ……
面倒くささにうちひしがれていると、アセウスがポツリと呟いた。
「……やっぱりさ、俺、お前に隠し事できねーや」
「ん? なに?」
「エルドフィン、お前、もう俺と旅するの終わりにしたいとか思ったことない?」
びっくり発言だった。
アセウスを見ると、半分を焚き火の揺らぐ炎に照らされた整った顔が、真剣な面持ちで俺に向けられていた。
―――――――――――――――――――
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代 アセウス
【冒険のお邪魔イケメン】
オッダ部隊第二分隊長 ジトレフ
【冒険の目的地】
ベルゲン
【冒険の経由地】
ローセンダール
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