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第2章 シャクンタラー対ファウスト
第21話 宮姉妹について④
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出歯亀事件から次の日、いつも通り南と共にシャクンタラー本部に行くと、そこには沙代里がいた。
シャクンタラーに加入したことで、こちらの本部に来ることが当たり前のことではあるが、沙代里は我が物顔で植木がいつも座っている高級な椅子に腰かけていた。
そして、オレンジジュースを飲みながら、携帯をいじっている沙代里に対して植木は何も言わずに部屋の端に突っ立ってタバコを吹かしていた。
なんなんだ。この図は。
急に本部に来た、元ファウストの宮 沙代里を普通に本部に入れてしまうこの本部の警備体制を疑問視してしまう。それに、シャクンタラー団長という立場で新人にいいようにされていても何も言わず、端に立って悲し気な顔でタバコを吹かしているこの男は何を考えているのだろう。
「えっと。どうもー。」
南の気の抜けた声が本部会議室に響く。
「あ。南くんじゃん。もっと早くて来てよぉ。ここ暇だったしぃ。」
「ごめんごめん。ちょっと西京のトイレが長引いてな。」
そこから彼らは雑談を始めた。
旧来の友のように会話を始める二人を見て、俺もまた会話に入っていけず植木と同じように部屋の端で携帯をいじることにする。
それから5分ほど経って北条さんと亜里沙ちゃんがやってきた。
亜里沙ちゃんは初め北条さんと雑談をしながら入ってきて、今日も機嫌が良いなと思いながら眺めていると、彼女は沙代里を見て固まった。
次の瞬間、彼女は露骨に表情を歪めて南の隣に瞬間移動し、彼を部屋の端に無理やり連れていく。
何がなんだかわからない南は狼狽えているが、至近距離から睨みをきかす亜里沙を見て少し表情を綻ばせる。
「えっとどうしたの?亜里沙ちゃん?」
「は?どうしたもこうしたもないですよ?なんですか?なんであの人がいるんですか?」
そう言いながら、亜里沙ちゃんは親指で沙代里を指す。
ガラの悪い人間が親指を立てて、人を指す格好だ。
沙代里は久しぶりに妹と会えて嬉しいのか亜里沙に向けて満面の笑みで手を振っている。愛くるしい姿である。
それとは相対的に鬼のような形相で南を睨みつけ、今にも掴みかからんばかりに彼のシャツを握り締める亜里沙ちゃん。
「ああ。えっと彼女をシャクンタラーにスカウトしました。以上です。」
「はい?あなた新人ですよね?馬鹿なんですか?それで、あの子はファウストですよ。なら、どうするか?殺りなさい。」
「え?」
「だから殺るんです。ほら、行ってください。」
「いやいや。ちょっと話を聞いてよ!!」
「話なんてありません。今はあの敵を殺るのです!!ね?美紀ちゃん?」
「え?何?」
「美紀ちゃん!!」
北条さんはどうでもいいと手を振り振りして、携帯ゲームをしている。
「ああ。はいはい。がんばれ。南くん。」
「はい。ぶち殺してきて下さい。」
そう言うと、亜里沙ちゃんは南を沙代里の前にたたき出す。
南は顔が歪んだ亜里沙ちゃんになお食い下がっているが、亜里沙ちゃんは聞く耳を持たない。
「いやいやいや。仲良くしようよ。姉妹なんだから。それに、もうシャクンタラーの沙代里ちゃんなんだったって。」
「だからそれが意味分からないんです。なんであの姉がシャクンタラーに入っているんですか?意味が分かりません!!」
「そうだよね。でもでもアポートって能力は強力だし、入ってもらったほうがいいと思うんだよね。ね?植木さん?」
怒る亜里沙ちゃんに耐えかねて、南は植木に助けを求めるも彼はちょうど銀縁眼鏡のレンズを吹いており、鼻歌を歌っていた。
「えっ?聞いてなかった。なに?」
「なんでもないです。」
「ふざけてるんですか!?そんなもの私の能力のが強いですよ。全く勝手なことをしないでください!!」
「何怒ってるのぉ?南くん困ってるよぉ。」
癇癪を起したように怒鳴る亜里沙ちゃんを宥める南へとその状況が気にかかったのか沙代里が近づいていく。
「今はこっちの話をしているから、貴方は関係ないでしょ?すっこんでて。」
亜里沙ちゃんは姉を顔を一切見ずに、どすの効いた声を漏らす。
「ええ~。なんでぇ。そんなに私が入ったの嫌?仲良くしようよぉ。亜里沙~。」
「そうだよ。亜里沙ちゃん。仲良くやろう。」
「ふざけんなぁ!!」
あ、切れた。
亜里沙ちゃんは見る間に沙代里の前に移動すると、沙代里に攻撃を加えようと手を振り上げる。
しかし、そこに南がなんとかテレキネシスを行使し、まだ鼻歌を歌っていた植木を亜里沙ちゃんと沙代里の間へと飛ばす。
「え?なに?…………ボエッ!!!…………ううっ」
植木は亜里沙ちゃんの手刀をその身で受け止め、情けない声を漏らす。
そして、地にたたきつけられる。
植木はそのまま失神し、間抜けな顔を皆に晒している。
「なによ~。ふわ~。危ないよぉ。」
その様子を余裕の表情で見ていた沙代里は欠伸をしながら亜里沙ちゃんに言う。その態度に業を煮やしてさらに接近しようと試みるも、すぐに沙代里の指パッチンで部屋の端に移動させられる。
「亜里沙。沙代里とやる気ぃ?それなら沙代里も考えるけど。どうするぅ?もう一回砂漠とか北極とか行きたい?」
沙代里は亜里沙ちゃんを試すように問いかける。
おい。マジか。
今、はたから聞いていたが結構ヤバイこと言ってないか?
え、この姉妹。喧嘩で辺境に飛ばしたりしてるの?怖い。
確かに宇宙規模の親子喧嘩とか、忍の世界を巻き込んだ親友との仲違いとかあるが、発端がプリンの小さな喧嘩でそこまでエスカレートするのか。
こいつら頭おかしいんじゃないか。
俺は喧嘩の規模の大きさに驚きつつも、どうにか対処しなくてはと何もできず茫然と見ている南に近づき、耳打ちする。
「ああ。そうだな。それでいこう。」
はい。承認完了。
「どうするぅ?亜里沙?」
「え、えっと。でも…………許せないし。えっと。」
あきらかに動揺し、怯えている亜里沙ちゃんに何でもないことの様に言い放つ沙代里。
しかし、この状況を見るに今まで亜里沙ちゃんはどれほど酷い事をされてきたのだろう。どれだけ辺境の地に飛ばされてきたのだろうか?
プリンの件だけではなく、今までのことが積もり積もって、いま亜里沙ちゃんはこれほど沙代里を毛嫌いしているのかもしれない。
それを思うと少し同情してしまう。あんなギャルでアホな子を姉に持つとは不憫な子だ。
まぁ。だからこそ今、異能を発動したのだが。
「じゃあ。とりあえず飛んできてぇ。…………えい!…………あれ?なんで?」
沙代里は不思議そうに指を何度も鳴らしているが、亜里沙ちゃんは固まったままそこにいる。
二人は目を点にし、驚いている。
そう。
この部屋では異能は使えない。
俺の異能で制限したのだ。
しかし、これ以上俺の異能は使えない。この宣言の異能は効力を一つに絞らないといけないのだ。また発動中に再度、宣言をし別の異能を発動することはできない。
「あれ…………私も移動出来ない。…………なんで?」
「はい。今はもう異能を使えないぞ。だからとりあえずお互い話合ったらどうだ?」
「え?…………これって西京の異能のせいなのぉ?」
おい。南は君付けで俺は呼び捨てか。この小娘め。
「そうだな。あと西京くんな?」
「そうなんだ!!すごいねぇ。西京。」
「おい。くんを付けろよ。んーむ。まぁいいや。そうだ。だからとりあえず和解したらどうだ?仲良くしろとは言わないから。亜里沙ちゃんもそこのギャルはまあ強いしシャクンタラーにいてくれたら助かるだろ?どうだ?」
「沙代里は西京がそう言うならいいよぉ。」
何故か、異能を行使したことで沙代里は俺に対する態度が変わったように見受けられる。
亜里沙ちゃんの方は嫌そうに顔を背けているが、頭では分かっているのだろう。こちらに歩みより手を出した。
「本当は…………嫌ですけど。でも。しょうがないので。いいです。」
なるほど。聡い子だ。己の気持ちより組織のことを思っての行動だろう。今度アイスでも奢ってあげよう。
「はーい。改めてよろしくぅ。」
そう言いながら二人は握手する。
「あ。沙代里はプリンの件謝っとけよ。」
「うんうん。ごめんごめん。亜里沙。」
沙代里は手を前で合わせて、素早く前に振り下ろす。
「なにそれムカつく。…………ッ!!!。」
その振り下ろした手刀が亜里沙ちゃんの頭にクリーンヒットした。
それが最後の一撃だった。
亜里沙ちゃんはもう沙代里を見ようとはせず、頭をさすりながら、そのまま固まっていた。そこから、何も言葉を発しない亜里沙ちゃん。俺たちの間に冷たい風が吹いた気がした。それがどうにかまとまりそうになったこの姉妹喧嘩はもう修復不能であることの証明だった。
「え?あ?ごめんごめん。ちょっと見てなかったぁ。」
「…………」
「ごめんってぇ。まぁ。いいじゃない。ほら。プリンもまた今度買ってきてあげるからぁ。」
「は?」
これ以上は駄目だと思った俺は彼女らの間に割り込む。
「まぁ。もういいだろう。沙代里はもう話すな。…………どうかな亜里沙ちゃん?それでいい?」
「もうそれでいいです。」
亜里沙ちゃんの目から光が消えており、これ以上このギャルと話させるのも酷だと思い、今日のところは帰ってもらった。
その後も会議やら集まりがあっても沙代里と亜里沙ちゃんが二人で話すことはなかった。
こうして宮姉妹の諍いは解決せず、有耶無耶に継続していくこととなった。
シャクンタラーに加入したことで、こちらの本部に来ることが当たり前のことではあるが、沙代里は我が物顔で植木がいつも座っている高級な椅子に腰かけていた。
そして、オレンジジュースを飲みながら、携帯をいじっている沙代里に対して植木は何も言わずに部屋の端に突っ立ってタバコを吹かしていた。
なんなんだ。この図は。
急に本部に来た、元ファウストの宮 沙代里を普通に本部に入れてしまうこの本部の警備体制を疑問視してしまう。それに、シャクンタラー団長という立場で新人にいいようにされていても何も言わず、端に立って悲し気な顔でタバコを吹かしているこの男は何を考えているのだろう。
「えっと。どうもー。」
南の気の抜けた声が本部会議室に響く。
「あ。南くんじゃん。もっと早くて来てよぉ。ここ暇だったしぃ。」
「ごめんごめん。ちょっと西京のトイレが長引いてな。」
そこから彼らは雑談を始めた。
旧来の友のように会話を始める二人を見て、俺もまた会話に入っていけず植木と同じように部屋の端で携帯をいじることにする。
それから5分ほど経って北条さんと亜里沙ちゃんがやってきた。
亜里沙ちゃんは初め北条さんと雑談をしながら入ってきて、今日も機嫌が良いなと思いながら眺めていると、彼女は沙代里を見て固まった。
次の瞬間、彼女は露骨に表情を歪めて南の隣に瞬間移動し、彼を部屋の端に無理やり連れていく。
何がなんだかわからない南は狼狽えているが、至近距離から睨みをきかす亜里沙を見て少し表情を綻ばせる。
「えっとどうしたの?亜里沙ちゃん?」
「は?どうしたもこうしたもないですよ?なんですか?なんであの人がいるんですか?」
そう言いながら、亜里沙ちゃんは親指で沙代里を指す。
ガラの悪い人間が親指を立てて、人を指す格好だ。
沙代里は久しぶりに妹と会えて嬉しいのか亜里沙に向けて満面の笑みで手を振っている。愛くるしい姿である。
それとは相対的に鬼のような形相で南を睨みつけ、今にも掴みかからんばかりに彼のシャツを握り締める亜里沙ちゃん。
「ああ。えっと彼女をシャクンタラーにスカウトしました。以上です。」
「はい?あなた新人ですよね?馬鹿なんですか?それで、あの子はファウストですよ。なら、どうするか?殺りなさい。」
「え?」
「だから殺るんです。ほら、行ってください。」
「いやいや。ちょっと話を聞いてよ!!」
「話なんてありません。今はあの敵を殺るのです!!ね?美紀ちゃん?」
「え?何?」
「美紀ちゃん!!」
北条さんはどうでもいいと手を振り振りして、携帯ゲームをしている。
「ああ。はいはい。がんばれ。南くん。」
「はい。ぶち殺してきて下さい。」
そう言うと、亜里沙ちゃんは南を沙代里の前にたたき出す。
南は顔が歪んだ亜里沙ちゃんになお食い下がっているが、亜里沙ちゃんは聞く耳を持たない。
「いやいやいや。仲良くしようよ。姉妹なんだから。それに、もうシャクンタラーの沙代里ちゃんなんだったって。」
「だからそれが意味分からないんです。なんであの姉がシャクンタラーに入っているんですか?意味が分かりません!!」
「そうだよね。でもでもアポートって能力は強力だし、入ってもらったほうがいいと思うんだよね。ね?植木さん?」
怒る亜里沙ちゃんに耐えかねて、南は植木に助けを求めるも彼はちょうど銀縁眼鏡のレンズを吹いており、鼻歌を歌っていた。
「えっ?聞いてなかった。なに?」
「なんでもないです。」
「ふざけてるんですか!?そんなもの私の能力のが強いですよ。全く勝手なことをしないでください!!」
「何怒ってるのぉ?南くん困ってるよぉ。」
癇癪を起したように怒鳴る亜里沙ちゃんを宥める南へとその状況が気にかかったのか沙代里が近づいていく。
「今はこっちの話をしているから、貴方は関係ないでしょ?すっこんでて。」
亜里沙ちゃんは姉を顔を一切見ずに、どすの効いた声を漏らす。
「ええ~。なんでぇ。そんなに私が入ったの嫌?仲良くしようよぉ。亜里沙~。」
「そうだよ。亜里沙ちゃん。仲良くやろう。」
「ふざけんなぁ!!」
あ、切れた。
亜里沙ちゃんは見る間に沙代里の前に移動すると、沙代里に攻撃を加えようと手を振り上げる。
しかし、そこに南がなんとかテレキネシスを行使し、まだ鼻歌を歌っていた植木を亜里沙ちゃんと沙代里の間へと飛ばす。
「え?なに?…………ボエッ!!!…………ううっ」
植木は亜里沙ちゃんの手刀をその身で受け止め、情けない声を漏らす。
そして、地にたたきつけられる。
植木はそのまま失神し、間抜けな顔を皆に晒している。
「なによ~。ふわ~。危ないよぉ。」
その様子を余裕の表情で見ていた沙代里は欠伸をしながら亜里沙ちゃんに言う。その態度に業を煮やしてさらに接近しようと試みるも、すぐに沙代里の指パッチンで部屋の端に移動させられる。
「亜里沙。沙代里とやる気ぃ?それなら沙代里も考えるけど。どうするぅ?もう一回砂漠とか北極とか行きたい?」
沙代里は亜里沙ちゃんを試すように問いかける。
おい。マジか。
今、はたから聞いていたが結構ヤバイこと言ってないか?
え、この姉妹。喧嘩で辺境に飛ばしたりしてるの?怖い。
確かに宇宙規模の親子喧嘩とか、忍の世界を巻き込んだ親友との仲違いとかあるが、発端がプリンの小さな喧嘩でそこまでエスカレートするのか。
こいつら頭おかしいんじゃないか。
俺は喧嘩の規模の大きさに驚きつつも、どうにか対処しなくてはと何もできず茫然と見ている南に近づき、耳打ちする。
「ああ。そうだな。それでいこう。」
はい。承認完了。
「どうするぅ?亜里沙?」
「え、えっと。でも…………許せないし。えっと。」
あきらかに動揺し、怯えている亜里沙ちゃんに何でもないことの様に言い放つ沙代里。
しかし、この状況を見るに今まで亜里沙ちゃんはどれほど酷い事をされてきたのだろう。どれだけ辺境の地に飛ばされてきたのだろうか?
プリンの件だけではなく、今までのことが積もり積もって、いま亜里沙ちゃんはこれほど沙代里を毛嫌いしているのかもしれない。
それを思うと少し同情してしまう。あんなギャルでアホな子を姉に持つとは不憫な子だ。
まぁ。だからこそ今、異能を発動したのだが。
「じゃあ。とりあえず飛んできてぇ。…………えい!…………あれ?なんで?」
沙代里は不思議そうに指を何度も鳴らしているが、亜里沙ちゃんは固まったままそこにいる。
二人は目を点にし、驚いている。
そう。
この部屋では異能は使えない。
俺の異能で制限したのだ。
しかし、これ以上俺の異能は使えない。この宣言の異能は効力を一つに絞らないといけないのだ。また発動中に再度、宣言をし別の異能を発動することはできない。
「あれ…………私も移動出来ない。…………なんで?」
「はい。今はもう異能を使えないぞ。だからとりあえずお互い話合ったらどうだ?」
「え?…………これって西京の異能のせいなのぉ?」
おい。南は君付けで俺は呼び捨てか。この小娘め。
「そうだな。あと西京くんな?」
「そうなんだ!!すごいねぇ。西京。」
「おい。くんを付けろよ。んーむ。まぁいいや。そうだ。だからとりあえず和解したらどうだ?仲良くしろとは言わないから。亜里沙ちゃんもそこのギャルはまあ強いしシャクンタラーにいてくれたら助かるだろ?どうだ?」
「沙代里は西京がそう言うならいいよぉ。」
何故か、異能を行使したことで沙代里は俺に対する態度が変わったように見受けられる。
亜里沙ちゃんの方は嫌そうに顔を背けているが、頭では分かっているのだろう。こちらに歩みより手を出した。
「本当は…………嫌ですけど。でも。しょうがないので。いいです。」
なるほど。聡い子だ。己の気持ちより組織のことを思っての行動だろう。今度アイスでも奢ってあげよう。
「はーい。改めてよろしくぅ。」
そう言いながら二人は握手する。
「あ。沙代里はプリンの件謝っとけよ。」
「うんうん。ごめんごめん。亜里沙。」
沙代里は手を前で合わせて、素早く前に振り下ろす。
「なにそれムカつく。…………ッ!!!。」
その振り下ろした手刀が亜里沙ちゃんの頭にクリーンヒットした。
それが最後の一撃だった。
亜里沙ちゃんはもう沙代里を見ようとはせず、頭をさすりながら、そのまま固まっていた。そこから、何も言葉を発しない亜里沙ちゃん。俺たちの間に冷たい風が吹いた気がした。それがどうにかまとまりそうになったこの姉妹喧嘩はもう修復不能であることの証明だった。
「え?あ?ごめんごめん。ちょっと見てなかったぁ。」
「…………」
「ごめんってぇ。まぁ。いいじゃない。ほら。プリンもまた今度買ってきてあげるからぁ。」
「は?」
これ以上は駄目だと思った俺は彼女らの間に割り込む。
「まぁ。もういいだろう。沙代里はもう話すな。…………どうかな亜里沙ちゃん?それでいい?」
「もうそれでいいです。」
亜里沙ちゃんの目から光が消えており、これ以上このギャルと話させるのも酷だと思い、今日のところは帰ってもらった。
その後も会議やら集まりがあっても沙代里と亜里沙ちゃんが二人で話すことはなかった。
こうして宮姉妹の諍いは解決せず、有耶無耶に継続していくこととなった。
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