異世界で僕…。

ゆうやま

文字の大きさ
上 下
197 / 250

2章74話

しおりを挟む
オーディンから貰った竜王ヴァースキの目玉を嵌めると目玉の意思が文字化して見えた。

意思がある目玉…メメメの目太子の目玉お婆を思い出してクスッと笑ってしまった。

それで、僕は文字を読むのが面倒で具現言語を使って声を与えられて話しが出来るか試してみた。

「は、はじめまして!志村晴人です!喋れますか?ヴァースキさんの…目玉さん?」

[はいはい…はじめましてだ!その無神経過ぎる呼び方、それと残念なコミュ力に祝って拍手!まあ…手はないがな…]

具現言語魔法は成功して意思疎通は出来て声も聞こえた。

しかし…正確に急所を突いてくる辛くて容赦ないこのツッコミに…僕は少しイラッとした。

「……返品します」

[待て待て!他人の好意で貰ったのにそりゃないだろ!]

「そ、そうですね…」

[全く!今時の若い奴はなっとらんな…]

「……なので廃棄します」

[ま、待て待て!なんて奴だ!ひ、人でなし!やめろ!やめて!お、お願いします…]

僕が本気で取り出して握り潰そうとした事を感じ取ったヴァースキの目は…焦ったせいかピントがずれて視野がボヤけてた。

「なら…なんと呼べばいいですか?」

[ヴァースでいい…やっとオーディンから離れたと思って喜んだのにとんでもない奴に会った気がするわ]

「ん?オーディンと何があったんですか?」

[うん…色々ね、アイツ風呂もあまり入らないし…だらし無いし…それにタイプじゃない」

「タイプ?女性!いやメスか!」

[バカじゃないの?目玉に性別なんかある訳ないだろう]

確かにそうだが…何故か変な気がした。

「えっと…ヴァースさんの好きなものは?」

「可愛い男とカッコいい男だ!」

「……趣味は?」

「いい男を眺める事!」

これはダメなやつだ…不良品だわ。

[ふ、不良品だと!失礼しちゃうわね!お前も同じ男でも格好いい人を見たら…かっけーっと思うことあるだろ!]

確かにそうだが……でも[お前も同じ男]が何故か凄く引っかかって仕方がない。

ヴァースは僕が思った事と感情を把握出来るようだ。

変な奴ではあるが左目の代わりと暇つぶしには悪くなさそうで廃棄するのは辞める事にした。

それにオーディンが言っていたルーンの魔法を刻んである効果なのか、周りの生物の位置や数と種族まで把握出来る。

[それだけじゃないぞ…暗い場所でも明るく見える機能もある]

「へぇ…そうなんだ」

[色々私の能力を試して見るといい]

それを聞いてその機能も試してみた。

「いくぜ!光視力ビーム!」

暗い所でも良く見えるように目からハイビームが出た。

目からハイビームだけじゃなくズームイン機能まであった。

これは最早サイボーグだね…。

もう人間である事を諦めると少し気が楽になった。

それで…面白さ半分と調子に乗って腕を森に向けて叫んだ。

「……ロケットパンチ!」

その時…腕から激痛を感じた。

[おい!ハルト!左腕の大動脈から異常な程の量の血液が集まってるぞ!」

「えっ?まじ?」

[で、出るぞ!]

僕の腕は血を噴射しながら凄いスピードで飛んで行った。

それはかなり威力もあって…飛んで行った方向にはその跡で地面と森に道が出来た。

しかし、戻って来る技能はないようだ。

仕方なく左腕を探しに走ったが、貧血で体が上手く動かない。

この技は封印決定だな…。

[ハルト!前方から得体知らない物体が接近中だ…脅威度は超危険!」

「な、何が来てるんだ?ヴァース!ズームインだ」

[了解!]

視力が拡大されて…その脅威度が超危険の得体知らない物体が見えた。

それは二本指で必死に走って胴体に戻って来ている…僕の左腕だった。

[何だありゃー!]

「おお!左子ぉぉぉぉ!」

戻って来た左腕は僕の胸に飛び込んで来て…僕も嬉しくてぐっと抱きしめてあげた。

そして…一瞬で結合完了した。

[あ、あの…私、オーディンの元に戻っていい?]

「構わないけど…貰った物を返す…そんななってない子と思われたくないから廃棄してもいい?」

[……いいえ、ここでいいです]

失った左目はなんとかなった。

あとはルル姉を待つのみだが…心配でたまらん!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

闇に蠢く

野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
 関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。  響紀は女の手にかかり、命を落とす。  さらに奈央も狙われて…… イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様 ※無断転載等不可

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

◆完結◆修学旅行……からの異世界転移!不易流行少年少女長編ファンタジー『3年2組 ボクらのクエスト』《全7章》

カワカツ
ファンタジー
修学旅行中のバスが異世界に転落!? 単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが…… 構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー! ※1話5分程度。 ※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。 〜以下、あらすじ〜  市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。  しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。  車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。  助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。  特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。  『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。  外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。  中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……  不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!    筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい! ※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。 ※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。

処理中です...