異世界で僕…。

ゆうやま

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一章 最終回その3

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それから僕達は破壊の女神の聖域に行ってルル姉の器を玉座に置いた。

「ルル姉…早く回復して会いに来て、待ってるから…」

頑張って笑っているが、離れたくない気持ちで泣きそうになった。

それに気づいたラズリックさんは僕の背中に寄り添ってそっと抱きしめてくれた。

「ハルトちゃん、大丈夫よ…ルナ様を信じて」

「はい…」

ルル姉の言葉を信じて僕は玉座の前でしばらくの間の別れを告げて下界に戻ろうとした。

「そんな辛そうな顔しないで…私が慰めてあげる…前の続きしよ…うへへ」

ラズリックさんはまたいやらしい指の動きをしながら僕に近付いてきた。

ふむ、あの6時間か…一体、僕はどんな事される訳?

正直、興味がない訳はないが…でも踏み入れてはならない世界に行ってしまいそうな気がして逃げる事にした。

「あっ!地上の仲間が待ってます!また今度で!バルちゃん!急げーー!!」

「は、ハルトちぁぁぁん!!」

ラズリックさんから逃げる為に僕はそのまま聖地からバルちゃんと一緒に下界に飛び込んだ。

「なぁ!バルちゃん!僕!ワクワクするよ!これから色々冒険や旅をしようと思ってる」

「お兄ちゃんと一緒なら!どこでも行くぅぅ!えへへへ」

「いいけど…お願いだから大人しくしてくれよ?これから宜しくね!バルちゃん!」

「不束者ですが宜しくお願い致します…きゃっは♡」

この異世界でこれから冒険の旅が出来ると思って興奮した。

しかし、果てしなく高い空から落ちて…ずーっと落ちて…更に落ちまくったが地上が見えない。

「可笑しい…こんなに高かった?ねぇ、バルちゃん…なんかずーっと落ちぱなしだけど…」

「うーん…あの階段覚える?あれで降りなければ天界から地上までまだ大分かかるよ?ここは天界の最上層部だから…あの階段一つで一万キロと思えばいいよ」

「ん?階段で登った時は60段だったから…ま、待てよ…60万?」

そうだ…ここは、人間の常識が通じるはずがない異世界だ。

それに気付いた僕の頭から重力やニュートンの法則など様々な状況を判断し…結果を予測するまでもない。

あっ!死んだわ。

「バルちゃん!なんかシュッとばっしーとすぐ安全に地上に着く方法は無い?」

「うん?シュッと?ばっしーと?…意味がわからないけど…空間移動する事は出来る」

「体が…ポッキっと折れたりバラバラになったりしない?」

「慣れない人はちょっと酔うけど…痛みは無いよ…」

また体が分離さえしなければいい…ちょっと怪我して内臓をぶち撒くぐらいは許容範囲だ!

「よぉし!それ!それでいこう!僕の愛しき妹よ…お願い出来るかな?その空間移動やらを…」

「い、愛しき妹……わ、わかった!!」

バルトゥールは僕をキュッと抱きしめて空間移動をした。

そのおかげで瞬時に地上に降りた。

初めての空間移動のせいでひどい吐き気と目眩がして座り込んでしまった。

「お、お兄ちゃん!大丈夫?」

「だ、大丈夫、ちょっと目眩がしただけだよ」

「目眩には酸素共給したらすぐ治るよ♪♪」

バルトゥールは僕の体にしがみ付き唇を近づけた。

「待ってい!」

「帰って早々何してるんですか?」

「ふんっ!邪魔すんな!糞虫、毒虫!」

イリヤがバルトゥールに向けて槍を投げたが軽く片手で弾いた…。

でも…その槍は僕の股間の紙一枚の距離に落ちた。

我が息子が切り落とされるところだった。

うおー!あっぷねぇー!

「おいお前ら!兄弟の愛のコミニケーションを邪魔すんな!」

「ハルトさん…早く離れないと切り落としますよ?」

リリヤが槍を手に取って僕のムスコに槍先を向けた。

ああ…1日ほどしか経ってないのになんと懐かしいやり取りだと感じた。

「お帰り!バカハルト…」

「お帰りなさい!ハルトさん…10日間ずっと待ってました…本当に心配しましたよ…うう…」

イリヤとリリヤは抱きついてワンワン泣いた。

「え?10日?うっそ!」

「ハルト殿、天界と地上の時間の流れは違います」

天界は地上より10倍ほどゆっくりと時間が流れると魔王テスラさんが詳しく説明してくれた。

「みんな…10日も待ってたの?あれ?フィリア姉さんは?」

「女王フィリアは王位に就いて間もないせいで即位式と内乱防止の為に王都に戻られました」

「そうですか…」

「あと…出来るだけ早く王都に来訪して欲しいと伝言も頼まれました…ちゃんと伝えましたぞ…」

「はい…魔王様、伝言ありがとうございます」

「あと…魔王ではなくテスラと呼んで頂けると嬉しいですが…」

魔王を呼び捨て…なんか僕のステータスがぐんっと上がった気がした。

「テスラ姉さん?」

「オーフ…フ…は、は、ハルト殿さえ宜しければ!我が魔王国に国賓として招待させて頂きたいですが、ぜひ!来てください!」

魔王テスラはちょっとモジモジしながら魔王国に誘ってくれた。

マムンティア大陸の魔王国…そこはモフモフの天国。

行きたい!行く!行くしかないでしょー!

「い、いいんですか?」

「はい!ぜひ!」

「行きます!行きます!」

「オー!では早速!全軍!魔都べヘイゼルに帰還する!」

「おおおおおおう!!」

テスラさんは魔王軍に帰還命令を出した。

レイラに飛ばされた兵も全員無事に救出出来たらしく…聖魔戦争にも勝利した魔王と亜人達の顔は生き生きした表情だった。

「ハルト…」

「ハルトさん…」

イリヤとリリヤは行っても人間と敵対してる亜人によって危険に晒される。

でも!僕達は仲間だ…置いていく訳がない。

「何やってる?イリヤ、リリヤ…一緒に行くに決まってる!ねぇ?テスラ姉さん?」

「うむ!ハルト殿の御一行であるイリヤ殿とリリヤ殿も当然国賓として歓迎致します!皆この二方に無礼のないように!」

「はっ!」

それを聞いた双子は安心して嬉しそうに僕に付いて来てくれた。

「なぁ?なぁ?魔王よ、私は?まぁ…招待なんかどうでもいいけど…戯れて来る奴がいたら国ごと潰せばいいし…」

バルトゥールの悪そうな笑顔と言葉にテスラさんは顔が真っ青になった。

「ハルト殿の妹様も!大歓迎であります!皆んな!この方には特に無礼の無いように…世以上丁重に接するように!」

「……は、はい」

魔王テスラさんはバルちゃんの事を頭に入れてなかったようだった。

僕が出来るだけこの天災指定幼女を抑えるしかないが出来るかどうかはわからない。

僕とイリヤ、リリヤ、バルちゃんは魔王国に向かって出発した。

いざ!出発!モフモフ天国へ!新たな冒険の始まりだー!

これからハルトの魔王国を始めとして、ゆらりとした異世界の冒険や旅が始まる…。
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第一章 うちの女神様救いにちょっと行って参ります!                  [完]

第ニ章 モフモフが溢れる大陸に行ったはずがここは危険が溢れる大陸でした [続く]
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