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こうちゃんとの別れ 1
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「ふぅー……」
お風呂をあがり、髪の毛を乾かし終わったあとでベッドに倒れ込む。
ふと昨日のことを思い出した。
「私、こうちゃんが好き──」
何も無い天井に向かって1人呟く。
多分、初めて会ったあの日。
逆上がりを教えてくれたあの日から好きだった。
見ず知らずの女の子に逆上がりを教えてくれたことが。
私の手に豆ができた時、少し慌てた姿も。
帰りにまたねと次に会う約束をしたくれたことが。
初めは悲しかったけど、たくさん友達がいることも。
最近偶然公園で声をかけてくれたことが。
思っていたより頭がいいところも。
こうちゃんの笑った顔が思い浮かぶ。
「来週また会いたいな」
そう願いながら眠りに落ちた。
次の日もその次の日も、私は週末にこうちゃんと会えることを楽しみにしながら過ごした。
もちろん、会う約束はしていないけれど。
それでもなんとなく会えるんじゃないかと思っていた。
大変な授業も宿題も乗り越え、待ちに待った週末がやってきた。
いつもより弾んだ気持ちでお母さんの家に向かう。
しかしお母さんはなんだかいつもよりもよそよそしかった。
私がウキウキしているせいでそう見えているのかな?
なんて思ったが、家に入った瞬間、その態度の意味がわかった。
知らない男の人の靴がある。
こうちゃんよりも全然大きい、大人の人の靴だ。
お母さんも私も靴を脱いでその大きな靴の隣に並べる。
なんだろう。
何度も来ている家なのに、誰か知らない人がいると思うと全てがいつもとは違う気がした。
「今日はね、ことねに紹介したい人がいるの」
リビングに入る前、少し照れくさそうに言われる。
玄関からリビングまでがやけに長い。
私に心の準備をしろと言うかのようにゆったりしている。
やっとお母さんがドアに手をかけ、その先が見えた。
椅子に腰をかけていた男性がそそくさと立ち上がる。
「はじめまして」
懐かしく感じられるくらい優しい声。
背はお母さんよりも随分高いが、体型は結構細め。
少し微笑んだ顔はさっきの声に似合っていると思う。
「ことね、お母さんね、この人と再婚しようと思うんだけど.......ことねはどう?」
「そっか、いいと思うよ」
そんなに私に意見を求めるように言われても.......
お母さんの再婚する相手だ。
私が意見することではない。
「でもほら、ことねのお父さんになる人だし」
「あ.......」
そっか、お父さん、か.......
お母さんが離婚したのは私が幼稚園生の頃だ。
正直私にはお父さんとの記憶が無いので、新しくお父さんができる実感もなければ想像もつかない。
「ほら、座ろ! 今お茶出すね」
私の微妙な雰囲気を悟ったのか、お母さんが私たちを座らせ、お茶を準備しにキッチンに向かった。
お風呂をあがり、髪の毛を乾かし終わったあとでベッドに倒れ込む。
ふと昨日のことを思い出した。
「私、こうちゃんが好き──」
何も無い天井に向かって1人呟く。
多分、初めて会ったあの日。
逆上がりを教えてくれたあの日から好きだった。
見ず知らずの女の子に逆上がりを教えてくれたことが。
私の手に豆ができた時、少し慌てた姿も。
帰りにまたねと次に会う約束をしたくれたことが。
初めは悲しかったけど、たくさん友達がいることも。
最近偶然公園で声をかけてくれたことが。
思っていたより頭がいいところも。
こうちゃんの笑った顔が思い浮かぶ。
「来週また会いたいな」
そう願いながら眠りに落ちた。
次の日もその次の日も、私は週末にこうちゃんと会えることを楽しみにしながら過ごした。
もちろん、会う約束はしていないけれど。
それでもなんとなく会えるんじゃないかと思っていた。
大変な授業も宿題も乗り越え、待ちに待った週末がやってきた。
いつもより弾んだ気持ちでお母さんの家に向かう。
しかしお母さんはなんだかいつもよりもよそよそしかった。
私がウキウキしているせいでそう見えているのかな?
なんて思ったが、家に入った瞬間、その態度の意味がわかった。
知らない男の人の靴がある。
こうちゃんよりも全然大きい、大人の人の靴だ。
お母さんも私も靴を脱いでその大きな靴の隣に並べる。
なんだろう。
何度も来ている家なのに、誰か知らない人がいると思うと全てがいつもとは違う気がした。
「今日はね、ことねに紹介したい人がいるの」
リビングに入る前、少し照れくさそうに言われる。
玄関からリビングまでがやけに長い。
私に心の準備をしろと言うかのようにゆったりしている。
やっとお母さんがドアに手をかけ、その先が見えた。
椅子に腰をかけていた男性がそそくさと立ち上がる。
「はじめまして」
懐かしく感じられるくらい優しい声。
背はお母さんよりも随分高いが、体型は結構細め。
少し微笑んだ顔はさっきの声に似合っていると思う。
「ことね、お母さんね、この人と再婚しようと思うんだけど.......ことねはどう?」
「そっか、いいと思うよ」
そんなに私に意見を求めるように言われても.......
お母さんの再婚する相手だ。
私が意見することではない。
「でもほら、ことねのお父さんになる人だし」
「あ.......」
そっか、お父さん、か.......
お母さんが離婚したのは私が幼稚園生の頃だ。
正直私にはお父さんとの記憶が無いので、新しくお父さんができる実感もなければ想像もつかない。
「ほら、座ろ! 今お茶出すね」
私の微妙な雰囲気を悟ったのか、お母さんが私たちを座らせ、お茶を準備しにキッチンに向かった。
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