2 / 27
文化祭 1
しおりを挟む
しかし夏休みのど真ん中に文化祭とは一体なんという学校だろうか。
桃子にそれとなく聞いてみたら、
「うちは大学の附属高校だからねー、昔大学のお偉いさんがそう決めたらしくて、今でもずっとそのままなんだって」
との事だった。
まぁ私の高校ではないので文句を言うほどではないのだけど。
私はスマホで今の時間を確認する。
11時57分、約束の時間の3分前だ。
スマホの次は自分の体全体に目をやる。
白いカットソーにネイビーのストライプ柄マキシスカート。
サンダルと小さなバッグはブラウンで統一させた。
「別に、変じゃ、ないよね……?」
「変じゃないよー」
桃子の声だ。
水色のクラスTシャツに、いつもの制服のスカートを履いている。
独り言のはずだった私の言葉に反応してくれたみたいだ。
聞かれていたなんてちょっと恥ずかしい。
「さあ、いこ!」
桃子はそれ以上突っ込むことはなく、早足で校門をくぐった。
受付でパンフレットや校内を歩くためのスリッパを受け取り、昇降口に行く。
入ってすぐの壁一面にはクラスの宣伝ポスターが貼ってあった。
どうやら今いる1階は1年生の教室のようだ。
この階に彼のクラスはない。
私が彼のことを考えている間に、桃子は隣でパンフレットを開いていた。
「私アイス食べたいなー!」
そう言われて、私もアイスを売っているクラスを探すためにパンフレットを開く。
どうやらアイスは1年生と3年生のクラスで売っているようだ。
「シャーベット系かクリーム系、桃子はどっちがいいの?」
「シャーベットがいいな」
シャーベット、ということは3階にある3年生のクラスだ。
そこも、違う。
つい彼のいる場所についてばかり考えてしまう。
せっかくここまで来たのに会えなかったらどうしよう。
急に不安が込み上げてきた。
もしかしたら彼だって私たちのように友達と他の場所に遊びに行っているかもしれないのに。
「もー、琴音! 彼を見つけたらちゃんと言うから今は気にせず楽しも!」
なんてことだ。
私はそんなに態度に出てしまっていたのか。
桃子にそんな気を使わせてしまったことをとても申し訳なく思った。
今言ってくれた桃子の言葉を信じ、それまでは純粋に文化祭を楽しもうと意気込む。
2人で3階へと続く階段を上る。
ほんのすぐ前に気にするなと言われたばかりだが、それでも2階を通り過ぎる瞬間は彼がいないか少しだけ気になってしまった。
しかし絶対会えると信じることにしたおかげで不安感はない。
それに、なんとなく彼に会えるんじゃないかという気すらしてきた。
足を止めることなく2階を通り過ぎ、3階に到着する。
3年生はやはり1年生よりもポスターや周りの装飾のクオリティが高い。
色々眺めていると、私たちの求めているアイスのクラスポスターを見つけた。
『こちらです!』
という可愛い文字と一緒に矢印が描かれている。
貼る場所を考えた上でポスターを作っているなんてすごい。
思わず感心してしまった。
その矢印の通りに廊下を進むと、迷うことなくそのクラスにたどり着くことができた。
教室の入り口で桃子はソーダ味を、私はイチゴ味を買い、チェック柄のテーブルクロスがかけられた2人用の席に座った。
「おいしー!」
そう言って桃子が満面の笑みを浮かべる。
確かに美味しい。
お祭りで食べるかき氷とか、文化祭で食べるアイスとかは、涼しい家の中で食べるものとはまた違う美味しさがあるんだよね。
なんでだろうか。
ふと桃子の方を見ると、彼女にはそんな疑問が全くないらしく、夢中でシャーベットを食べ進めていた。
「このあとはどこ行こっかー」
シャーベットを食べながら桃子がパンフレットを開いた。
「琴音は何か食べたいものとか行きたいところとかある?」
「えっ、わたひ?」
シャーベットを口に含んだ瞬間に話しかけられ、上手く喋れなかった。
桃子にそれとなく聞いてみたら、
「うちは大学の附属高校だからねー、昔大学のお偉いさんがそう決めたらしくて、今でもずっとそのままなんだって」
との事だった。
まぁ私の高校ではないので文句を言うほどではないのだけど。
私はスマホで今の時間を確認する。
11時57分、約束の時間の3分前だ。
スマホの次は自分の体全体に目をやる。
白いカットソーにネイビーのストライプ柄マキシスカート。
サンダルと小さなバッグはブラウンで統一させた。
「別に、変じゃ、ないよね……?」
「変じゃないよー」
桃子の声だ。
水色のクラスTシャツに、いつもの制服のスカートを履いている。
独り言のはずだった私の言葉に反応してくれたみたいだ。
聞かれていたなんてちょっと恥ずかしい。
「さあ、いこ!」
桃子はそれ以上突っ込むことはなく、早足で校門をくぐった。
受付でパンフレットや校内を歩くためのスリッパを受け取り、昇降口に行く。
入ってすぐの壁一面にはクラスの宣伝ポスターが貼ってあった。
どうやら今いる1階は1年生の教室のようだ。
この階に彼のクラスはない。
私が彼のことを考えている間に、桃子は隣でパンフレットを開いていた。
「私アイス食べたいなー!」
そう言われて、私もアイスを売っているクラスを探すためにパンフレットを開く。
どうやらアイスは1年生と3年生のクラスで売っているようだ。
「シャーベット系かクリーム系、桃子はどっちがいいの?」
「シャーベットがいいな」
シャーベット、ということは3階にある3年生のクラスだ。
そこも、違う。
つい彼のいる場所についてばかり考えてしまう。
せっかくここまで来たのに会えなかったらどうしよう。
急に不安が込み上げてきた。
もしかしたら彼だって私たちのように友達と他の場所に遊びに行っているかもしれないのに。
「もー、琴音! 彼を見つけたらちゃんと言うから今は気にせず楽しも!」
なんてことだ。
私はそんなに態度に出てしまっていたのか。
桃子にそんな気を使わせてしまったことをとても申し訳なく思った。
今言ってくれた桃子の言葉を信じ、それまでは純粋に文化祭を楽しもうと意気込む。
2人で3階へと続く階段を上る。
ほんのすぐ前に気にするなと言われたばかりだが、それでも2階を通り過ぎる瞬間は彼がいないか少しだけ気になってしまった。
しかし絶対会えると信じることにしたおかげで不安感はない。
それに、なんとなく彼に会えるんじゃないかという気すらしてきた。
足を止めることなく2階を通り過ぎ、3階に到着する。
3年生はやはり1年生よりもポスターや周りの装飾のクオリティが高い。
色々眺めていると、私たちの求めているアイスのクラスポスターを見つけた。
『こちらです!』
という可愛い文字と一緒に矢印が描かれている。
貼る場所を考えた上でポスターを作っているなんてすごい。
思わず感心してしまった。
その矢印の通りに廊下を進むと、迷うことなくそのクラスにたどり着くことができた。
教室の入り口で桃子はソーダ味を、私はイチゴ味を買い、チェック柄のテーブルクロスがかけられた2人用の席に座った。
「おいしー!」
そう言って桃子が満面の笑みを浮かべる。
確かに美味しい。
お祭りで食べるかき氷とか、文化祭で食べるアイスとかは、涼しい家の中で食べるものとはまた違う美味しさがあるんだよね。
なんでだろうか。
ふと桃子の方を見ると、彼女にはそんな疑問が全くないらしく、夢中でシャーベットを食べ進めていた。
「このあとはどこ行こっかー」
シャーベットを食べながら桃子がパンフレットを開いた。
「琴音は何か食べたいものとか行きたいところとかある?」
「えっ、わたひ?」
シャーベットを口に含んだ瞬間に話しかけられ、上手く喋れなかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる