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はじめまして 4
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「なるほど、向こうはお前の名前も知ってたくらいだし、ナンパしてきた、って感じじゃなさそうだよな」
「そう、なんだよ」
雅也の口から「ナンパ」という言葉が出たことに驚きつつも返事をする。
ナンパじゃない……だから俺は見ず知らずの女子にあんなに必死になったのだろうか。
いや、確かに遊びになんて見えなかったけど、でもそれよりもっと、もっと特別に感じたというか。
俺の前で見せた笑顔も涙も。
初めて会った人に見せるようなものには見えなかった。
でも、だったら──
「どうしてお前は彼女を知らないんだ?」
「それは、俺にもわからない……」
静かになった俺たちの元に、微かに歓声が聞こえてくる。
どうやら後夜祭が始まったようだ。
それを合図にしたかのように、俺の携帯も音を出した。
見ると画面には1件、さっき連絡先を交換した彼女からだった。
『鈴木琴音です。りんごジュースごちそうさまでした』
鈴木、琴音。
連絡先を交換した時に1度その名前は聞いていたが、改めて見てもやはり知らない名前だ。
「そのうち向こうから色々話されるだろうし、今はわざわざこっちから掘り下げなくてもいいんじゃないか?」
「ああ、そうだな」
また鈴木さんを泣かせるわけにはいかないし。
俺はすぐに返事を済ませ、携帯をしまった。
これからは鈴木さんを走って追いかける必要はない。
何かあればいつでも連絡を取ればいい。
今日涙を流させてしまった彼女でも、最後は笑顔で手を振ってくれた。
それを思い出しただけでなんとなく満足できた。
俺たちは、もう少しだけ屋上で今日の余韻に浸ってから帰った。
「そう、なんだよ」
雅也の口から「ナンパ」という言葉が出たことに驚きつつも返事をする。
ナンパじゃない……だから俺は見ず知らずの女子にあんなに必死になったのだろうか。
いや、確かに遊びになんて見えなかったけど、でもそれよりもっと、もっと特別に感じたというか。
俺の前で見せた笑顔も涙も。
初めて会った人に見せるようなものには見えなかった。
でも、だったら──
「どうしてお前は彼女を知らないんだ?」
「それは、俺にもわからない……」
静かになった俺たちの元に、微かに歓声が聞こえてくる。
どうやら後夜祭が始まったようだ。
それを合図にしたかのように、俺の携帯も音を出した。
見ると画面には1件、さっき連絡先を交換した彼女からだった。
『鈴木琴音です。りんごジュースごちそうさまでした』
鈴木、琴音。
連絡先を交換した時に1度その名前は聞いていたが、改めて見てもやはり知らない名前だ。
「そのうち向こうから色々話されるだろうし、今はわざわざこっちから掘り下げなくてもいいんじゃないか?」
「ああ、そうだな」
また鈴木さんを泣かせるわけにはいかないし。
俺はすぐに返事を済ませ、携帯をしまった。
これからは鈴木さんを走って追いかける必要はない。
何かあればいつでも連絡を取ればいい。
今日涙を流させてしまった彼女でも、最後は笑顔で手を振ってくれた。
それを思い出しただけでなんとなく満足できた。
俺たちは、もう少しだけ屋上で今日の余韻に浸ってから帰った。
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