命の対価

桜庭 葉菜

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はじめまして 3

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 早速連絡先を交換しようと携帯を見た俺は、そこで雅也から2分ほど前に連絡が来ていたことに気が付いた。

「そろそろ戻らなきゃか……」

 不思議そうに首をかしげる彼女に粗方の事情を説明し、俺たちは急ぎ連絡先を交換した。

 これでいつでも連絡を取ることができる。

 今は何よりも教室に戻ることを優先すべきだろう。

「今日はありがとう。後で連絡するね」

 そう言って手を振ってくれる彼女に軽く手を振り返し、俺は走って教室に戻った。

「おー、こーすけ。お前どこ行ってたんだよ」

 裕貴がダンボールを持ったままだるそうに聞いてくる。

 教室では担任が来るまでの間片付けをしていたようで、なんだかホコリっぽく感じた。

 みんなこの後の後夜祭を楽しみにしているためか、文化祭が終わったというのにソワソワとしている。

「まぁいいだろー、幸介、この後空いてるか?」

 俺に気を使ってくれているのか、すぐさま雅也が間に入る。

「あ、おう、空いてる」

「じゃ、あとで」

 そう言って一方的に話が終わった。

 裕貴も俺がいなかったことをそこまで気にしているわけでもなかったらしく、もう一度聞いてくることはなかった。

 それから間もなくしてホームルームが始まり、担任からの簡単な挨拶だけですぐ解散となった。

「後夜祭行くー?」

 ウキウキとしている裕貴が聞いてくる。

 どうやら自身が行くことは決まっているようだ。

「悪い、俺と幸介はやめとくわ。サッカー部の奴らみんな行くっぽいからそっち行ってみ」

 特に悲しむ様子もなく「おっけー」と裕貴は去っていった。

「屋上……でもいいか?」

 ひっそりと言われ、俺は声を出さずに頷いた。

 それから俺たちは後夜祭に行く波にも、昇降口に向かう波にもさらわれず、屋上に向けて足を進めた。

 屋上には、かなり厳重な柵と定期的な先生の見回りのおかげで生徒の立ち入りは自由になっている。

 その屋上に行くための唯一の入り口、丁寧な注意書きが貼られている鉄の扉を開いて外に出た。

 夏の夕方はまだ明るい。

 それでも昼間より暑さは和らいでいて、文化祭という人の熱さに比べたら少しばかり涼しいとさえ感じた。

「色々察してくれて、ほんと助かったよ」

 校門側の柵を覗き込むと制服姿で帰っていく人がたくさん見える。

「いや、ただ知り合いを追いかけてるだけって感じじゃなかったし。ここなら人来ないから、俺でよかったら話聞こうかと」

 雅也はこういう時、本当に察しがいい。

 裕貴を一緒にここに連れてこなかったのも、彼を信用していないからとかではなく、単に俺のことを1番に考えてくれた結果だろう。

 だからこそ雅也のことを信頼していて、さっきのような無茶なことも安心してお願いできるので、本当に感謝している。

 ここまできて雅也にさっきのことを話さないわけにはいかない。

 俺はタピオカを買った後に彼女に会ったことから全部話した。
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